【代表インタビュー】イミューが実現していく未来<前編>
前回は現在の事業内容や、今後の展望について教えていただきました。
ー前回の最後に「『あの地域は獲れる魚の価値を上げていて、そのおかげで街が潤っていて、住む人たちの誇りになっている』という所まで持っていきたい。」というお言葉がありましたが、イミュ―や黒田さんご自身がこれから達成していく未来や、具体的な事業の行方についてもっと教えてください!
イミュ―のこれからをお伝えするにあたって、先にイミュ―の掲げる3つの企業哲学について紹介させてください。イミュ―では、「ビジョン」「ミッション」「パーパス」をそれぞれ以下のように定めて事業を進めています。
ビジョンは私たちが実現したい未来、ミッションはそこに向けてチーム全体で地域と共にどんな役割を成し遂げていくか、そしてパーパスは会社の存在する目的を表現しています。
ー全体を通して黒田さんの地域への想いや、そこにコミットする企業としての姿勢が表れていますね。この企業哲学はどのようにして作り上げていったのでしょうか。もしこういった想いを得るようになったきっかけがあれば教えいただきたいです。
最初のきっかけは、会社を立ち上げてすぐのことでした。当初私は、地域の事業者さんと直接繋がってのブランドづくりを目指していて、販促チームとして戦略面をサポートする形で収益を得るために、一番初めに鹿児島県のお茶農家さんからネットショッピング業務を発注してもらえるようお願いしたんです。当時は立ち上げ期だったことと自分たちのスキルを安売り出来ないという考えから、早期に立ち上げて4-50万円くらいいただく想定だったんですけど、なかなかうまく立ち上がりませんでした。今思えば、そういった金額感って既にある程度成長している会社やブランドじゃないと捻出できないんですよね。もちろん、株式分配のような方法はあるものの、それに値するだけの実績も信頼もない。じゃあ、第三者から資金を得る仕組みを考えなきゃいけないという発想に至り、自治体のふるさと納税支援に行き着きました。
ー地域やそこで動く企業の実状を知ったんですね。
はい。それからふるさと納税に関する業務を自治体と一緒になって進めていくことで、自治体やふるさと納税が抱える3つの事実に気が付き、企業理念や事業の在り方が今の形にぐっと近づきました。
1つ目は、ふるさと納税の主体者は自治体であり、自治体がマーケティングスキルを持っていない(貯めづらい組織になっている)ということ。
2つ目は、ふるさと納税によって自治体は初めて地域外に住む方とコミュニケーションが取れるようになったということ。当然、自治体はその地域の住民以外の生活者とコミュニケーションを取ることに慣れていないんです。だからこそ、気軽に地域の外の方と関与できるふるさと納税の仕組みは画期的なんですけど、不慣れだから効果的なコミュニケーションを取ることが難しい。例えば大手リテールと一緒に海外視察に行くとか、顧客設定と目標設定がない中でトレンドのインフルエンサー施策を行うなど、雲をつかむようなコミュニケーション戦略になる例もしばしばです。
そして最後が、ふるさと納税の返礼品として人気のある返礼品の多くは、一次産業の事業者さんによるものだということです。返礼品は寄付額の30%以下の価格までしか設定できないルールがあるので、扱っている商品の単価が低い一次産業の商品の方が、小売といった二次加工以降の流通業者より競争力のある値段設定をすることができます。このような環境を見ている内に、日本にはまだまだ知られていない、すごい会社が沢山あると気づきました。
こういった状況をマーケティングの視点から分析していくと、場所や価格に強みのある一次産業の事業者が商品を直接提供できるようにすれば、より生産地域にも買い手となる生活者にも嬉しい環境を生み出せると感じたんです。そして生まれる生産地と関係人口のコミュニケーションは自分達がデザインしていくことができる。これが、「地域×食」をイミュ―で深掘りしていけると確信した瞬間でした。
ー実際に動いてみて得た知見が、ビジョン・ミッション・パーパス、そして事業の方向性が固まるきっかけになったんですね。
ただ、こういったきっかけみたいなものは、今ももらい続けています。地域には今も昔も頑張っている方々がいて、彼らと接するたびに日本が持つポテンシャルを感じる毎日です。
◇ ◇ ◇
―他にも、黒田さんやイミュ―の考えに影響を与えた出来事があれば教えてください!
そうですね。実際に事業にコミットしていく中で、はじめは自社視点で考えていた事が、段々と地域視点、果ては全国へと視点が移っていきました。
「あと10年で漁協が終わってしまう」という話を聞いたら、どうしたって地域の視点に立たざるを得ませんでした。全国の視点で言えば、例えば今話題のカーボンクレジットについて。そもそもイミュ―の拠点がある北海道白糠町のような地域でCO2削減をけん引しないと、近い将来日本や世界が大変な目にあってしまう。食料自給率についてもそうです。日本の自給率はカロリーベースで35%しかないけれど、白糠町では200%です。こういった不均衡な社会に対して、どうやって地域主体でバランスを取っていくのか、そしてそこで自分たちが何ができるのか考えるようになりました。
一般的な会社であれば営利活動なので、自社を中心に考えてその周辺に地域課題を据えて解決を目指すと思うんです。けれど私たちは、どうしても地域課題をコアにおいて事業展開していきたい。そういう思いから今の企業理念が出来上がりました。
ー黒田さんの発言や、企業理念、事業活動の全てに「地域起点で日本や世界に資産を残す」という考え方が一貫している理由が分かりました。
正に資産を残すという考えが、これから重要になります。ふるさと納税の制度を用いて瞬間的に資金を得るだけでは、地域や日本が豊かになるビジョンは達成されません。その資産を活用して、その後に地域や社会をどう創っていけるか。仮にふるさと納税やイミュ―がなくなっても、全国に愛される食品ブランドといった資産を残すことができれば本望ですし、その事例を見て全国の誰かの行動を変え社会が少しでも変わっていくきっかけになればと思っています。
なので、現在のイミューの見られ方は自治体のふるさと納税をコンサルする会社ですが、ふるさと納税を通して自治体戦略のサポートを行いながら、地域ブランドを興していく会社として変革していく必要があると強く思っています。
ーありがとうございます!黒田さんやイミュ―考え方が事業を通して少しずつ変わっているというお話しがありましたが、ビジョン・ミッション・パーパスもそれに併せて更新しているのでしょうか。
そうです。もしかしたら、また半年もすればガラッと変わっている可能性すらあります笑 今のものは2023年10月頃につくったもので、これと一緒に自分達の活動を「事例をつくる」「地域をつくる」「再現性を高める」の3つに分けて考えています(下図)。会社のフェーズとしては今ようやく白糠町との取り組みで「事例をつくる」から「地域をつくる」の一端に手がかかったところ。事業を進めていく中で地域ってなんだっけ、みたいな部分の解像度を上げていっている最中です。この過程で企業理念も変わっていく可能性はあるかもしれません。
ーなるほど。こういった考え方の整理は意識的にされているんですか?
そうですね。イミュ―という組織の中で、企業理念や3年先以上の方向性を考えて決めることが自分の役目なので、朝や飛行機の中なんかで考える時間を持つようにしています。
あとやっぱり、自分に能力があればもっと効果的に動けていたと感じる部分が多いんですよね。事業の道筋はどうしても、動きながら、学びながら、自治体と会話しながら考えて進めていくことになります。そして地域にいくと、衰退していく町やあと1つピースがハマればうまくいきそうな組織を沢山見ます。そしてそれらは時間が経つほど解決が難しくなっていくと感じます。だからこそ、自分の考える歩みを止める余裕はないですし、焦る一方です。つらいけど頑張っていかなきゃ。
ー足しげく現場に通っている黒田さんだからこそ、思考をアップデートする必要に迫られるんですね。
同じように、現場を見るからこそ会社の見据えるゴールがブレずに済んでいる部分はあると思います。
ついこの間一年の振り返りを行ったんですが、一年前と比較して事業への解像度が大きく高まった事に気付きました。例えば一年前は白糠町での事業について、「工場をつくったら地域にも喜んでもらえるだろうし、極寒ブリ(自社ブランド)の加工工場をつくってみよう」くらいにしか思っていなかったんですけど、一年間の活動を通して、地域課題はもっと上流にあり、漁業でいえば「魚づくり」から変えなければいけないという思考に行き着きました。
先に地域に喜んでもらう。できるだけ上流で価値提供する。この2つを分かっているようで分かっていなかったと最近気付かされましたね。
そしてその事を社員に伝えた時に言われたことが、「黒田さんって掲げていることはブレずにやっていますよね」という一言でした。この言葉自体も嬉しかったんですけど、同時に、変わらない目的を持ち続けられるのも、様々な気付きを与え続けてくれる地域の方々のお陰だとも感じます。
先にお話しした通り、私たちがやりたいことは、地域を、地域と連携して変えていくことです。こういった目標の部分はブラさずに、その方法論はアップデートし続けていかないと、逆に脚をとられる羽目になるので。
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