✑ 創作(帽子)にまつわるプロフィール
ヴィンテージショップと忌野清志郎さん
何かを始めるときは、わりと急に思い立って行動することが多い気がする。ずっとダラダラしていて、何にもしない時間をまあまあだいぶ積み上げて、その時は不意にやってくる。
帽子をつくりたい。
そう思ったのも突然だった。友人の結婚式に参加するための洋服を探しに、いろいろなヴィンテージショップをまわっていた時、ひらめいた。
私が好んで訪れていたお店には、たいてい、昔の映画に出てくるような帽子がたくさんディスプレイされていて、「キレイだな~!」見上げながら、「結婚式の参加者がみんなこういう帽子かぶっていたら・・・。」と想像してクラクラしたのをおぼえている。
お店の人にお願いして実際に見せてもらうと、シミやほつれ、破れなど結構傷みがあって、「着用するのは難しいかなあ?」というものがわりと多くて。サイズも現代人には小さいかな?というものが多かったから、古いものだし仕方ないかー、と思ったんだった。同時に、「だったら作ればいいんじゃないの?」というのが頭に浮かんだ。
そしてもう一つ、頭に浮かんだことがある。
それは「忌野清志郎さん」。好きだと思える大人をできるだけ近くで見ていたくて、いつか直接の関わりを持ちたいと本気で思っていた。でも、どうしたら?
ある時友人に聞いた話、「清志郎さんはステージ衣装で人が作ったもの(既製品でない)しか着ないんだって。」・・・ヴィンテージショップで帽子を眺めながら、この話を思い出した。
これだな!
だけど、私はもともと家庭科とか全然好きじゃなくて。「メジャーを使って、パターンを起こして立体を作るのって大変そうだし、バイアスがどうのとか、ちょっと面倒くさそうだし・・・。」と、服飾そのものに苦手意識を持っていた。それに、私にとって洋服は「好きに選んで組み合わせを楽しむもの」というジャンルのものだったから、それを作りたいというような思いもなかったし。
そんな私がなぜ、「帽子ならできそう!」と思ったのかわからないけれど、とにかくそう思ったんだよな。(面積が小さいから、というだけのような気も)
そこからは話が早くて、帽子をつくる社会人向けの夜間講座に通いだし、バイトも帽子屋に変更。バイトでは、色々なお客さんの試着(の接客)を通じてすごく勉強させてもらった。体型(身長・横幅・首の長さとかも)によって似合う帽子が違うこととか、そもそも顔型と頭の形って色々で、その大きさのバランスもそれぞれ違うんだってこととか。ひとりひとり必ず似合う形があるということ。接客するとき、言葉は選んだけど(試着の感想?を)正直に伝えていたら、それを気に入ってくれたお客さんたちがまた来て指名までしてくれて、うれしかったな。
夜間講座では天然素材の型入れとかを習った。型はトップ(かぶる方)とブリム(ツバの方)の二つを組み合わせて形を作るのだけど、頭のサイズごとに違った木型が必要だということを知って途方に暮れた。同じデザインの帽子をつくるにも、頭囲54cmの人と58cmの人といたら、そのそれぞれに上下ひとつづつ、合計ふたつの木型が必要になる(この場合4つ)なんて。1種類だけ延々と作るわけじゃないんだし、置く場所ないじゃん、どんだけ高級品なんだよ!と。
近年、国内の帽子アトリエが激減したのは、コスト削減のために工場で機械プレスして作ってしまうものが増えたからだそう。それに、麦やシゾール(麻)などの天然素材の帽体(型入れ帽子のもとになる袋みたいな形の素材)も年々高騰していて、帽子そのものの売値がかなり値上がりしているという・・・だから、手ごろな値段で売られている麦わら風の帽子の素材は、実は紙だったりするのだという話に、なかなか厳しい業界なんだな、と感じていた。
そうやって夜間講座+帽子屋バイトで色々学びながら、「私は清志郎さんと関わるため、パーティなどで着飾って楽しむための帽子をつくりたい。そのために何かいいものないかな?」と、さらにふと思い立ったのが、帽子にトリミングする布花を作ること。で、実際に作ってみたら自分にあっているというか、楽しいと感じていることに気づく。もうちょっと、もうちょっと・・・と試作を重ね、片付け切らない作品と材料で自分の部屋の床じゅうが散らかり始めたころ、人生初の個展を開催。
その後も、いろいろなご縁をもらって個展をしたり、グループ展をしたり、クラフト展に出展したり。そんな感じで制作を続けて、2013年にお店を出店(2022年閉店)、というのが帽子にまつわる略歴です。今後また少しずつ制作、WEBなどで発表していきます。
直接かかわることができないまま、清志郎さんは亡くなってしまったけれど、私の人生には大きく関わってもらったと思っています(感謝)。
☟ 以下、基本のプロフィールです
(以下、23年5月20日加筆)
※帽子は、BaseやSTORESで販売しています。
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