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幼い記憶〜6歳頃まで


ピアノもバレエも習える身体では無かった
病室で点滴をして折り紙をする
固定された右手でペンを取って絵を描く
呼吸の仕方を時々忘れて
数えきれないほど脳細胞が死んだ

本気で笑っても泣いても苦しいから
時計を見ながらかけ算を覚えた
漢字辞典の最初の80文字を覚えた

ピンクハウス、メゾピアノ、
シャーリーテンプル、ポンポネット
少女の着るべき服はすべて似合った
プラスチックの食器は一度も与えられず
陶器を決して壊さなかったそうだ

薬を飲まなければすぐに病院送りで
オレンジ味の粉薬をもらう羽目になる
薬を飲まなければすぐに病院送りで
新しい薬が増えて帰宅する羽目になる
食事よりも服薬した記憶の方が遥かに多い

もしもわたしが健やかで
ピアノとバレエを習っていたら
それだけで充分過ぎるほど姫君だっただろう
だけどどうしようもなく
わたしは最初から患っていたのだ

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ひらぐり・ひらり
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