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アフリカ探訪記#3

アフリカ探訪記#2の続きです。僕の足の甲にザンビア人の赤ちゃんのうんちが落ちた話です。

前回の記事は以下です。


おもらしベイビー

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言うまでもないが、ザンビアには紙おむつなどないので、おもらしベイビーがおもらしをしたら、そのまま下へすとんと落ちていくだけなのである。万有引力である。もし、ニュートンがミニバスに乗って、隣の赤ん坊がおもらしをした、引力を発見したのなら、その赤ん坊は一生笑い者になったに違いないので、ニュートンがりんごで発見してくれて本当に良かったと思う。下へ落ちたって、それが地面なら別にどうってことはない。便が土へ還り、肥料となり、アフリカの大地を富ます一助となるのであれば、おもらしベイビーにとっても誉れ高いことであるに相違ない。ところが、それがミニバスの車内であったら、これは全く異なった様相を呈することになるのは想像に易い。結論から言えば、人糞が足の上に乗るのである。

あなたは足の甲に人糞が乗ったことがありますか?

所狭しと人体が押し込まれている車内でまさか自分の足など見えるはずがない。26年の人生で人糞が足の甲へ乗ったことなど一度もないので、私は初め何か高熱のものが乗ったに違いないと錯覚した。触ってみれば、すぐに理解できるが便は案外高温である。すぐさま払おうと足をバタバタさせたが、飛んで行かない。バタバタさせていると隣の親子と目が合い、軽く会釈をした。すると赤ん坊の臀部が茶色ににじんでいたので、私はすぐに事態を悟った。はっ、これは人糞だ!よりにもよって、サンダルを履いていた自分を恨んだ。

どうやったら、このうんこをどかせられるのか…

人糞だと認識してから、私は足をばたつかせて、それをどこかへ飛ばすことは危険であると察知した。足の隣にカバンがあったからである。お気に入りのカバンに人糞が付くなんてことは考えられなかった。次に前の座席の裏側へ人糞をなすりつけてやろうかとも思ったが、高校時代の冴えない同級生の使用していた机がひっくり返った時、机の裏側全体にびっしり鼻くそが付着していたのを発見、驚愕し、その晩食事が喉を通らなかったことを思い出した。自分のような思いをさせてはならないと敢え無くこれも却下となった。どうしたものかと考えあぐねているうちに、その親子が下車していった。息子が大便をもらしたおもらしベイビーだと母親が気付いて、降りたのであった。なんて、賢明な母親なのだろうか。

一縷の望み

しかし、ちょっと待てよ。ここまで一度も足の甲に付着しているものを実際に見たわけではないし、おもらしベイビーの便であることは状況証拠からの推論でしかなかったわけであって、もしかすると人糞ではないのかもしれない。微かな希望を胸に高まる鼓動を感じながら、私はおそるおそる目を下へやると、まっ茶色の軟便が足の上に乗っていた。逃げようのない事実と向き合った時、人間は強くなれるものである。私はこのまま人糞と共に首都へ上京し、下車してから人糞に別れを告げることに決めた。そう決めた途端、心には爽やかな風が吹き抜けたような爽快感があった。腹をくくってしまえば、動じること等何一つとてないのである。そう思っていた。その瞬間には、その数分後隣に新しく乗車してくる中年男性の「君、足にうんこ付いてるよ。」の一言でその決意があっさりとひっくり返り、「違います。」と連呼しながら、さらに高校時代のトラウマと向き合い、前の座席の裏側でそっと何便を拭うことになろうとはその時の私には知る由もなかった。

それでは、アディオス!

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やまなかゆうた
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