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母とみる『団地のふたり』
ドラマ『団地のふたり』を観るのが最近の楽しみだ。父も弟もいない夜、一本の缶酎ハイをグラスで分け合いながら、母と二人きりで観る。
女ふたりの主人公、というただそれだけで私は食いついてしまうのに、それが小泉今日子と小林聡美というコンビなぞ言われたら観ないわけがない。しかも演出は、映画『マザーウォータ』や『東京オアシス』、最近でえばドラマ『春になったら』を手がけられた松本佳奈さん。
ただぼうっと映像を観ているだけで、なーんか心がほぐれていく感じがする。とくに、野枝(小泉今日子)と奈津子(小林聡美)がふたりで一緒に食卓を囲むシーンがとびきり好きだ。ご飯を食べて「美味しい!」と言い合ったり、「それ、何回も聞いてるよ」とツッコミたくなるような話をし合ったり。食後の「コーヒー淹れる?」も好き。
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なにかびっくりするような大きな展開があるというわけでもないけど、ちゃんと毎回なにかしらのドラマがあり、気づきがある。メッセージをセリフで語ったりしないで、こちらに余韻を残してくれるドラマ。特に、この間観た第3話はいろいろと考えるものがあったりした。
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キョンキョン演じる野枝の初恋の幼馴染春日部くん(仲村トオル)が団地に帰ってきた!という噂を聞き、自宅に行ってみると。彼の母親(島かおり)は認知症を患っていて、息子のことをヘルパーさんと勘違いしている。野枝と奈津子のことは覚えているのに、なぜか息子のことは覚えていない。さっきのことは忘れているのに、古い演歌を歌い出したり……。
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偶然にも、わたしの祖母(母の母)もアルツハイマーを患っている。確か、10年以上前のことだった。母はそれを観て、「みんな、アルツハイマーって言うと、可哀想だねって言うけど、全然そんなことないんだよね」と言った。「忘れるって、仕方ないことだし」と。
私は、そんな母からの言葉が聞けたのは意外だった。その言葉は母の本心かどうかは分からない。そうせざるを得えないからこそ、そう思うようにしているような気も、なんとなくしたりする。
これだけじゃなくて、母から聞けていない話って、たくさんあるんだろう、と思った。このことも、もっといろいろ深くまで聞いたりしたらよかった。「初めてお母さんがアルツハイマーだって知った時、どう思った?」「ママは忘れること、怖くないの?」って。
母のこと、祖母の話を、もっと聞きたい。かといって、突然切りだすのはちょっとむずかしいから。母と語らったり、和んだりできるこの時間が、最近のちいさな楽しみになったりしている。