映画「ジュリア(S)」 音楽は響き渡る
□それぞれのジュリアたち
ジュリア
彼女はピアニストを志す少女だった
1989年ベルリンの壁崩壊を
見に出かけたジュリアと
パスポートを忘れたジュリア
彼との二人乗りのバイク
ジュリアが運転した人生と
ジュリアが後部座席だった人生
あの時の選択であらゆる出会いは変わり
運命はまったく違ったものになる
しかし
たとえどんな人生を生きても
幸せと不幸せはやってくるのだと
この映画は教えてくれる
夫と子どもに囲まれていたジュリアにも
思いがけない転落が待っている
ピアニストをあきらめた孤独なジュリアにも
指導者としての喜びの時間が訪れる
音楽家のジュリア
家庭を持ったジュリア
孤独なジュリア
ドイツのジュリア
ジュリアのいくつかの人生
「ジュリアズ」
□おそれることはない
もしあの日違う選択をしていたら…
おそれることはない
どの人生も私が主人公だ
禍福の川を渡りきることについては
どの私であっても同じなのだ
そして
どのジュリアにも音楽があった
音楽の彼女への寄り添い方はそれぞれだった
でも音楽はジュリアの根幹をなしていた
ジュリアたちは
音楽に苦しめられ
音楽に励まされ
音楽とともに歩いた
□一本の木
スクリーンに一本の大きな木が映る
太くがっしりした幹があり
そこから立派な枝が複数伸びていて
さらに無数の枝に分かれていく
これが私たちだ
私はいま細い枝の先端に生きている
紆余曲折を経てなぜかこの枝にたどり着いた
違う枝を生きる可能性もあったろう
あちらの枝の方が愉快だったかもしれない
でも大丈夫
絶対に大丈夫だ
どこにたどり着いても幹は動かない
どの人生に大切なものは必ず宿る
この作品は特別な讃歌だ
すべてのジュリアたちと
すべての映画ファンに
祝福の音楽が響き渡る
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