ワンダー

執筆や執筆支援をしています。ここでは主に映画館で鑑賞して感じたことを書いています📽作品内容にふれることがあります。どうぞよろしくお願いします✨

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最近の記事

映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」 ボクに捧げてくれた母に捧げるこの映画

金は愛だ絶対に金が入っていると思った 実家から送られてきた荷物 そこに添えられていた母の封筒 ボクもそうだった いったい何度母から金をもらったことだろう ボクから無心したこともある いらないというのに渡されたこともある 今になってわかる “金は愛だ” 金は母のボクに対する愛の具現化だったのだ 母に届いたと祈りたいボクは他人に意味なく100円だってあげたくない でも親は苦しい生活の中で子どもにポンポンとカネを送ってくる 金はこの世でいちばん大変で大切なものだ 愛が

    • 映画「バービー」 この生きづらさとの葛藤

      □そして人生は続く... ビルケンとシックな服をまとったM・ロビーが みんなに送り出されて笑顔で歩き出す 爽やかなラストシーンに心が快哉を叫ぶ と同時に思う そして人生は続く... M・ロビーの すなわち私たちの 「自分らしさ」を求める旅は これからも再出発が繰り返されるのだ バービー人形は 女性を「よき母」という呪縛から解放した そしてフェミニズムを50年遅らせたと罵倒された 自分らしさの追求 フェアな社会のあり方 美しさの真価 これらはとどまることがない

      • 映画「マイ・エレメント」分断に苦しむ大人など乗り越えて

        □ルッキズムに依存しない 炎のエンバーちゃんの太ももに欲情していた そう告白したら みんな引いて去っていくんだろうか いやいや劇場はちびっこだらけだから ちゃんとすかした顔して観てましたよ でもエンバーのスカート短かくね?! でもエンバーのスカート短かくね?! ヘンタイ? 炎のキャラの太ももに反応するなんて? いやいやいやいや いやいやいやいや オレのせいじゃないっすよ ピクサーのせいです オレだってまさかあんなちんちくりんの 炎女の太ももにドキドキするなんて

        • 映画「さらば、わが愛/覇王別姫」 かつて確かにあったのだ

          □言葉にできない 今日は珍しく隣にまで人が座っている その女性は上映中何度も口元を抑えた 頭でブロックを割る場面で 子どもたちがお尻を叩かれる場面で もちろん幼き主人公の6本目が斬られる場面でも 客席には人が多く リアクションもあった パンフレットも売れているようだ 30年前はVHSで観た 言葉にできない衝撃 それを分かち合う人もおらず ひとりで飲み込んだ 今回は劇場で多くの人と観られてうれしい しかし言葉にできないような気持ちに変わりはない □短絡的な言葉 “

          映画「658㎞、陽子の旅」 陽子という明るい名前の彼女

          □「外で待ってる」 チャットでユーザーからの質問に答える仕事 画面越しの心ない言葉に傷つけられる 和室のアパートにはベッドとローテーブル トイレットペーパーをティッシュ代わりにする 夜はノートPCを枕元に横立てして 配信ドラマを見ながらいつのまにか眠っている 化粧をしていない菊地凛子は 別にきれいってわけじゃないけど このみすぼらしい生がどこへ進むのかと すっかり虜になってしまった だって彼女はまるで自分みたいだから そこに従兄の竹原ピストルが訪ねてくる 父が死

          映画「658㎞、陽子の旅」 陽子という明るい名前の彼女

          映画 すごすぎて/あきれすぎてレビュー書けねえよ事案

          こんにちは! 映画ご覧になってますか? 劇場に通ってると作家性全開で 感想を言葉にできないような そんな作品にも出会いますよね すごかったり あきれたり 憤ったり 理解不能だったり 平伏したり そんで口をあんぐりさせてると レビューを書き損ねます 全部書いてる方はすげーなー! 気づけば書かないやつが随分たまってました ま、怠けてたんですけど😆 でも本当に「いまの自分にはまだ書けない」って そんな作品もあるんじゃないでしょうか みなさんのそんな言葉にできない 憎い

          映画 すごすぎて/あきれすぎてレビュー書けねえよ事案

          映画「山女」 私たちの山と心はどこにあるのだ

          □稀代の眼力 山田杏奈、森山未來、永瀬正敏である 品川徹、でんでん、三浦透子である そして山中崇、川瀬陽太、赤堀雅秋である この俳優陣を前に 観ない理由を見つけられなかった ちなみに御年88歳の品川徹氏は 大杉蓮と同じく沈黙劇の「転形劇場」の俳優で ドラマ『白い巨塔』の大河内教授のその人である メインビジュアルの山田杏奈の眼力と眉毛 山田の強い眼差しにはいつも心を掴まれる 特に『ひらいて』(首藤凛監督)においては 目力を超えてもはや悪人の目つきになっていた 実際山

          映画「山女」 私たちの山と心はどこにあるのだ

          映画「時をかける少女」(2週間限定上映) 繰り返せないから美しい

          □「7月13日」 劇場のロビーには若い人が目立ちます この作品は17年も前のものなんですが 2006年に公開された細田守監督の 『時をかける少女』が2週間限定で上映されています 特に今日7月13日は劇中での日付と一致する 主人公の真琴がタイムリープを繰り返すうち 生きることは取り戻せないからこそ 美しいと気づいてしまうその日です 私たち観客は幸福です 繰り返しこの作品を観ることができる 真琴はもう時間を繰り返すことができないから 一刻も早く未来へ行こうとしてるという

          映画「時をかける少女」(2週間限定上映) 繰り返せないから美しい

          映画/ドラマ「シコふんじゃった」 気持ち悪い映画

          □モッくんに匹敵する美しい所作 1996年に周防正行監督は 『Shall we ダンス?』で日本映画界を席巻した そのひとつ前の作品が『シコふんじゃった』 楽しいコメディだけれど 周防監督の知的さがにじむ作風であり そして幾何学的な構図も印象的だ ボクはこの作品が大好きで でもなにか秘められた意図があるようで どこか「気持ち悪い映画」とも思っていた 2022年にディズニープラスで 新しい『シコふんじゃった』が配信となった モッくんのまわし姿以上に美しいものはないと

          映画/ドラマ「シコふんじゃった」 気持ち悪い映画

          映画「ぼくたちの哲学教室」 ボクたちはよく「考える」と言うけれど

          □「平和の壁」の国 今朝もスキンヘッドの校長が エルヴィスを口ずさんで登校してくる ここは北アイルランドの小学校 この国は福島県と同じくらいの 国土面積と人口(約188万人)を有する カトリックとプロテスタントの対立 イギリスとの連合と独立をめぐる衝突 これらの問題で国内紛争が長期化し 多くの命が失われてきた国だ 今も禍根は残っている 両派を分断するための「平和の壁」がある 壁には銃を構えた兵士が描かれている 登校する子どもたちを この皮肉な名前の壁は見下ろし

          映画「ぼくたちの哲学教室」 ボクたちはよく「考える」と言うけれど

          映画「同じ下着を着るふたりの女」 愛を嗤う母

          □卓越した人間観 髪を赤く染め娘に手をあげる母 それを毒親としてしまえばわかりやすいかもしれない おそらくキム・セイン監督の分身的な存在は 娘の方であったに違いない しかし監督はこの母娘の善悪について 絶妙な均衡で描き続けた だから観客は母娘どちらの気持ちも おもんぱかる時間が終始つづくことになった ここにキム・セイン監督の 卓越した人間観のようなものを感じる □舞台挨拶:文化圏の違い  長編デビュー作にして痛烈な作品を紡いだ監督が 福岡KBCシネマで1時間の

          映画「同じ下着を着るふたりの女」 愛を嗤う母

          映画「逃げきれた夢」 主演俳優は光を冠しているのに

          □光石研と間と 「光石さんと間で出来ている」 フォローさせていだいているkalindaさんが 評したこの言葉に優るものはない 長年の学校勤めを辞めようとしている男 彼には心の底から語れる”何か”がなかった 妻との関係は空虚なものとなっている 娘に話しかけてみても訝しがられる 松重豊演じる旧友とも北九州弁で 「しゃぁしぃ」と戯れに罵り合うが 本音で語り合うことはない 肝心なことは黙ってしまう 窓から見える平凡な景色のショット 光石研と誰かが向き合っても ふたりの間

          映画「逃げきれた夢」 主演俳優は光を冠しているのに

          映画「アフターサン」 私たちがソフィのために泣く

          □どうして没入しているのだろう どこかの家族の旅行ビデオ そんなものを他人が観ていられるはずがない この映画はひなびたリゾートホテルでの 父と娘のひと夏を映し続ける 極めてパーソナルな映像だ それなのに私はどうして没入しているのだろう 少し緊張さえしてずっと目が離せない 食事やビリヤードをしているだけの親子なのに なぜふたりにこんなに惹かれるのか しかもときおり垣間見せる闇の方に吸い寄せられる □ふたりの闇と同期してしまう 11歳のソフィが感じている性への慄き

          映画「アフターサン」 私たちがソフィのために泣く

          映画「ウーマン・トーキング」 南十字星に拳を突きあげて

          □2023年の重要な1本 2023年のとても重要な1本だと感じる この作品のテーマは女性の尊厳についてだ しかし本作は他にも重要なテーマと 向き合う機会を与えてくれた 紛争のときにとるべき態度について 洗脳や教育がもたらすものについて 次世代のために今を生きることについて またテーマの崇高さに溺れることなく 作品として実に豊かで美しい仕上がりだった 会話劇だが優れた編集で目が離せない 大人の真剣な討論にはしゃぐ子どもの姿を 挟み込むことで作品に批評性をもたらす

          映画「ウーマン・トーキング」 南十字星に拳を突きあげて

          映画「マルサの女」 俗が黄昏のなかで美へ反転する

          □午前10時の映画祭13『マルサの女』(1987年公開) 『マルサの女』ときたらこの音楽ですよね トゥートゥトゥトゥートゥトゥトゥートゥ♪ トゥトゥトゥトゥートゥトゥトゥール♫ 久しぶりに鑑賞したんですがこのメインテーマ 本編中で何十回とかかるんですね そしてもちろん宮本信子 奇抜な髪型で登場するも 大滝秀治に「板倉くん、寝ぐせ」と 再三注意されるところも楽しい 以下の曲者たちの演技合戦も最高 どうぞ以前ご覧になったのを思い出してください 抑えた芝居で新境地をひ

          映画「マルサの女」 俗が黄昏のなかで美へ反転する

          映画「波紋」 狂うか狂ったふりでもしなければ

          □荒ぶる潜在エナジー これぞいろんな人の感想を 聞いてみたいと思わせる映画でした 観客をそれぞれの思考に導くような 豊かさがありましたね 序盤からこの作品の求心力はすごい ストーリーは筒井真理子を軸とした単線なのに 彼女に対する理解と不可解でグイグイ引きつける やっぱり荻上直子監督はタダものじゃない 「ていねいな生活」の作品って イメージもあるかもしれないけれど いやいや荒ぶるエグい感情が渦巻いている 前作『川っぺりムコリッタ』も松山ケンイチと ムロツヨシの楽し

          映画「波紋」 狂うか狂ったふりでもしなければ