映画「逃げきれた夢」 主演俳優は光を冠しているのに
□光石研と間と
「光石さんと間で出来ている」
フォローさせていだいているkalindaさんが
評したこの言葉に優るものはない
長年の学校勤めを辞めようとしている男
彼には心の底から語れる”何か”がなかった
妻との関係は空虚なものとなっている
娘に話しかけてみても訝しがられる
松重豊演じる旧友とも北九州弁で
「しゃぁしぃ」と戯れに罵り合うが
本音で語り合うことはない
肝心なことは黙ってしまう
窓から見える平凡な景色のショット
光石研と誰かが向き合っても
ふたりの間には伽藍洞があるだけ
まさにこの映画は
「光石さんと間で出来ている」のだ
□間の長さと虚しさ
彼が施設にいる父と語る場面がある
このときだけは少し自身の本音を漏らす
自分のこれからのこと
幼い頃の父への思い
しかし父の方はすでに話す力を失っている
息子の言葉に反応すらしない
父親役は光石研の実父が演じているのだが
やはりここでも”間”しかないのだ
元教え子とひょんなことからデートをする
「今の仕事辞めて、中洲に行く」
そう言う彼女になにも差し出すことができない
とりとめのない言葉と長い沈黙
こんなに長い間を映画で
味わうこともそうそうあるまい
間の長さと
光石研演じる男の虚しさは比例しているのか
そのあまりに正直で開き直った演出に
じんわり本作への親近感が湧いてしまった
□不思議なタイトル
監督の二ノ宮隆太郎は
光石の出身地・北九州でオールロケを敢行した
監督が憧れる主演俳優は
名前に光を冠しているというのに
物語はなんの光も見えないという大胆さ
福岡の映画館での舞台挨拶上映で
オーラをまとう光石研を拝見した
『逃げきれた夢』
夢のようなきらめき
それは私の人生から終生逃げてしまった
このタイトルは
そういうことなのだろうか
不思議なタイトルだ
光石研の隣でニコニコしながらも
どこか無頼っぽかった監督を思い出しながら
福岡天神の劇場をあとにした
街の雑踏が今夜もしゃぁしぃ
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