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連載(51):人類の夜明|宇宙と人間「人間とは何か」

この記事は『かとうはかる(著)「人類の夜明」』を連載しています。

人間とは何か

「さて、科学が二面性をもっているように、宇宙も二面性をもっています。

男女、陰陽、時間空間、物心、などがその代表でしょうが、コインは両面があって用をなすように、宇宙も意識界と物質界という二面を認め合い干渉しあって、二つの世界の存在を可能にしているのです。

そして意識界こそ、二つの世界のリードオフマンなのです。

ですから私たちも宇宙心から分かれたとき、まず意識界にその姿を現し次に物質界へと転身していったのです。

その意味で意識界は、私たちの故郷となったのです。


物質界に転身した人間は、そこで五つの感覚器官を与えられたわけですが、それが眼・耳・鼻・舌・身の五感だったわけです。

当初人間の心は宇宙心と通じておりましたから、自身の存在意義も使命も悟っており、意識界とのやり取りも自由にできました。

そして、地上に理想世界を築くため、一生懸命奮闘していたのですが、時を経るうちに杖の役目である五感に惑わされるようになり、やがてミイラとりがミイラになってしまったごとく物質の世界に迷い込んでしまったのです。

しかし全知全能の宇宙心が、それを予期しないはずはありません。

宇宙心は迷妄から人間を救いだす方法を、中庸という法の中にちゃんと用意しておかれたのです。

中庸とは大宇宙の基本の姿であり、調和への指針です。

また人間が目指さなければならない美しい流れでもあります。

宇宙心はその流れの中心に住み、いつも慈愛の眼差しで私たちを見守ってくれているのです。

もし流れに逆らい中心から離れようとしたら、きっと強力な愛の吸引力をもって引戻そうとするでしょう。

その愛の吸引力が、時には病となり、事故となり、戦争という自滅の悲しい姿となり、天変地異という自然の怒りとなって現れてくるのです。


中庸の心から離れれば離れるほど、そのギャップが激しければ激しいほど、吸引力も強くなり、苦しみと悲しみは深まっていくでしょう。

でもこれも宇宙心の愛の証であり、我が子可愛さの叱咤激励のムチなのです。

その苦しみがあればこそ人は反省し、中庸に戻る心を思いだすからです。

ライオンはかわいい我が子を谷底に突き落とすというではありませんか。

愛は峻厳でなければならないといわれますが、それこそが本当の愛の姿ではないでしょうか?。

私たちはそんな自然の教えを手本とし、間違いのない人生を歩まなくてはならないでしょう。



さて、この世はたえず変化変滅をくり返し、一時も同じ姿を保つことは許されません。

大自然がそうであるように、私たち人間もいつか老い、病に倒れ、死を迎えます。

だから昔の人はこの世を、“浮世”とか、“うたかたの世”とか、うまい表現をしてきたのです。

『諸行無常』とはそのはかなさを語っているのですが、私たちはその無常を深く考えないで一生を送ってしまいます。

そして年老い、死が近づいてはじめて、人はその死がどこに通じているか恐れ戦くのです。



肉体の一生なんて、宇宙のタイムスケールから考えれば線香花火にも似た一瞬です。

でも私たちは、そんなはかない存在ではないのです。

今まで、泣き、笑い、感動していた人間が、肉体が消滅したからといって人格まで失ってしまうものでしょうか?。

今日までの苦労も、喜びも、情熱を傾けたことも、愛を注いだことも、すべて泡のように消え去ってしまうものでしょうか?。

それは単に、物質の中だけの出来事だったのでしょうか?。

人間って、石ころみたいなそんな虚しい存在なのでしょうか?。

そうではないはずです。肉体は一時の衣であり、器であり、乗り物ではないでしょうか?。

かつて何度も乗り換え、今もこの肉体に乗り移り、明々と命を燃やし続けているのではないでしょうか?。

これを仏教では輪廻転生といっておりますが、これこそが生命の真の姿であり人間の正体なのです。」



「心が永遠の存在だとしても、それは宇宙心のことであって、私たちの人格、つまり自我とか個我とかいわれるものは、肉体の死と共に消滅してしまうのではないでしょうか?。本当に、今の私が死後も存在するのでしょうか?。」


私も死について興味があったので、その種の本を読みあさったことがあったが、納得する解答は得られなかった。

だから昨日、人は生き通しの生命であると聞かされた時も、私は半信半疑だったのである。



「消滅するのは肉体のみで、この世で体験した喜びや悲しみなど一切を携え、人は故郷である意識界へ帰っていくのです。

死を考えない人が多いようだが、真剣に死を直視している人は永遠の生を直視していることになり、死から目を背けている人は、生にも目を背けていることになるのです。死は生の目覚めであり、出発点なのです。」

(つづく)

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