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ペイザナ×とおのどぶろく プロジェクト その3

岩手県遠野市でどぶろくを造る佐々木要太郎さんと、山梨県勝沼でワインを造る、ペイザナ農事組合法人代表であり、ドメーヌ・オヤマダの小山田幸紀さんの対談の第3弾。
前回の話の最後に出てきた、桜の木と米作りの関係とは一体…?
※敬称略


佐々木:
曾祖母から、若い桜と、年老いた桜を見比べてタイミングを決めろと教わりました。
年老いた桜の方が、若い桜よりも芽吹き早く、種蒔きは年老いた桜が芽吹いたタイミング、田植えは若い桜が芽吹いたタイミングで行うようにしています。

稲刈りは、桜が落葉するタイミングですね。
年老いた桜が少し芽吹いた時に種蒔きをすると、不思議とその後の天候が崩れずスムーズに稲が育つんです。
必ず集落には桜の木があり、桜の木は山の神と言われている。
昔の人はよく言ったものだなと思います。

- 年老いた桜に合わせて種蒔きすると天候が崩れない、というのはすごいですね。

佐々木:
なぜ年老いた桜の芽吹きに合わせるかというと、若い桜よりも根が下の方までしっかり張っていて、その土地のことをよく知っているからなんです。

- 桜のタイミングに毎年合わせることはできるのですか?

佐々木:
他の仕事もあり、毎年必ずしも守れていませんが、桜をしっかり観察せず、こちらの思い込みでやろうとするとうまくいかないということを、正に去年痛感しました。

若い桜は大体毎年5月に芽吹きますが、去年はいつもより1か月遅く、田植えもそれに合わせたので稲刈りも1か月遅いと思い込んでいました。
その予定でスケジュールを組んでいたらなんと例年通り9月には稲が登熟して、稲刈りをしないといけなくなってしまったんです。でも、既に他の予定も入れていたので結局10月に稲刈りをすることになり、収穫量が少し落ちてしまいました。

思えば、9月には桜の木が落葉していたのですが、それをしっかり見ていなかったんです。
何年もやっているのでこれで大丈夫だろう、という慢心があったのだと思います。自然栽培をやっているのに、こちらの都合でスケジュールを立てるという慣行栽培のやり方でやってしまったのが原因ですね。


- 他にも自然栽培で稲を育てる上で大切なことはありますか?

佐々木:
今まで重要とされていたことが、実はそうではなかったということもあります。
例えば日照量は多い方がいいと言われていて、確かに必要ですが、それ以上に稲を育てている地域の環境全体が重要なんです。
腐葉土の成分がどれくらい田んぼにあるか、落葉樹がどれくらい田んぼの周りにあって落ち葉が入ってくる場所なのか、野生動物の繁殖率がどれくらいなのか。
農薬をやめて自然環境が整ってきたときに、野鳥が田んぼに戻ってきて、雀がいなくなりました。

- 野鳥は米を食べないのですか?

佐々木:
土地によっても違いはあると思いますが、食べないですね。
うちの場合は鹿は来るのですが、土のミネラルを食べるだけで稲は食べないです。

小山田:
うちには猪が来て、食べはしないのですが田んぼで遊んでいます。稲をなぎ倒してますね。それを見た時はまだ食べてくれた方がいいなと思いました。笑


- 話は変わりますが、お二人の共通点で、ご自分で栽培したブドウとお米でお酒を造っている、ということがあります。小山田さんに前お聞きしたお話で、ブドウの栽培の時点でワインの味の設計が始まっている、とあったのですが、佐々木さんもお米を栽培する際にそのような感覚はありますか?

佐々木:
それはありますね。その年の気候によってお米の育ち方が変わるし、それによってお酒の造り方も変わります。例えば、湿度の高い年であれば米も水分が多いので、浸漬時間が短くなるし蒸し方も変わる。お米の栽培をしていないとお米が育つ過程を知らないので、決められた時間に決められた作業をするという、機械的な酒造りになってしまうと思います。
ある程度データに基づいて行うことは必要ですが、酒造りは生き物が起こしている現象なので、機械的にはできないと思っています。

- それは、清酒とどぶろくで違いはありますか?

佐々木:
大きく違います。
僕はいわゆる、機械的な酒造りを否定している訳ではありません。
清酒とどぶろくの一番の違いは、お酒を濾すか濾さないか。どぶろくは法律で濾すことができないので、お米自体の質、醸造の過程など、全てがそのまま伝わってしまいます。

濾せないからこそ、何としてもお米を溶かし切りたい、その年採れたお米でこんな味にしたい、という着地点が毎回あって、そのために、お米を種から植えて自分で育て、収穫した稲から種を取ってまた翌年植える、というサイクルでやっていかないと、このお米の質やそのお米がどんなどぶろくになるのかが分からないんですよね。

小山田:
濾せないからこそ溶かす、というのはどぶろくならではですね。


佐々木:
うちのどぶろくでも、ドロドロしているとよく言われますが、うちのものはサラサラな方なんです。
中途半端に造ったどぶろくは、嚙まないと飲めないくらい粒が残ってしまいます。僕は、菌の力だけでしっかりとお米を溶かしたいと思っています。

小山田:
うちの五百万石はちゃんと溶けそうですかね?笑

佐々木:
ちゃんと溶かします。笑

小山田:
毎年どぶろくを造ってもらえるよう、お米作りがんばります。笑
お米を作るのは、ブドウを作るよりも楽しいですね。一年でできるものは考えて実行したことへの反応が早いので。ブドウは、スパンが長すぎてなかなか何をやっても反応が分かりづらいんです。

佐々木:
ブドウを栽培する時は、虫に対してはどう対処していますか?

小山田:
農薬や肥料を使わずに栽培していると、1つの虫にずっと悩まされることがなくなりました。
数か所に畑がありますが、全部の畑で一斉に虫が出ることはないし、毎年同じ場所に同じ虫が出ることもないです。なので、もう放っておいてますね。

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今回は佐々木さんの米作りについて主にお聞きし、自然の中で造っている、ということを実感したお話でした。

次回は、小山田さんのブドウ造りのことをメインにお聞きします。

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