【昔話】たまたま袋を拝みます
むかしむかしあるところに、一両編成のちんちん電車を運転するおじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんたちは村人一人ひとりに助けられ、なんとか運行が出来ていました。
そんなある時「よっこらしょ!!」と村一番の大柄な男が現れ、1席ならず2席分も、股を開き占領するではありませんか。
これは困った。
「このままでは、みんなが怖がって乗らなくなってしまう」
「大事な電車が廃線になってしまうぞ」
おじいさんとおばあさんは考えました。
そしてその夜、ある純朴そうな青年に白羽の矢が立ったのです。
* * * * * * * * * * * *
「よっこらしょ!」といつものように男は大きな足で、座席を占領しています。
おばあさんはよたよたと男に近づき、男の目の前で座り込み、そして拝み始めました。
「なんだばあさん、俺様が仏様にでも見えたのかい?」
そう笑いながら、おばあさんに言うと。
「いやはや、こんな立派な観音開きを初めて見ました。つい拝んでしまいました。これほどまで大きく足を開かれるなら、さぞご立派な玉袋をお持ちなのでしょう?」
「な、なんだと?!」
男はおばあさんに今にでも掴みかかろうと腰を上げます。
すると、男の座席の反対側に座っていた青年が、足を大きく開きました。
なんということでしょう、ズボンのポケットに小玉スイカを二つ忍ばせているかのごとく、大きく膨らんだ玉袋がズボン越しにも分かります。
「なんだそりゃ…」
男は腰砕けになり、ストンと座席にへたり込みました。
青年の玉袋の神々しさすら感じさせる大きさに、おばあさんは改めて拝み直しました。
「これはこれは、大きな玉袋でございますね。これだけ素晴らしいものをお持ちなら足が開くのも分かります。私は拝む方を間違えました。」とおばあさんが男に言いました。
顔を真っ赤にして、男は何も言えません。
おばあさんの行動に背中を押された乗客は
「そうよ、席はみんなのものよ!足を閉じなさいよ!」
「股間に惑星ぶら下げてるのかい」
「君にはいつか言おうとしていたんだ!足を閉じてもらおうか!」
「拾った子犬を隠してるのかい」
青年への称賛と男への罵声が車両内に響きます。
青年は照れくさそうにはにかみ、男はひどく恥をかき、二度と足をひろげなかったそうな。
めでたしめでたし。
今日、足を開いて座っている人を見かけたので痛快な昔話にしてみました。
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