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懐かしの、苺をつぶしながら

苺をつぶしながら、私、考えてる。
こんなに幸福でいいのかなあ、って。
一人ぐらしなんて、人間の幸福の極致じゃないのか?

『苺をつぶしながら』田辺聖子

この文章を読んで、ぐっと懐かしく感じる方、いらっしゃいますか??

遡ること20年ちかく

ーいやーこの出だしからハマりますよね。
好きッ!と読み込んだのが、もうかれこれ15~20年くらい前でしょうかね(*^-^*)

リバイバル出版されたのが2007年だから、やっぱりそうですね。
当時、流行ってましたよね、このシリーズ3部作。

初版は昭和56年だそう。
古いです…!(^^)!

だから、それなりに、”ハイミス”だの、”戦後の闇市”だののことばが出てきますが、いやはや、内容は現代的で、古ぼったい感じは皆無デス。

ーほんまに天才やな、田辺聖子先生。ヽ(^。^)ノ

こんな風に…の憧れ

健康で、仕事もあって、おまけにそれもイヤな仕事じゃなく、ちょいと自分の名前も売れてるし、男もいてー(「オレのことか?ー」という男友達もいるだろうが)なんて、こりゃもう、あの世へいったってこんないい目は見られそうにもなかんべえ。

『苺をつぶしながら』田辺聖子

と続きます。
こんな風に生きたいよヽ(^。^)ノ(*^^*)

主人公の乃里子は商品デザインをしたり、古典やデパートで絵や人形を売ったり…と、売れっ子アーティストのような暮らしぶり。

3部作シリーズの最終作『苺をつぶしながら』では、ボンボン(イケメンで御曹司のオカネモチくんで束縛屋)との短い結婚生活ののち離婚して、一人暮らしの自由を満喫しています。

短い結婚時代には、お高い服を何着も作らせては次のシーズンには袖も通さないような生活ぶりだったけれど、いまでは木綿の服をサラッと着て、ココロから満足している…🍒

女のひとならではの好ましさ

剛は昔、「三年も贅沢に慣れてみ。金、勘定して使わんならんような生活はもう二度とでけへんですよ」と私にいい聞かせ、叱りつけたが、私はいまは平気で、オカネを勘定しいしい使って、それで辛いともみじめとも思わない。

出来合いのモノを買ったら、ひととこ、ふたとこ手を加えるのがコツだった。ボタンを替えてみたり。それも壜の蓋なんかにカラーエナメルで絵を描いてボタンにしたり、袖にUSA製のワッペンをつけたり。リボンを結んだり。

『苺をつぶしながら』田辺聖子

う~ん、カワイイなあ。主人公の軽やかな心持ちと可愛らしさが浮かび上がるでしょう?(*^-^*)

登場人物のうち、もう少し年上の芽利という女友達もイイ。

芽利はその店へはいって椅子に腰かけ、黄金色のライターとシガレットケースを、いつも持ってる太鼓型の黒いベルベットのバッグから出して、ゆっくり交渉に入った。宝石入りの安全ピンを手にとって目に近付けたり離したり、ほめたりけなしたりしつつ、嫋嫋としたやさしい物腰で粘りに粘って、三割ほどまけさせてしまった。そして綺麗な指で煙草を揉み消し、(まあこのへんね)というふうに私に流し目をくれ、

まるで纏足でもしているみたいになよなよした足どりと腰つきで店を出ると、店の人たちは飛び上がり、言い値で大名買いをした客よりずっと鄭重に「ありがとうございました。またどうぞ!」
と送り出すのだった。

『苺をつぶしながら』田辺聖子

素敵ですねえ…!芽利にもなりたいヽ(^。^)ノ。

一方で、たしかに、中年の卑しさはこういうところかも…、という描写もさすが田辺先生サマサマ。

阿佐子が「怖がり」になったと、そのとき私は思ったからだ。
昔は怖いものなしで、足元軽く風に吹かれていたが、いまは怖いものをいっぱい、阿佐子はもってるみたい。貧乏になる怖さ、無名になる怖さ、財産を失う怖さ。
ほんとに人間って、かわるものだ。

『苺をつぶしながら』田辺聖子

天才かな、やはり。(#^^#)
そうはいっても、田辺聖子のほかの小説もいくつか読んでみたのですが、この作品ほどの当たり🎯!は、なかったのですよね。
しかし、天才には変わりありません。

この作品では、最後のほうは、別の女友達が突如として亡くなり、一人でいることの心もとなさ、みたいなものを連想させるシーンもあるのですが、それでもやはり、

なんたって友達がベストである、男と女の仲って。
私はこのあと、いそがれてる装幀の仕事を今日じゅうにしなきゃいけない。それがすんだらデパートへいって私のデザインした子供服の評判をきいて、そのあとは…久しぶりにアメリカ村の匂いでもかぎにいくかな。「スミスさんのオルゴール」を長崎堂で聞いてもいいし。

『苺をつぶしながら』田辺聖子

と、最後まで考えてる乃里子のサッパリとした快さが好ましいです。

ー結婚してもしなくても、いつまでもこの感じ、纏っていられるって、才能だな。そういう女のひとって、いいもんだな、と思います。(*^^*)

死ぬまでにまた、読み返すでしょう、この小説。
田辺聖子さま、ありがとう☆彡なんて。

いい作品には…

ところで、気に入った文章作品って、文章がなめらかに心に溶けるような感じがありませんか?音楽でもないのに…♪
視覚で文字面を追っているのが現実なのに、この心の満足感、すごいですよね。読書の素晴らしさですね。やっぱり芸術は偉大ですね、人類にとって。なんて。(#^^#)

気になったら、ぜひ、読んでみてくださいませね。

TOP画像は、この作品のイメージ、canvaでつくってみました(*^^*)。
女の子、女のひとが持っている、好ましいものたち…🍓

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