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ピラティスを効果的に行う多裂筋の使い方
横隔膜、腹横筋、骨盤底筋、多裂筋の4つを合わせてインナーユニットと呼びます。
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インナーユニットの筋肉は、呼吸と関係が深いです。
横隔膜と言ったら…まさに呼吸。
腹横筋と言ったら…呼吸ですよね。
骨盤底筋も…呼吸にとって大事です。
では、多裂筋は呼吸にどう関係してくるんでしょう?
インナーユニットの中でいちばん、呼吸と結びつけて語られにくいのが、多裂筋かもです。
あきらかに関係ありそうだけど…具体的にどう関係あるのか。
「呼吸のときに、背骨が動いて呼吸しやすくする」のでしょうか。
それは多裂筋でなければできないことなんでしょうか?
背骨を動かす筋肉は、他にもいっぱいありますが……
前回に、多裂筋を伸長させる話をしました。
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多裂筋を伸長させながらエクササイズすると良い、という話です。
エクササイズ以上に重要になるのが、呼吸法かもしれません。
多裂筋はインナーユニットの一つ。
関係性は意外と語られないけど、あきらかに呼吸に関係してるからです。
多裂筋を伸長させながら、仰向けでドローイングのような呼吸法を行うと、
背骨が伸長(ピラティスでいうエロンゲーション)します。
腰椎が浮いて自然にニュートラルポジション(骨盤の機能的な傾き)になります。
ただ多裂筋を伸長させるだけでは、エロンゲーションは起こりません。
ドローイングなどの呼吸法をして腹横筋を働かせると、エロンゲーションが起こります。
多裂筋と腹横筋は胸腰筋膜でつながってます。
多裂筋の伸長、プラス、腹横筋を働かせる、イコール、エロンゲーション(背骨の伸長)です。
「背骨を動かす筋肉は、他にもいっぱいありますが……」と先に言ったとおり、
「背骨を伸長させると良いらしい。エロンゲーションする!」
って背骨を伸長させてみても、多裂筋を使うとは限りません。
なので、背骨を伸長させる意識よりも、多裂筋を伸長させる意識が大事です。
その上で腹横筋を働かせると、エロンゲーションが起こるのです。
インナーユニットが働いてる状態では、エロンゲーションが起こるとも言えます。
したがって、グッて頭を上に遠ざけるようにして、背骨を伸ばす意識は必ずしも良くないです。
インナーユニットのようなコアと関係ない上体の筋肉で力んじゃうかもしれません。
多裂筋と呼吸の関係。
多裂筋は腹横筋と協調して働きます。
多裂筋の働きは背骨を動かすこと。
ですが、呼吸のさいに目に見えて屈曲・伸展したり、背骨を動かしまくってたら変です。
屈曲・伸展も多少はしますが、
呼吸のさいには、主に背骨の伸長・短縮を行ってるものと思われます。
吸う息で伸長。
吐く息で短縮です。
ピラティスでも、吸う息は背骨の伸展、吐く息は屈曲と結びつけられます。
エロンゲーションは背骨の伸長なので、息を吐くときは、伸びきった状態からわずかに短縮するということです。
背骨というのは筒状になってて、中に脊髄があります。
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脊髄は脊髄硬膜に包まれ、脳脊髄液に浸されてます。
もしかすると、呼吸による背骨の伸長・短縮の運動は、
脳脊髄液の循環とも関わってるかもしれません。
脳脊髄液はどうやって循環してるのか?
の問題で、頭蓋骨がわずかに動いてるという説明以外に、
背骨の隙間が閉じたり開いたりして、中の水圧を変化させてるのでは?と以前に思いました。
それを信じるひと以外、感知するこもできない、
頭蓋骨のかすかな運動で脳脊髄液が循環してるというよりは、現実的じゃないでしょうか。
したがって、呼吸するときに上手く背骨の伸長・短縮が起こらないと、
脳脊髄液の循環が妨げられる恐れがあります。
ピラティスは仰向けでやる種目が多いです。
仰向けでできることは、必然的に腹筋運動が多くなりますね。
背筋はあまり鍛えられないかも。
とも思えますけど、
ちゃんとエロンゲーション・ニュートラルポジションできてると、多裂筋が鍛えられると思います。
仰向けで足をもちあげたりすると、背骨を保持するのにすごく多裂筋を使います。
しかし、多裂筋と腹横筋が上手く協調してなかったり、
他の筋肉で無理やりエロンゲーションしてたりすると、そういった効果は得られません。
インナーユニットをしっかり機能させて、ピラティスの種目を行うのが大事なのだと思います。
インナーユニットが鍛えられたら、呼吸がラクになったり、姿勢がラクになったり、
今まで無理をしてた別のところ(腰や上体や首)が休まって、身体がラクになったりするのだと思います。
多裂筋は背中の筋肉!
と言って、背中を鍛えるトレーニングばかりしても、効果が得られないかもしれません。
お腹・腹圧・呼吸等と、セットで考える必要があります。
前回に、多裂筋には、脊柱起立筋と協調する浅層と、腹横筋と協調する深層があるらしいと書きました。
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呼吸や背骨の伸長には多裂筋の深層を使うので、深層を鍛えるべきという話かもしれません。
浅層はいくつかの椎体をまたぐようについてるのに対して、
深層は一つ一つの椎体をつなぐようについてるので、背骨の伸長・短縮の運動に適してるとも考えられます。