「小胸筋」をストレッチ!
「不調のあるひとは、首の後ろのつけねに何かしらの症状が出る場合がある」と聞きました。
理由として、姿勢が悪くて頭が前に出てると、とくに負担のかかる場所だから、というのもあると思います。
猫背がひどいと、背中が丸まるとともに、骨がボコッと出て首のつけねで段差になったりします。
あるいは、姿勢以外の話でも、「頭の緊張は首に出やすい」というのがあると思います。
脳と首は物理的に近いので、意識が緊張してると、首や肩に力が入りやすくなるのです。
腰や足だって、脊髄から出た神経つながってて脳が制御してるのは同じ、はずなんだけど。
物理的に近いほうが反応は出やすくなります。
その考えでいうと、「首は脳の支配下にある」といえます。
脳の支配領域である首、
そして、それより下の身体の境目では、ズレが発生しやすいのでは?と思います。
それが首の後ろのつけねの症状となって現れます。
首の後ろのつけね~肩甲骨の間の辺です。
交感神経の反応が出やすい場所ともいわれます。
本来、背骨というレールは、下から上まできれいに整えられてるべきなのに、
胸椎~頸椎の境目の辺、首のつけねのところでレールがズレて脱線してしまうイメージです。
そうなる理由を、物理的な観点でも考えてみます。
一つには、「小胸筋」の短縮があると思います。
他にも、いろいろ理由は考えられます。
一つの候補でしかありませんが。
小胸筋は、筋膜ラインで腕(上腕二頭筋)のほうにつながってます。
同時に、首の深層筋膜(斜角筋を包む腋窩鞘)にもつながってます。
この辺がカタマってると、頸椎が前にひっぱられて、首のつけねの辺でズレる、と考えられます。
親指、前腕の親指側、腕の前側、小胸筋、鎖骨下筋、首の前~横側のラインでつながりがあります。
小胸筋と首とのつながりが感じられる理由として、腋窩鞘以外に、鎖骨下筋の影響が考えられます。
小胸筋とつながりのある鎖骨下筋が緊張することで、
鎖骨の裏(小胸筋、斜角筋の辺り)を通る神経や血管にストレスを与えて首の筋肉を緊張させたり、
鎖骨の裏側につく胸鎖乳突筋を緊張させたりするとかです。
小胸筋同様、鎖骨下筋をストレッチすることは重要だと思います。
小胸筋のような、自覚症状の出にくい前側の筋肉が、
首こりや背中のこり等の原因となることを、前側短縮理論といいます。
第一段階、習慣的に猫背をつづけると、後ろ側は伸長しつつ、重力に負けまいとつねに緊張します。
第二段階、前側が短縮したままカタマってしまうと、つねに丸まる力が働くことになり、まっすぐに戻そうと後ろ側が緊張します。
第二段階になると、姿勢を意識してもダメです。
後ろ側の筋肉がカタマると、背骨回りの神経が障害されて、不快な症状が出ます。
原因が前側にあったとしても、自覚症状が出やすいのは後ろ側。
それが原因を見えにくくすることもあるということです。
小胸筋のストレッチは、「腕を後ろに引いて、胸を伸ばす」感じです。
しかし、これだけでは首の深層筋膜とのつながりが伸ばされません。
頸椎症の名医が考えたという、「オンドリ体操」をやってみると良いと思いました。
オンドリ体操だけやっても小胸筋は伸ばされないので、組み合わせることが大事です。
オンドリ体操で、首を高いところに向かって伸ばすときに、首のつけねのポイントを意識します。
胸椎もしっかり伸ばして、頸椎とのズレ(脱線ポイント)を正して整える意識です。
何をしてるかというと、ピラティスでもっとも重要といわれるエロンゲーション(背骨の伸長)です。
エロンゲーションなら、あごを引いてやったほうがいいのでは?
と思うかもしれませんが、バレエ系のストレッチの専門家によると「あごを引いて良いひととダメなひとがいる」そうです。
初心者は無理にあごを引くと、背骨が力んだ苦しい感じになってしまいます。
なので軽くあごを上げて、十分背骨が伸びる感覚を覚えてから、優しくあごを引いたら良いそうです。
また、軽く腰回し運動したり、スクワットしてみると、
腰と肩回りの柔軟性が連動してることがわかります。
姿勢というのは、背骨だけを意識してストレッチしてると、かえって悪い結果になることがある、気がします。
せっかく背骨が柔軟になって動こうとしてても、肩がひっかかってると、そこで圧迫感を感じてしまうかもしれません。
「肩が固いなら、背骨も固いほうがマシ」ということです。
とくに背骨を反らせるストレッチはリスクを伴います。
頭と身体のバランスが大事という話のように、
身体のなかで極端に柔らかい部分と固い部分が混在してると、不調和を生み出して、特定の部位に負担がかかかります。
なので、肩をやるときでも首を意識、首をやるときでも腰を意識、
というふうに全体のバランスを意識してくことは大事だと思います。
首こりといえば、首の筋肉のこりがいろんな不調を起こすという、「頚性神経筋症候群」という病気があります。
首こりに関心のあるひとは知ってるのではないでしょうか。
頚性神経筋症候群を提案したひとは、「首の筋肉のこりがすべての原因!」くらいにいってます。
首の筋肉さえゆるめれば、全部治る、くらいの勢いです。
それでいうと、小胸筋の短縮が首のこりの原因になる、というわりとスタンダードな発想すらありません。
小胸筋は首の筋肉ではないので。
頚性神経筋症候群で重要視されてるのは、後頭下筋群、板状筋、半棘筋、僧帽筋、胸鎖乳突筋などです。
頚性神経筋症候群の発想は「なるほど」って感心しますけど、
首回りの筋肉さえゆるめたら良いみたいのはどうかな、と思います。
首こり一つとっても、いろんな原因が考えられるのではと思います。
例えば、小胸筋や鎖骨下筋がガチガチで首の筋膜をひっぱってたり、首の前側にストレスを与えてたら、
頭が前に出て、顎が前に出て、背中は丸まろうとします。
そうすると、首の後ろにガチッと力が入って、後頭下筋群や板状筋に多大な負担をかけます。
首の後ろの筋肉が神経におよぼす影響力は強いので、
不快になると同時に、自律神経に関係した症状も出やすくなります。
後頭下筋群や板状筋をゆるめたら、一時的にはラクになるかもしれませんが…
小胸筋や鎖骨下筋の短縮を治さない限り、根本解決にはなりません。
というケースもあり得ます。