雨の日
小学5、6年の頃だったかと思う。
急に雨の日が好きになった。
それまでは晴れの日のほうが好きで、
雨の日は靴が濡れるし、傘をさすのも面倒だし、
登下校が億劫になるので嫌いだった。
なにがどうなってそう思ったのか分からないが、
ある日突然「雨って変だ」と急に気が付いた。
空から水が落ちてくるなんて、変じゃない?
しかもこんなに大量の水が上空に溜まっていて、それが降ってくるなんて普通あり得ない。
そしてさらに、その「変だ」ということに今まで気づかなかったし、
他の人も全く気にせず、普通のこととして受け入れている。
そのこともまた変だ。
雨の日の下校途中、一人でとぼとぼ歩きながらこんな風に考えた。
もしかしたら雨の日って、日常の中にある非日常なのかもしれない。
それから雨の日が好きになった。
いまも朝日が苦手なのだけれど、雨の日の朝は薄暗くてホッとする。
雨の音も心地よくて好きだし
普段より少しだけ、なんとなく周囲が静かになる。
(傘をさして誰もいない道に一人ぽつんと立っていると
まるでヘッドフォンをしている時のような隔離感がある)
雨の匂いもどこか懐かしさがあって、つい胸いっぱい吸い込んでしまう。
億劫だと思っていた傘も、だんだん楽しくなってきて
わざわざ雨の日に散歩したりする。
生まれ育った土地が田舎だからというのもあるのだろう。
雨の日の田んぼや遠くに見える烟った山は神秘的で美しい。
激しい雨も、静かに長々と降る雨も、
雨の日は、特別な日だ。
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