見出し画像

参加者の声:「気候変動とフードシステムから学んだことは、『どう生きたいのか』の哲学だった」

iLEAPがつくるコミュニティは、自分らしさを互いに共存させることができる居心地の良さと、同時に、これからの未来を創る仲間として互いの背中をそっと押し当てる勇気が湧く不思議な両立がある。

4年間勤めていた教育関係の仕事を辞めて、えいや!とデンマークの大人の学び舎フォルケホイスコーレへ留学。

そして、この4月から北海道の上川町へ、地域おこし協力隊として赴任して約半年が経つ。

自然が豊かで町の人は本当に優しく、これからのローカルを考えるのに、同世代の仲間がたくさんいる環境は、やりがいや感謝を毎日感じている。

その一方で、役場や学校現場というはじめてのセクターとの関わり、地域おこしという個人の裁量権の高い働き方、前任者のいない教育コーディネーターとして地道な関係性づくりと絶えず考え続ける新企画の嵐。

なにか、漠然とした、手詰まりを感じ始めた時だった。

そんなタイミングで、iLEAPが「気候変動とフードシステム」をテーマにリーダーシップを考えるプログラムを実施するという告知を見つけた。

まさに環境教育プログラムを北海道でやりたかった私は、まずは自分が体験して学びたい!と申し込みボタンを押しつつも、「気候変動」というテーマを見た時に、正直心臓がドキッとする感覚もあった。

その昔、育ちの地である沖縄の米軍基地問題に心を燃やしていた頃、声を上げるほど、怒りや悲しみが自分を包み、学ぶべは学ぶほど、本質的には誰も「心の平和」には興味なく「自分の財布の平和」が大切なのだと気づいてしまった時があった。

誰も悪くない。社会全体の大きなシステムで見た時に、誰もが"自分にとって"ベストの選択肢をとっているだけの連鎖の中に、ふと偶然、ストンと立場が弱くなる人たちが生まれるのだと気づいた。

基地問題では、それが一部のウチナーンチュであり、気候変動では、グローバルサウスと呼ばれるエリアに住む人、あるいは将来の子ども達世代なのかもしれない。

とにかく、そんな風に勝手に社会を分かった気になり傷を負い、1人では立ち向かえなくなった私は、あまり考えるのをやめる、という選択肢に落ち着いてしまったのである。

(ちなみにプログラム中、こういう状態をClimate griefと呼ぶと聞いて、自分だけでなく社会的に起こりうる状況だと習ってホッとした。そして、なんだか思考停止した奴に見えるかもしれないので、小さな見栄のために訂正しておくと、大きなことを頭で考え絶望するくらいなら、自分の得意を生かして、自分がやれる範囲で向き合える現場をしっかりやろう、という感覚に変化したのである。)

だから、気候変動というテーマに出会った時、勝手に予期不安から恐れ、考えた方がいいテーマであるとは頭で分かりつつも、ドキッとしてしまう自分がいたのだ。

でも、もしかしたら。

iLEAPというコミュニティと共に学ぶ旅は、怒りや恐れも受容しながら、それでも自分たちがリーダーシップをもつことが大切なのだと、Hope 願いや希望ももてる、そんなラーニングジャーニーに出れるかもしれないという予感があったのだと思う。

キャリアの話に戻る。

転職をし、子どもから大人まで、幅広い意味で社会教育を実施する立場になり、ワクワクと同時に、再びモヤモヤがたちこめる場面があった。

基地問題も気候変動もより複雑化していく、これからの社会をつくる目の前の子どもたちや同世代の若者に対して、もし私が教育者を名乗るのであれば、何を伝え、何を対話すべきなのだろうかと考える機会が増えたからだ。

ある意味フリーランスのようなので、自分で地域資源を発掘し、創りたい未来をひとり妄想しながら、子どもたちとこんなことをしたい!と、企画書を書き続ける仕事。

いつも、立ち戻る軸のようなものがなくて、企画書の事業目的には、文科省や本に書いてあるそれっぽい理論をコピペして「これからの未来に必要なチカラを養う」と書いている感覚があった。

社会の流行りだから、ではなくて、自分の言葉として、未来を語れる強さとしなやかさを持ちたい。それが今回の学びの目的になった。

9月から始まる朝6時からのオンラインの講座と、11月にはアジア学院での五日間の合宿での学びは、まさになぜ気候変動やフードシステムを考える必要があるのか?を、全身で学び続けた時間であった。

アジア学院で講師を努めるオサムさんがぼかしの作り方を説明してくれる時に、私たちに問いかける。

「有機農業って、結局なんだと思う?」

プログラムの初めの頃なら、化学肥料の有無や、育て方の違いなど、技術的な知識が思い浮かんでいたかもしれない。

プログラムを通して、
・健康的な食事とはなんだろう?
・有機農業を大規模化してくとどうなる?
・自然の循環はどうなっている?
・なぜ農業を通してリーダーシップを学ぶ?

そんな問いを参加者と共に対話を通して、私たちからはたくさんの自分なりの言葉がでてきた。

ある参加者が、「有機農業はライフスタイルだと思う」と答えた時にビビッときた。それにつられて、私も「自分がどう生きたいかを考えることだ」と頭の中で答える。

「有機農業には、哲学がある。自然と共に生きることを考え続ける想いがある。」
と、オサムさんは言う。

reaction of nature is reaction of agriculture and lifestyle」という言葉が続く。

気候変動が特別なことなのではなくて、自分達が行ってきた農業とそれを土台にしたライフスタイルの結果に過ぎないと。

オサムさんが説明してくれた「ぼかし作り」

アジア学院では、世界中から来た60-70人ほどが共に暮らすコミュニティの中で、自給率が90%を超える。

自分達が有機農業で育てた野菜や肉を、自分達で料理し、ゴミはコンポストにし、身土不二、循環している暮らしがある。

それらの経験を通して、多様性を重んじながら、新しいテクノロジーや化学技術を頭ごなしに否定するのではなく、慎重に対話し、サーバンドリーダーシップを学び、自分なりの哲学をもった人材を世に送り出していく場がある。

そんな現場を肌でみながら、生きた言葉を話すアジア学院の人たちの話をきき、改めて自分に問う

「未来をつくる子ども達と、どんな生き方を模索していきたいのだろうか?」

みんなが農業に近い生活をすれば、世界はもっと良くなるのに、とアジア学院の先生は言っていた。

子ども達が全員農家さんになるのは難しいと正直思うのだけれど、生きることに直結する食べることに対して、「有機農業的な生き方をする生活者」を増やすことはできると思った。

自分の暮らしは、自然の流れからはみ出さず、循環していけるか?目先の利益ではなく、土を耕すように、何年も先の未来を見通す努力をしているか?

そんな視点から、自分のライフスタイルを考えぬける問いを投げられる教育者になりたいと思う。

とはいえ、まだまだなんの行動もできちゃいないので、まずは小さなアクションとして、大豆ミートを使った食事イベントを開いてみようと思う。
美味しいものを食べながら、どうやって作られているのかを想像するような場になるといいな。

改めて、素敵な機会をくださったみなさまと、学びを共にしてくれた仲間達に感謝を込めて。

長文お読みいただきありがとうございました。


上記文章は、独立行政法人国際交流基金(The Japan Foundation)の助成金を受けて実施された「気候変動とフードシステム」についてのリーダーシッププログラムに参加してくださった方が、その経験を一人でも多くの方に伝えるために書いてくださったものです。

私たちiLEAPは、今後も「自分らしいリーダーシップこそが、真のリーダーシップ。」を掲げ、自分のリーダーシップを育てたい人、世界をより良くしていくために何をするべきなのかを常に探求している人のために、さまざまな機会をご提供して参ります。

また、学校・会社・組織向けにカスタマイズしてプログラムをご提供することも可能です。まずは下記メールアドレスまで一度お問い合わせください。

gla@ileap.org

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?