今、わかれ道

人間ってよほど決定的な瞬間でない限り、瞬時に

「おっ、これが、わかれ道だな！」

というふうにはっきりと重たく思うことはそんなに頻繁にはない。

毎日いちいちそんな気持ちになっていたら、それはそれで疲れるし。

だからうまく鈍感にできていて、わかれ道をそんなに意識せずに昨日と同じ毎日を今日も進んでいるような感覚で生きられるようになっている人間。

新しい今日！
二度と戻れない瞬間！
明日も同じ平和な日々がくるとは限らない！

などという訓示を時々目にしたり聞いたり、思い出したりすると一瞬は

「そうか。そうだよね」

と思ったりもするけれど、またすぐに忘れてしまう。

自分のこととなると特にそうで、悲しいことや嬉しいことなどの振れ幅の高い出来事やライフイベントあった時に、しみじみ人生のわかれ道を感じ、今の日々が当然なことではなく、人は、いつわかれ道に立たされてもおかしくはないのだという事実に心身ともにとっぷりと浸かって考えさせられる。

そうかと思えば、とても天気のいい日、なんでもない１日を穏やかに過ごしている瞬間にふと

「幸せだなあ。尊いなあ。心地いいなあ。今、自分は二度と戻れない瞬間にいるのだなあ。未来はぜんぜん違う景色を見ているかもしれないんだよなあ。自分はこの先の先の先、どこに行くのだろう。今に感謝だなあ」

と、まるで未来の自分からのメッセージが届いたかのようにふいに素直に思う。

そしてまたすぐに忘れていつもの日常に戻る。

それでいいのだと思う。

人って、自分のこととなると忘れがちになるようにできているのだからしかたがないしな……くらいの感覚で。

でもなぜか、他人のことになると

「あの人、いまあそこでああやっちゃ人生ダメになっちゃうよ」
「あの人、すごく幸せなのに、文句ばかり。あれじゃ大切なものを失っちゃうよ」
「やめなよ。あぶないよ。人生変わっちゃうよ！ 今がわかれ道だよ。気づいて！」

というふうにくっきりと、わかれ道が見えたりする。

特に親しくなくても、通りすがりの人でも、テレビの中の人でも、なんだか「あらっ？　あの人」と気づくもの。

そんなもんだよなあ……。
でもおかげで、とても大切なことに気づけたなあ。

という出来事を先日見かけ、自分の背筋を正したので、ここにそっと綴り置いていきますね。

ふいに思い出したくなったら、何度でも読みにきてください。

それではスタート。

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