TVアニメ作品を書いていた頃の大切な話
◆ 物書きの仕事のしかたとは
突然ですが……
規則正しい生活は、ほんとうに人生にとっていいのか。
何かに集中しだすと、毎回その疑問が立ち上がる。
体のためにはいいのだろうと思う。
でも、体ってそもそも人生こみの乗り物だと思う。
だから、その乗り物がどんなに整備されていようと、決められた一定のリズムで、メリハリですら計算され尽くされた自動ゆりかごのように淡々と揺れ続けたのでは、なんだかなあ……。
小説や脚本を書いている時、だいたい三分の一ぐらいに差し掛かるといつもその感覚になる。
で、すべて終わってみて、やっぱりその感覚は正しかったんだ、これで良かったんだと感じる。
むちゃくちゃなリズムの中からしか生まれないものがある。
自分のした仕事、書いたものに対して、良く評価してもらうことがあった時
「なんでこんなことが思いついたんですか?」
と訊かれることに限って、説明ができない。
例えば、原作・脚本・シリーズ構成・作詞を担当させてもらったTVアニメ『少年ハリウッド』という作品があり、ありがたいことに、根強いファンの方がその世界をずっと応援してくださっている中、セリフを抜粋してこの部分のここにこのような部分に感銘を受けてとおっしゃって下さることがある。
そんな時
「ああ、あのむちゃくちゃな日々な中でこの世界にやってきたキャラクターたち、言葉たちは本物だったんだ。あれでよかったんだ」
と、答え合わせをしたような気持ちになれてホッとする。
でも、そういう言葉やシーンに限って、あれがどういう経緯でやってきたのか説明できないことがほとんどだ。
あの作品は、世界観やリアリティのあるアンバランスさも含めて、ものすごく良く出来た作品だなとはっきり言える。
もちろんそれは、私が原作だからとか脚本だからとかそういうことじゃなくて、アニメーションという世界において、ファンの方も含めて、関わる誰もが妥協せず関わったことで、とんでもない作品が出来上がったと思っている。
そういったこともあるし、さらには26話もあれば、あらゆるストーリーのうねりがあり、セリフが散りばめられている中で、なんで自分がそんなものを書いたのかそんなストーリーになったのか口で説明できないものが多々。
原作小説からのアニメ化にあたってシリーズ構成も担当しているので、もちろん、この話はこのテーマでこの話数に持ってくるというのは、事前に作業してアニメチームに渡してあった。
そうやってゼロから作業しているのだから、すべてを見てきたはずであり
「なんのことだっけ?」
というようなアホな状況ではないが、なんかこうドヤ感では答えられない感覚が残る。
これにはいろいろな理由があるとは思うが、個人的かつ物理的なことを言えばひとつは
“ものすごく不規則な生活の中で、自分のペースをわざと崩して、作品のペースに巻き込まれながら執筆している”
というのが影響しているように思う。
これが、昔は少し後ろめたかった。
この逆が正しいと思っていたから。
例えば村上春樹さんは、徹底したご自分の生活のペースがあるとエッセイやインタビューなどでもおっしゃっているし、近しい編集者の方からも同じような話を伺ったことがある。
そういう丁寧なペースで執筆されている方は、他にもいらっしゃる。
作家じゃなくても、他の仕事でも、自分の身近にでも、ペースとルーティンのようなものを大切にして、何らかの成果をしっかりあげ、心地よさそうに暮らしている人たちはたくさんいる。
世の中にはすごい人がたくさんいて、そういう方の生活のお話を聞いたり見たりするたびに気後れしたり、自分をダメだと思ったりすることが多々だ。
同じじゃなくていいけど、でも、近づきたい。
そんなことを若く未熟すぎる時は思うもので、そして今もまだまだ未熟で、ただ変わったのは、私にはあれはできないなとちゃんと悟ったこと。
身の丈にあわないことをしたって仕方がない。
そんなことを思って、むちゃくちゃな執筆スケジュールを良しと思い始めた頃、世に出ていったのがTVアニメ『少年ハリウッド』でした。
当時の心境や関係者とのエピソードも含め、仕事のしかた、作品の書き方、作品への思いについて今回は語っていきたいと思います。
◆ なんのために書いたのか
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