「岸田恋愛短編集」公演延期について:生田みゆき
初めてnoteを使って投稿してみようと思います。
私は文学座という劇団に所属して、芝居の演出をしています。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、4月9日に初日が迫っていた岸田國士フェスティバル 岸田國士恋愛短編集 という公演を延期することを先日決定いたしました。
http://www.bungakuza.com/event/kishida-tanpen3.html
この公演は、文学座アトリエという、私たちの劇団のホームグラウンドの劇場の、70周年記念イベントの一環で動いていて、五戸真理枝、小原まどか、そして私の3人の演出家で岸田國士の初期の短編を一挙上演するという企画でした。
五戸さん演出の『命を弄ぶ男ふたり』と小原さん演出の『恋愛恐怖病』、そして生田演出の『チロルの秋』…これらの演目は、今回の岸田國士フェスティバルを監修する鵜山仁が選んだ作品でした(もちろん個人の希望もありましたが)。
『チロルの秋』は、ご一読いただければわかるように(青空文庫で読めます☆https://www.aozora.gr.jp/cards/001154/files/52088_45846.html)ロマンチックでリリシズム(叙情詩的な)に満ちた作品なように感じ、おそらく自分から積極的に選ぶタイプの作品ではないように思った(笑)ので、逆に演出家として作品といい距離感をもって向かい合えるのではないかと感じ、稽古に取り組んできました。
でも台本をどう読めばいいのか本当に五里霧中状態で、現場は混乱を極めたんですが、そんな私にさじを投げずに一緒に作品の方向を探してくれる出演者(渋谷はるか、ケイン鈴木、宝意紗友莉)に本当に助けられ、何とか道が見えてきている状態でした。↓稽古場の3人
また、他の二作品の仲間たち(稽古場を見学させてもらったりしました)、直前にアトリエで公演していた岸田國士作『歳月(西本由香演出)/動員挿話(所奏演出)』、去年の12月アトリエのアフターイベントで演出した『葉桜』『空の悪魔』での出演者とのやり取り、3月アトリエのアフターイベントで上演された『紙風船(鵜山仁演出)』、『音の世界(小原まどか演出)』からもかなり刺激を受けました。↓写真は『紙風船』GP
短期間に、同じ作家の作品を、こんなに多くの演出家の目線を通じて見れることってまずないと思うんですよね……こんなに一人の作家にフォーカスし、かついろんな風に解釈された作品たちを、上演という状態で見ることができる。
岸田國士にやっと少しでも迫れたように感じてワクワクしていました。
延期が決まって、気持ちのやり場に困りましたが、ごく内輪での稽古発表を急遽行い、それでいったん区切りをつけようという話になりました。
延期を聞きつけ、延期日程の相談に乗ってくれる演出部・企画事業部、急遽音の編集を仕上げてくれた丸田さん、すぐに稽古場写真をとってくださった田中さん、暗転できるように照明仕込もうか、と申し出てくれた阪口さん、お金の心配をしてくれた経理部、励ましてくれた劇団員、そしてお客様。
稽古場発表だけど、なるべく見やすい形にしようって3組一緒に頑張りながら、私達はなんて沢山の方々に支えられているんだろうと胸が熱くなりました。
内輪の発表会を終え、改めて3作品同時に上演したことで見えてくるものの面白さにも気づけましたし、『チロル~』に関しても様々なご意見をいただき、もっとやりたいことが増えました。
延期。とはいえ、全く同じ形でできるかがわかりません。でも、必ず何らかの形でお披露目したいと思います。
どうぞ気長にお待ちください。↓『チロルの秋』より
↑こちらは『恋愛恐怖病』と『命を弄ぶ男ふたり』より
また演出ノートみたいなのも書こうかな、と思います。
なんせ自宅で時間があるので…
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