映画『トゥルー・クライム』
11月11日、テレビ東京13時40分~15時40分の午後のロードショー『トゥルー・クライム』(1999年アメリカ 製作・監督・主演 クリント・イーストウッド)を録画していたのを観終わりました。
何年か前に観てなかなかよかった記憶があり、今回も期待を裏切らない傑作サスペンス映画でした。
クリント・イーストウッド作品は、当たりはずれがない。特に彼が監督した作品は、どの作品も上質のエンターテインメントに仕上がっていて、観る者を満足させてくれます。
そう言えば、アカデミー作品賞、監督賞を受賞した『ミリオンダラー・ベイビー』もなかなか見応えのある傑作でした。監督としても役者としても一流という人は、なかなかいないものです。
私の知る限り、他に監督、主演を自分でやってよかったのは、チャールズ・チャップリン、ピエトロ・ジェルミ(『刑事』『鉄道員』)ぐらいでは----。
黒澤明監督作品も、黒澤さんが役者ができれば、『椿三十郎』『赤ひげ』など、すべて黒澤さんが主演してもピタリとはまります。それができないからこそ、三船敏郎という第一回東宝ニューフェイス試験で、たまたま見つけた逸材を主役に大抜擢できたのは、正に日本映画界の奇跡と言っていいでしょう(詳しい経緯は、「あなたも、3年でプロのシナリオライターになれる!!(コンクール編)」参照 http://www.amazon.co.jp/dp/B0B9NX6JHL)。
まずファーストシーンは、カリフォルニア州立刑務所の中に収監されている、12時間後に死刑が執行される殺人犯の健康診断から始まります。
次のシーンでは、その殺人事件を取材し、彼が無実で真犯人は他にいると、新聞社の編集長に直訴したが却下されて、バーのカウンターで同僚の新聞記者に愚痴を言っている大学を出たばかりの新米女性記者が登場します。その同僚こそ、この映画の主人公で、訳ありの元ニューヨークの一流新聞社のベテラン記者(イーストウッド)でした。
しかし、次のシーンで彼女は酔っ払い運転で交通事故であっけなく死んでしまいます。そのことでイーストウッドがその後を引き継ぎます。が、どうせ新米記者が調べていたネタだとあなどっていたら、彼女の言っていたことが真実だと気づき、真犯人を探して関係者を訪ね歩いていくというストーリーです。ネタバレになるのでこの程度にしておきます。
製作・監督のイーストウッドが依頼したシナリオライターですから、ハリウッドでも一流のシナリオライターなのでしょうが、どうにも納得いかない設定が二ヶ所ありました。
主人公が、同僚の奥さんと浮気しているという設定です。主人公の女にだらしないというキャラクターを描こうとしたのでしょうが、私は蛇足だと思いました。
こんなことを描くより、死刑囚の黒人も同じ年頃の娘を持っているという設定なので、主人公も子煩悩で愛妻家で家庭を大事にしているというキャラにし、自分の家族と死刑囚の家族を対比した方が、より主人公のキャラを際立たせるのではないでしょうか。
それに新米女性記者が、早々と交通事故で死ぬという設定も、もったいない気がします。
私だったら、瀕死の重傷を負ってとても自分で真犯人を追い詰められないので、主人公に取材資料を託すとした方がよかったのではと思われます。
それに題名も、『トゥルー・クライム』ではあまりにストレート過ぎて、日本では受けないでしょう。スティーブ・マックウィーン、フェイ・ダナウェイ主演の『トーマス・クラウン・アフェアー』が日本では『華麗なる賭け』でヒットしたように、工夫が欲しかったですね。
「日本の映画界が、欧米に比べて一番劣っているもの、それは監督でも脚本家でも俳優でもない、プロデューサーだ」と言っていた黒澤明監督の言葉は、どうやら真実のようです。
『企画の王様』
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