同前嘉浩・林博司「公務員が定時で仕事を終わらせる55のコツ」
就職するまで、市役所は定時で帰れるじゃないか、と思っていた記憶がありますが、そんなことはありませんでした。支所などその場の対応のみで完結する部署なら別として、ほとんどの職場は、多かれ少なかれ、時間外勤務をしなければいけない状況にあります。
少し古いデータですが、総務省の「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査結果の公表」というものを見つけました。都道府県と政令市、県庁所在市のデータですが、本庁勤務は月60時間超が5%程度。民間と比較すれば厳しくないのかもしれませんが、みんな早く帰れるというのとは全く違います。
育休明けで本格復帰した2年目の時、40人近くスタッフがいる課の庶務事務担当になりました。大事に育ててきた仕事がいくつもあったのに、係異動を命じられました。前任者は毎日残業していました。私は庶務事務の経験があったのですが、だからといって確実に定時で帰れるボリュームではないと思ってました。基本庶務事務は、知識や工夫は必要だけど基本単純作業で、加えてその他の事務も似たような感じ……何かを変えたり新しいことがどちらかといえば好きな私にとっては、モチベーションはダダ下がり。課長補佐がもともともっていた事務の一部を私に持たせてくれたことが唯一の救いでした。もちろんその事務がない方が楽なのは分かっていましたが、どうしても庶務事務だけに埋没しなければいけないのはイヤだったのです。
というわけで、その日から2年間、どれだけ定型事務を時短して、定時で帰り、かつ、自分のやりたい仕事をやる時間を捻出するか、の闘いが始まりました。前任者たちに代々引き継がれてきたマニュアルは分かりやすく、かなり工夫されていましたが、まだまだ改善できることはたくさんある、と思いました。Excelなどで思いつく限りの工夫をした後は、毎月前回の自分と時間競争をしました。複数の書類を参照しなければいけない場合、どこに何を配置するか、も大切になります。
と、そんな戦いを経験してきたので、この本を手に取ったのは、直接自分のためというよりはチームの他のメンバーにどんな工夫を促せるか、という期待からでした。こうしてnoteには自分のささやかな改善を武勇伝風に書いてしまいますが、あまりそういうことばかり言っている先輩にはなりたくないので、第三者である書籍からのアイデアをヒントにしてもらうことはできないかなと思いました。
本書は6つの章から構成されています。
今すぐできる!事務処理の時短術
役所のPCでも超速便利!パソコン業務の時短術
自分もチームも生産性アップ!スケジュール・タスク管理法
すんなりと決裁をもらう!上司とのコミュニケーション術
二度手間をなくす!調整・コミュニケーション術
あなたから始める!自治体仕事の時短思考法
読んでみると、自分もやったことがあるもの、比較的うちの職場では既に浸透していたものなどもある一方、ChatGPTを使ったアイデアなど新しいものもありました。
さらにこの本のすごいところは、自分個人の仕事を定時で終わらせるだけの議論にとどまらず、チームの中でどう立ち振る舞うべきか、上司とどう付き合うか、組織全体に対してどう働きかけるべきか、という壮大な話にまで発展しているところがすごいと思いました。
ですが、これ、何かを変えようと思うと、どうしてもここに突き当たります。Excelを駆使して便利にする、くらいだったら個人の判断でできますが、決裁のやり方を効率化する、なんてところに踏み出した途端、上司たちの了解を取り付けなければできないわけです。
何かを変える時に責任を取らなければいけないのは上司です。変えることに対して腰が重いのは本当にがっかりしてしまいますが、何かおかしなことにならないだろうか、と考えてしまうのはやむを得ないことだと思います。もちろんそういう上司に自分はなりたくないとは思いますが、理解しなければいけないし、むしろ、責任を取ろうとしてくれることに感謝しなければいけない、と思うようになりました。
でもこの気持ちになれたのは、決して腰が重い上司たちの気持ちが分かったからではなく、軽い感じで「いいよ、どんどん新しいことやろうよ」と言ってくれた上司たちが、さらに上席の職員や議会に対して、必死になって説明してくれている様子を目の当たりにしたからでした。
議員さんたちだって、新しいことに慎重になっていろいろと疑問を投げつけてくるのは、その後ろに市民がいるからで、自分がまず納得して、市民に説明できるようにならなければならない、という想いがあるからなのだと理解しました。
だから納得してもらえるよう、説得しなければいけないのです。そういう気持ちがないと、結局何も実践に結び付かずに、「私もやろうと思ったんだけど、上がダメだと言ったから」と言い訳ばかりする評論家になってしまうんだと思います。
話をもとに戻して、この本に書かれていることを、どうやって実践できるように働きかけるか。
まず辞書登録機能を使ってタイピングの手間を減らす、というものは、すぐに取り組みやすいので、声をかけてみようかな、と思いました。
実は私もTBS「がっちりマンデー」でフォトシンスの社長がこれを使って200文字のメールを9秒で作成するというのを見たのに、実践していなかったな、と思い、これを機に自分がよく使う言い回しを登録してみて、やっぱり便利だなと思いました。なので、今やってみましょう、と伝えてみたいです。
また、音声入力についても本で言及されていますが、これは星野リゾートの社長も実践されているようです。たまにnoteもスマホから音声入力することがありますが、滑舌を意識して話せばかなり早口でも反応してくれてます。もちろん変換ミスもありますが、後から直せばよいのです。
あとは、他にチャレンジしてみたいことを挙げてもらったり、自分自身がこれまでにやってきた工夫を披露してもらったりしたらいいかな、と考えたりしました。
今私がいる職場は障がい者支援課、窓口があり、かつその場対応で完結するものではありません。申請してもらい、そこから審査したり決定したり、支払いしたり、といった後続処理があり、お客さんが多い日には、残業ありきになることも少なくありません。
窓口対応は若手職員が中心に担ってくれていて、私は電話の応答のみですが、それでも事務が滞り、メモしている間に新たな電話が鳴って誰も余裕がなくて鳴りやまないので、後で記憶で補えそうなところまで書いたら次の電話を取る、といったことも頻繁に起こります。
そこまでいかなくても、取り組んでいた事務が中断されると、あれ?と思うことも少なくありません。
なので、logoフォームを使って申請してもらい、郵送で対応するなど、窓口に来なくても済むようにするといったことも、チームで考えてチャレンジしたいと思います。
この本については、今年の年末あたりを目標に、どれくらい実践ができたのか、後日談を書いてみたいと思います。