吉田昭元「わが社の主戦力は障害者」
力強いタイトルに心ひかれます。
障がいがあると、それを補おうとして、他の能力がついたりすることもあると思います。また、発達障害などは、そもそも、能力のバランスが取れていなくて、特に秀でている部分があったりすることがると思います。
例えば私の職場には聴覚障がい者がいますが、自分の検索で見つからなかった場合、彼女に頼むことがあります。私もそれほど検索が苦手というわけではないつもりですが、私が検索しても見つからなかった情報を彼女は見つけてくれることが多いのです。聴覚障がい者は情報障がいと言われるけれど、色んな情報がネットから入手できるようになって、情報探索能力をどんどん身につけて、こちらが頼るくらいです。
また、知的障がいのある方が、封入作業などをやっている姿はいつ声をかけてよいのかな、と思うくらい集中していて、スピードも速く、とても正確です。
そういう個性を見つけて、それに合った仕事をお願いしよう、というのが、この本の趣旨です。
障害者雇用促進法により、一定数以上の従業員がいる会社には、法定雇用が求められます。雇用できない場合には、1ケ月一人あたり5万の上納金を支払わなければいけませんが、支払っているケースが少なくありません。
また、法定雇用を守るために、本業とは異なる分野に取り組み、特例子会社を立ち上げて障がいのある方を一つの場所に集めて、単純作業をやってもらうこともあります。
さらにいえば、雇用代行ビジネスと言われるものもあります。貸農園などの働く場を企業に提供して、実際には企業の社員とは関わらない、良くてもイベント等で交流する程度ですが、障がい者は企業の社員、その企業から給与をもらい、雇用代行ビジネス業者も企業からお金をもらうという形です。
特例子会社も雇用代行ビジネスも、障がい者の収入確保の観点から見れば、とても素晴らしいことだと思います。
でも、障がいのある方と一緒に働く、というのは、そういうことではないのかな、と思ったりしてしまうのです。
嫌な言い方をすれば、特例子会社や雇用代行ビジネスも、障がいのある方にはまとまって仕事をしてもらい、専任で指導する人をつけて、障がいのある方が平均的にみんなできそうな単純作業をやってもらえればいい、というような考え方に思えるのです。
障がいといっても、身体、知的、精神に大きく分かられます。身体でも、肢体不自由、視覚、聴覚、言語、心臓、腎臓、膀胱・直腸、免疫、肝臓とたくさんの種類があります。例えば聴覚ひとつとっても、ろう学校で手話で学んだ人、途中から聞こえなくなった人、高齢になってから難聴になった人など、色々います。知的障がいも精神障がいも種別はありませんが、性質は様々です。
なので、得意なことも色々あります。
吉田氏は、どのように本人に合った仕事を見つけるかについて、具体的に説明しています。
それぞれの得意なことをよく聞き取った上で、仕事を担ってもらいます。一週間くらいやってもらうと合っているかどうか分かるので、合えば続けてもらうし、そうでなければ、一週間の状況を見て次に合いそうな仕事をやってもらいます。
また、合っている仕事を続けてもらって慣れてきたら、少し難しいことにもチャレンジしてもらう、もし無理だったらもとの仕事を続けてもらう、ということをやっています。
でもこういうやり方って、障がいがあろうがなかろうが、理想的だと思います。
私もこの仕事って、あてはめられてきて、どうにかやってきましたが、自分はこういうのが苦手なのに、と思ったこともあったし、これは得意だから手放したくなくて一年で係異動したときは、上司にもやりたい気持ちを認めてもらって、その仕事も持って異動したこともあります。新しい係の仕事もあったし大変だったけど、どちらかといえばそれは苦手な仕事だったので、前の係から持ってきた仕事が支えでした。
誰しも合う、合わない、得意、不得意がある、でもそれは、なかなか見つけてもらえなくて、合わない仕事もやらざるを得ない。すごくもったいないけど、なかなか難しいことだと思います。
現実はそんな感じです。
このお母さんのいうことは正しいかもしれないけど、私もどちらかといえば、社会の正しいより、個性を伸ばしたいと思ってしまいます。
自分も枠にかっちり収まるタイプではないと自認しているし、子供たちもそんな感じです。だから、子供の良さを認めてくれる先生だと本当にありがたいと思います。
でも、誰しもが、その個性を活かせる社会を諦めたくない、と思います。
吉田氏の会社です。
私も、まずは身近なところから実践していきたいですし、少しずつ、空気を変えていきたいと思います。