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小柳はじめ「鬼時短 電通で『残業60%減、成果はアップ』を実現した8鉄則」

時短に関するノウハウが書かれた本かと思ったら、全く違いました。時短をトップダウンで進めるときの心構えでした。

時短といえば、担当者側から考えるものだと思っていました。長年続けられてきたやり方を、新たに担うようになった担当者が疑問を感じて、効率化を図り、結果として、時短する、そんなイメージでした。
すごく幅広く情報収集しているわけではないのですが、公務員界隈でも、時短の本がいくつか出されています。
ぱっと思いつくのがこちらです。

けれど、トップダウンで働き方改革をしなければいけないこともあります。本の中でも書かれていますが、過労死事件が起きてしまった後、喫緊の課題として、働き方改革が行われることになりました。
その中心人物となった方が書いた本です。

本の中では8つの鉄則が掲げられています。

鉄則1 社長は「私欲」で訴えよう
鉄則2 現場が抵抗する「本当の理由」を理解しよう
鉄則3 現場の主は社長が自分で口説こう
鉄則4 現場の「すべて」を肯定しよう
鉄則5 トラブル処理は「すべて」引き受けよう
鉄則6 改革の「本質的価値」は語らない
鉄則7 「結果」で納得を得よう
鉄則8 「内部統制」という言い訳を封じよう


それぞれの鉄則の章の中で、具体的に何をやればよいのか、ということについて書かれています。
組織のトップはもちろん、部署のトップにもなると、あまり現場のことが見えなくなりがちです。もともとは自分もそういう立場にいたにも関わらず、忘れてしまうこともあるのでしょう。なので、まだ現場にいる私から見れば、そういう感じだな、と思うようなことも丁寧に書かれているのが印象的でした。
例えば、現場の主のこと。長年勤めてきて、何でも知っていて、頼られますが、でも変えることに対して抵抗があったりします。
そのやり方で、うまくやってきた、という自負があるからです。
同じチームの一員として、何かを変えようとするときにも、「あの人がうんと言わないとね」というあんまり素敵な意味じゃない方のキーパーソンです。
そういう人とはトップが直接話をして、現場でどのようなことに時間がかかっているのかを聞き出す、といったことを勧めています。

私は自分自身の問題として、時短したい、と思いながらやってきた経緯があります。若い時は、時短で浮いた時間ができれば、自分が課題認識したことに取り組みたいと思ったし、子育てするようになってからは、とにかく決められた時間までしか仕事ができない、という制約の中でこなすために時短は必要でした。
もし、自分が、このようなトップダウンで働き方改革が行われている組織にいたとしたら、どんな風に考えるだろうか、と考えながら読みました。
基本は働き方改革は賛成、時短についても、積極的に取り組みたいと思っています。自分一人ではできないことも、周りに嫌われないように注意しながら、変えようとしてきました。
そういう自負があるからこそ、現場の主とは違うものの、自分が取り組んできた時短がまだまだ甘い、足りない、と言われたり、手法を押し付けられたりしたら、反発したくなるだろうな、と思いました。

また、改革で出た影響は上層部が責任を取る、外部に対して説明をしなければいけない時には、それもやる、とこの本には書かれています。
それはすごいことだと思います。
けれど、「上司を出せ」と言ってくる怒っているお客さんが、私が説明したことと全く同じことを説明しただけで納得したときの、あのもやもやみたいな状態になるだけのような気もします。
最初はうまくいかないけれど、色んなことがうまく回り出す瞬間がある、といったことも書かれていましたが、本当にうまくいくのかな、と思ってしまいました。そもそもブレイクスルーが起きるまで、やり続けることができるのだろうか、とか。

一方で、こんな風であったらいいな、と思ったのは、この部分でした。

ミスを減らすためには、「全員がかならずミスを犯し続けている」ことを、全員で認め合うこと。これを現場に徹底させてください。
ミスを犯すのは「注意力が欠けていた」から、「仕事に情熱や責任感が足りない」から、「いいかげんな給料泥棒」だから……と攻め合う慣習を、厳しく取り締まってください。
それこそが、《鬼時短》の的だからです。

本書

恥ずかしながら、私はミスが多いです。若いころは、一生懸命チェックして、それでも指摘された時は、自分がダメな人間だと言われているような気がして、とても落ち込みました。
でも今は、限られた時間でこなさなければいけないので、例えば、10%のミスを1%のミスまで減らすよりも、10%のミスでも2倍の仕事をこなして、違う目で見てもらい、回すことの方が大事と考えています。
私がそう思っているからなのか、指摘してくれたことに感謝しているからなのか、ここ数年の環境が恵まれているからなのか、あまり責められるような気持ちになることは減ってきました。
また、むしろ他の人の仕事をチェックする立場になったりもしているわけですが、間違いはあるもの、という意識を忘れないようにしていますし、自分がチェックしきれなかったことを上司が気付いてくれたら、それに感謝するとともに、チェックしきれなかったお詫びもしています。また部下に対しても、「私も気付かなかったけれど」と前置きしてからミスを伝えています。
これは意識的にやっています。
振り返ると、自分自身が「ちゃんとチェックしたの?」と不機嫌そうな顔で言われたこともあります。突然降ってきた仕事が重なっている状況を分かっているのか分かっていないのか、この状況だから、他の人に手伝ってほしいとも言い出せなかった自分が悪いのか、とにかく早く年度末になって異動したいとばかり考えていたことを思い出します。
それでも定時で帰らなければいけないから頑張りましたけど、悲しい気持ちで仕事をするのは、重たい処理をやってるパソコン的に、処理スピードが遅くなる感じだったと思います。

この本は、働き方改革の進め方、というテーマで書かれていますが、ひょっとしたら、あらゆる組織改革に通じるものがあるのかもしれません。さらにいえば、組織は現状に合わせて変わっていかなければいけないものであるから、中長期的な組織マネジメントにも応用できるのかな、と思いました。
時短プロジェクトの期間だけでなく、ずっとこのような考え方でトップや上層部がいてくれたとしたら、とても働きやすい組織になるのではないかなと思います。

「はじめに」の部分が、東洋経済の記事で紹介されていました。

現在は、こちらの会社の社長をされています。


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