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荒 昌史「ネイバーフッドデザイン まちを楽しみ、助け合う『暮らしのコミュニティ』のつくりかた」

この本を読みながら、何度も頭がクラクラしてきました。行政がこんなのが理想と考えているようなコミュニティがそこにあり、けれどその創り方を教えてくれるのは、民間事業者です。今日も電話や窓口に何度も中断されながら(もちろん一つ一つの電話の対応も大切な仕事だとは思ってはいますが)、机の上だけで仕事をしていて、自分はこんなことを毎日やっていて、やるべきことができているのだろうか、と思ってしまいます。

ここは私が好きなまちの一角です。
今日は天気もよく、気持ちの良い日。

この本はこんな言葉から始まります。そこに続く情景は、とても生き生きしていて、人と人のやりとりが温かくて押し付けがましくなく、誰もが居心地よく感じられる場所だというのが想像できます。

この本の中で、ネイバーフッドデザインとは、「同じまちに暮らす人々が、いざという時に助け合えるような関係性と仕組みをつくること」と定義されています。
これって、行政が「コミュニティの醸成」みたいな言葉でまるっと表現するときに、イメージしていることだと思います。こういう場所が必要であると認識しています。
けれどこれを語っているのは行政ではなくて、民間事業者であり、ビジネスとして(といっても、がっつり儲けようみたいな感じではないのでしょうけれど)、コミュニティづくりを支援している株式会社です。
それを考えると、何だか頭がクラクラしてきます。
必要だと認識していて、計画の中でもそれらしいことを書いているのに、それをどうやって作ればいいのか、ノウハウを持っているわけではないのです。

ですが一方で、行政がノウハウを持っていないことが、よい方向に働いているということもあると思います。行政がやるとしたら、一律に同じようなことをしてもらおうとしてしまう。あとは、公平にとか、リスクのないようにとか。あとは、しがらみを感じるようなものになってしまうとか。
ネイバーフッド・コミュニティは「しがらみでも孤独でもない」とも書かれています。

この本に書かれている色んなエピソードを読みながら、私は、まちでいろいろなチャレンジをしている、たくさんの大好きな人たちのことを考えていました。ここに書かれているこの人のふるまいは、誰に似ているな、とか、誰もこんな感じに動いているな、とか。
みんなひょっとして、この本を読んでいるのでしょうか。
いえ、でも、この本が出た2022年4月よりも前からそんな感じだったから、そういうふるまいをする人たちの周りには自然に人が集まって、私もその人たちに繋がることができたのかもしれません。
そう、多分、こうしようと思って、できるわけではないと思います。ただ、この本の最初に書かれている、まちの一角と同じようなビジョンが頭の中にあって、それを実現したいという強い気持ちがふるまいに表れているのではないかなと思います。

では、ネイバーフッドデザインは、そういうふるまいができる人材がいなければできないのか、というと、そういうわけではないと思います。この本の中では、具体的にどんな風に、「まちの一角」を作っていくかについて、ネイバーフッドデザインを構成する「6つのメソッド」について説明しています。

未来とゴールのデザイン
人々のつながりをつくることが目的ではなく、つながりによって生み出されるものが真の目的。だから、どんなものを生み出したいのか、まちの未来像をかくことで、ゴールを共有できるようにします。

機会のデザイン
イベントのように消費的・瞬間的なものではなく、その後につながりや新たな展開が怒るような機会を目指します。また、機会のデザインはまちの取り組みへの入り口になるので、ひとつひとつの振る舞いや心遣いに心を配ります。それは、あらゆるところに潜在的にある機会を活かすということなのかなとも思います。

主体性のデザイン
私が一番素敵だなと思うところです。自分がやりたいとぼんやり考えていたことが実際にできそうになるときに、一番夢中になれると思います。だから、個人の夢や目標と、まちのプロジェクトの接点を見つけ、その人自身の興味や幸せにつながる活動を後押しをします。

場所のデザイン
場所から考えず、まちの未来像やゴール、コンセプトに基づいて、それを実現する場所の在り方を考えます。また管理についても、管理側・利用側の関係ではなく、ほどよい距離感のスタッフによる「友人管理」が重要になるそうです。

見識のデザイン
まちの課題の解決には、「知識」を持ち、「体験」により理解を深め、それを自らの行動に結びつけられる力=「見識」が必要になります。イベント等のほかエリアマネジメント拠点等での日常の会話にも、まちの課題に関する知識をちりばめていくことが大切とのことです。そして、体験・追体験によって知識を「自分ごと」化してもらう機会をつくります。

仕組みのデザイン
これまでの5つのデザインの全てを統合し、まちづくりの持続化・経年良化の基礎となるのが「仕組みのデザイン」です。また「管理」ではなく、「経営」の視点でお金を扱うことが大事です。

仕組みのデザインの中に、「経年良化」という言葉が出てきます。
これがとても大事になるような気がします。例えば、見識のデザイン、最初から、日常的に、まちの課題に関する知識をちりばめながら会話するなんて、難しいような気がします。ですが、試行錯誤しながら、少しずつ変わっていけるのかなという気もします。
まずは、素敵だな、と思うまちの一角の様子を思い浮かべ、それを誰かと共有するところから、最初の一歩は始まるのかもしれないと思いました。


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