藤原和博「藤原和博の必ず食える1%の人になる方法」
正直なところ、あまり好きなタイトルではなかったのですが、読んだ後に、自分に一番足りなかったことは、「食える」だったのではないかと思いました。
大事なこととは思いつつ、「食える」って、その身もふたもないような言葉の響きがちょっと苦手だったんです。でも実は、安定した収入源(常に仕事のことが頭から離れず、プライベートな時間に読む本や集める情報もかなり仕事寄り、というブラックな状況ではありつつも)があって、その安心感の上で、自分は何をやりたいんだろう、と考えていたみたいです。
この本を読むことになったのは、他自治体同業者の方が紹介していたからです。
彼女も、木下斉さんが紹介しているとすぐに読んでしまう、といいます。私は木下斉さんのnoteのメンバーシップになっていて、そこで紹介されているとすぐに読むのですが、この本については、気付かなかったのか、あるいは、ジブン株式会社ビジネススクールだけで紹介していたのかもしれません。
Kindleで購入したのですが、最初の一読は、面白くて一気読みしてしまいました。帯に「キングコング西野亮廣さん激賞!「バチクソに面白いから、絶対に読んだほうがいい!」とあったのですが、まさにその通りです。
Kindleで読む場合には、印象に残った部分をハイライトしながら読むのですが、もうそんな余裕もないくらい、どんどん読み進めてしまいました。
そして読み終わった後、ちゃんと理解したいと思い、すぐに読み直しました。
この本で一番伝えたいことは、必ず「食える」100人に一人になるために、まずパチンコをしない、電車の中でスマホゲームをしない、1ケ月に1冊本を読む、こと、この基本的な条件だけはクリアしたい、ということなのだと思います。
もちろんパチンコやスマホを暇なでどうしようもない時にやるのならよいかもしれないが、やり続けて自分の時間のマネジメントもできないのは問題があるという話です。マネジメントで得た時間に本を読み、自分が体験した一次情報だけでなく、本を読んで、作者の体験を取り入れることで、様々な情報を自分の力で編集できるようにしよう、ということになります。
この前提条件をクリアした上で、仕事というか稼ぐことに対するスタンスを社長タイプ、自営業タイプ、公務員タイプ、研究者タイプの4つに分けて、それぞれのの分野の中で、「食える」ための4つの条件を提示します。
そうなると、2つの選択肢を計7回選ぶことになり、全て「食える」方を選んだとしたら、2の7乗分の1=128分の1になれるというわけです。
例えば、
営業力・プレゼン力・交渉力があるかないか
「正解主義」「前例主義」「事なかれ主義」を打ち破れるか
といった問があります。どの程度を基準にするか、という問題がありますが、半数より上位にいられるかどうか、で考えながら読みました。
いくつかはクリアできているかな、と思えるものもありましたが、全部は難しいと思いました。
そして何より、自分がどのタイプなのかがよく分からなかったのです。
なので、とりあえず全ての設問に、自分はどうかな、と考えながら読み進めました。その結果、公務員対応は少し違うかな、研究者タイプは全く違うな、と思いました。
著者自身は基本は社長タイプなのかな、と思います。特にご自分の経験を踏まえたエピソードが事例として多く挙げられていたからです。
ですが、自営業タイプのところでもかなり挙げられていました。
さらに公務員タイプのところにも挙げられていました。
どこか一か所というわけではなく、あるいは、どこかで達成していたら、他の分野でもチャレンジを、とあとがきにもあることから、複数の分野で「食える」人間になることが可能なのだと思います。
なぜ、この本がこんなに面白く、ぐんぐん読めてしまったのか。
それは、この本の中に書かれている手法を用いて書かれているから、ということに、2回目に読んだ時に気付きました。
そもそも、前提条件も、パチンコをしない、電車でスマホゲームをしない、といった非常に分かりやすい話になっています。
この本を手に取る人に、習慣的にパチンコをする人はあまりいないように思われます。ここで、大丈夫、と思わせておいて、電車でスマホゲームをしない、という質問で、ああ、電車に乗るとみんなスマホゲームしてるよね、と考えたり、あるいは心当たりのある人には、あれ、大丈夫だろうか、という気持ちにさせるわけです。さらに読書となると……。
読書に関しては、文化庁の統計で、令和5年の調査で、月1冊程度も本を読まない人が62.6%にものぼるというデータが出ています(下記のP23に出ています)。
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/94116401_01.pdf
でもこの本を手に取る人は、本を読む習慣があるので、イエスの方が多く、安心するのかもしれません。
こうして、読む人が持っているであろう情報にコミットしつつ、自分の考えを披露していくあたりは、社長タイプのところで紹介している、藤原流、営業の極意の通りかな、と思いました。
私はもう20年以上も公務員をしていますが(あと少しで産休・育休期間も除いたきっかり20年を迎えます)、改めて、やっぱり合わないんだな、と思いました。
合わない人がいることも必要だ、と思って、頑張ってきましたが、時々心が折れそうになります。
最近読んだこの本にも、行政は変わらなければいけないと書いてありました。
なので、異分子として、耐えられるだけ頑張ろうと思います。
そして、もう一つ大切なことに気付かされました。私が「食える」という言葉に違和感を抱けるというのは、何やかや言いながら、この毎月の収入にどっかりと安心していたからです。
無償で、毎日心が折れるような目にあっているわけではありません。「食えるか食えないか」の状況で、嫌な思いをしているわけではありません。
「食える」のは、職場があるからです。
なので、「合わない」けど、「合わない」を突き進んでいこうと思います。
そしてこれまでもある程度はやってきた感覚はあるけれど、「正解主義」「前例主義」「事なかれ主義」を打ち破り、社内自営業者としての意識をもっと強めたいと思います。
そしてもう一つ、なぜ私がちょっと「正解主義」「前例主義」「事なかれ主義」を打ち破ったとか、社内自営業者としての意識を持てていると思えているのは、そんな風に行動できている上司がいたからです。
「ほら、お前、職場に閉じこもって作業なんてやってないで、外に出て行って仕事しろ」
「私だってこんな作業したくないですけど、しないといけないんですよ。早く終わらせて、仕事しますから」
なんて会話をしていたことを思い出しました。私は採用以来、多分、女性だから、という理由だけで、庶務事務、他の課とのやりとりやら支払いやら、予算決算のとりまとめやらといった、Bullshit Jobsを与えられてきました。もちろんその中で、意義を見出し、仕事にしてきたつもりはありますが、他の自由度の高い仕事と異なり、効率化を図ったり、してきましたが、そもそも自由度の少ない仕事、他の人の様子をみながら、こんな風にすればよいのに、と思いながら悔しい思いをしていました。提案したこともありますが、スルーされるか嫌な顔をされるか。
自分が自由度のある仕事に携われたタイミングでは、考えたことを思う通りにできましたから、それほど、見当はずれなことを言っていたわけではないと思います。
その上司が「作業、仕事」という言葉の使い分けをして私にもっと意義のあることをしなさいと言ってきたのは、今から約10年前ですが、その時にはこの本が出ていたので、その上司もこの本を読んでいたりして、と想像しました。
この上司や、その他の私の提案を認めて調整してくれた人たちのおかげで、ほんのここ数年ですが、様々な経験を積むことができました。だとしたら、私も、後輩たちに自分たちの考えを実践する経験をしてもらいたいと思います。
そして、私自身も、この次に何をするかについても、しっかり考えていこうと思いました。
著者、藤原和博氏の公式サイトです。リクルートを退社する直前に立ち上げたそうです。