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石井大地「こうすればうまくいく 行政のデジタル化」

外に出ればみんなうつむいてスマホの画面を見ている。買い物はネットショップで済ます。食料品だって、ネットスーパーがある。みんな、ネットが好きだから、ネットショップで買っているのだろうか。いや違う、便利だから、使うのだ。もっと言えば、すぐに飽きてしまう子どもを連れて買い物に行くよりもずっと時間的にも体力的にも楽だからネットスーパーを使うのだ。人混みを避けなければいけない状況になっているからじゃない。もっと前からそうだった。でもこの状況のおかげで、行政の現場でも一気にデジタル化による手続きが広まっている。
申請手続きだけでなく、LINEによるパブリックコメントとか、その領域も様々。そうしたことに取り組む場合には、もちろん自前でできることもあるかもしれないけれど(実際石井氏もExcelのマクロや、自治体で導入が進んでいるRPAで内製により可能なことがあると書いている)、事業者と組んで、外注して、構築していくことになる。その際に、どのようなことから取り組んでいけばよいのか、事細かに書かれている。
石井氏が代表取締役CEOを務める株式会社グラファーはは、既に行政と組んでシステム開発を行ってきたから、行政の中のことも熟知していている。新しいことが進みにくい組織ということも理解されている。そうであっても、デジタル化を進めなければいけない、そのために少しでも多くの行政の中の人間に理解してもらいたいという気持ちが伝わってきた。
私はIT関係の部門にはいないけれど、最少の経費で最大の効果を上げるという公務員の責務を全うするためには、デジタル化がカギになると思っているのでこの本を手に取った。けれども、この本に書かれていることは、デジタル部門だけでなく、あらゆる分野で、新しいことを導入しようとするときに気をつけなければいけないことが書かれていると思った。自分の仕事の分野でも一部システムを使っているので、この本に書かれている観点から見直してみたい。そして、そもそも、システム云々の前に、ウェブページでできること、ウェブのフォームでできること、メールでできること、既存のプラットフォームでできることもたくさんあるわけで、そこで代用できることはないだろうかと考えることが全てのスタートじゃないかと改めて思った。
そんな話をすると、ネットに繋がらない人がいるとか、高齢者はどうするという話になるけれど、そんなことを考えていて前に進まないのは、むしろ、オンラインじゃないと参加できない、手続きしにくい人たちを無視しているわけで。うつむいてスマホを眺めている人たちは、みんな暇だから見ているとは限らず、空いた時間に情報収集したり、必要な買い物をしたりするのがルーティンになっている人なのかもしれないのだ。「やるリスク」より「やらないリスク」と石井氏も言っている。

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