原田曜平「Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?」
Z世代とかいって、何、急に若者に迎合してるんだろう、みたいなことを、ずっと思っていた。Z世代云々前に、今の世の中、X世代(このくくりも3つくらいに分けるべきではとも思っているけれど)だって、全く納得してないですから、などと考えていた。
Z世代というのは、1995年~2010年くらいに生まれた世代のこと。人数が多い世代ではなとしていものの、デジタルマーケティングの世界でターゲットとなっているとともに、発信に長けているため、インフルエンサーとして多くの企業から注目されているそうです。
個人的な話をすると、私はポスト団塊ジュニアの最初の方、花の女子大生とか上の世代がもてはやされた後、私たちは注目されることないまま大学生となり、気づけば女子高生ブームが来ていた。ということもあり、少々注目させる世代、ということに、妙な嫉妬心を抱いていたのかもしれない。
著者は1977年生まれ、広告会社を経て若者研究の第一人者とのこと。「マイルドヤンキー」とか「さとり世代」なんていう言葉を広めた方。どんなSNSを使って、chill(まったり)を好むとともに、映えにこだわるなど自己承認欲求が強くて、一方mixi村八分が怖いから間接自慢という方法を使うとか、著者が一緒に活動する若者たちやデータから見られるZ世代の特徴が語られている。
読みながら、気になったのは、Z世代を育てたのはおおむねX世代であるということ。親が子どもの価値観のすべてを決めているわけではない。教育や、社会状況や様々なものが影響を与えて、その世代全体に現れた特徴というものを形作っていくのだろうけれど、それにしても、例えば子どもが自分の恋愛相談を親にするとか、こんなご時世だからとはいえ、親の助言で原田さんとの県外出張を断るとかいった事例には少々驚いてしまう。もちろん、自分の子どもには、相談したいと思ってくれるような親でありたいとは思うけれど、自分の助言がそんな風に通ってしまうのも、ちょっと不安になるだろうな、と考えたりした。
この本の読者はZ世代がどういう世代なのか、何に注目しているのかを知り、それをマーケティングに活かしたいと考えている人たちが想定されていて、実際私もそういう意図があった。というのも、X世代以前の上司から命じられて、Z世代のチームを作って検討するようにというオーダーがあったからだ。
なので、少し関連する話が出ていたので、その部分をご紹介したい。承認欲求が強くて、裏垢で毒を吐いたりするなんて話を聞くと、少々緊張するけれど、これまで個人的にはそれほど接することのなかった世代と話をする機会ができるのは楽しみだったりもする。
『おじさんの経験値がむしろマイナスに働くケースが多発するこれからの時代に、企業がやるべきことは二つしかありません。
一つ目は、若者に権限を委譲すること。少なくともZ世代に向けたマーケティングや広告や広報は、Z世代に大きな権限を委譲するべきです。(中略)
二つ目は、これは私のZ世代を対象としたマーケティングのやり方でもあるのですが、Z世代と協働する方法です。長らく若者研究をしている私でさえ、Z世代のディテールは肌感覚では分からなくなっています。(中略)私がオーケストラでいうところの「指揮者」のようにふるまい、彼らの演奏を指導したり導いたりするのです。あくまで演奏するのは彼ら自身、という手法です。』