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「春」の意味
Chère Musique
毎年春の終わりに開催される合唱のコンクール。
以前は毎年参加していたこのイベントに、昨年2022年に何年振りかで母と一緒に出演しました。
この何年か舞台のたびに毎回「今回が最後」と言う、合唱が趣味の80代半ばの母は、迷っているイベントでも「私も一緒に出るよ」と言うと、がぜん張り切ります。
新川和江『春』
新川和江(しんかわかずえ)さんの『春』という詩に、信長貴富(のぶながたかとみ)さんが作曲した作品。
世の合唱部、合唱団には知れ渡った、合唱人は一度は歌いたいと思われている曲だと思います。
新川さんは、大人になり始めの年齢が戦中で16才で終戦を迎え、一番多感な時を戦後に過ごしました。
その新川さんにしか描けない、復興してゆく社会の中で上を向き前を向いて未来を見つめる若者の想い。
この詩にあるすべての言葉たちが、戦中に生きるということがどういうことなのか、をはっきりと伝えてくれます。
「大変だったのよね」
「食べ物が貧しかったのよね」
「怖かったのよね」。。。
そんな程度のことでは理解しきれない、身を縮めて命を抱え続けた人々を、戦争とはどういうことなのかを、私たちは少しでも感じたい。
そのために、この歌を歌うことは、概念を覆されるほどの深い経験となります。
「私はもう悲しむまい」
あらゆる木々が「みんな忘れずに芽を吹き出した」
「寒い冬の日に伐りたおされて、よこになったままの、銀杏の幹から零れるように芽を吹いた、このあおいものは」
「私は雌鳥のような理屈抜きの情熱で、抱きしめる。希望と親愛のたまごを抱きしめる。緑の影に胸を高鳴らせ、心ふるわせ、私はたまごを抱きしめる」
作曲家信長貴富さんの音が、この上なく的確にこの詩の意味を音にしてくれています。
歌で表すということは、私たち人間の声でこの詩を人に伝えるということ。
この詩を、心が震える“音楽”にしてくれたことに感謝します。
この時代の、この詩を生み出した人々が、私たちの“今”を作ってくださった。
戦争をしている国の人々の、人間であることを諦めそうになるほどの状況を、少しでも想像出来たらと思います。
昨年、練習に参加した時には、母の隣で声を合わせて歌うこととこの作品の内容と、どちらにも感動するひと時を過ごしました。
Musique, Elle a des ailes.