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読書感想文にオススメの本(4)ー高校生編ー
※4000字近い記事です。
お時間のある時に
お付き合いいただけると嬉しいです。
一応、「読書感想文」という名目なので、学校に提出しても恥ずかしくない本を選んだつもりです。
なので、このリストに挙げた本はいずれもおもしろい作品ではあるものの、「エンタメ性が高過ぎないもの」を中心にピックアップしています。
※それぞれの「読書レベル」も付けていますが、あくまでも私の主観による「客観」です。★が多いほど、難しい表現が多かったり、ページ数が多かったり、読破が難しいと思われる本です。
※それぞれの本に「感想文のヒント」を付けています。感想文を書く際に参考にしてみてください。
①『ぼくは勉強ができない』山田詠美
発行年:1993年/出版社:新潮社/288ページ
読書レベル★★★
主人公の秀美は、17歳の男子高校生です。サッカーが好きで、頭の回転が速く機転の利く彼ですが、学校の成績は悪く、勉強はできません。
しかし、そんな彼は、とりわけ女の子によくモテるのです。高校生にして、大人の女性ともお付き合いしています。これは女手一つで、秀美を育てた母親の理想の男性像を再現した「英才教育」の賜物でもありました。
高校生の普通の日常生活を描いた連作短編ですが、無性に心を打つエピソードも出てきます。
感想文のヒント
あなたにとっては同世代の主人公なので、同じクラスに彼がいたら、どう思うか考えてみてください。
連作短編なので、気に入ったエピソードを一つ、取り上げるのもいいでしょうね。
②『塩狩峠』三浦綾子
発行年:1968年/出版社:新潮社/464ページ
読書レベル★★★★
1909年に北海道の塩狩峠で実際にあった鉄道事故をモチーフにしたフィクションです。この鉄道事故では、若い鉄道員が自らの命を犠牲にして、乗客の命を守りました。そのことに感銘を受けた著者が、鉄道員の生涯を描いたのです。
感想文のヒント
この作品の中には、キリスト教徒が迫害される描写が出てきます。
「信仰」や「迫害」について、あなたはどう考えますか。
本作を読むと、命の尊さについても考えさせられますね。
③『月と六ペンス』サマセット・モーム
発行年:1919年/出版社:新潮社ほか/378ページ(新潮文庫版)
読書レベル★★★★
フランスの画家、ポール・ゴーギャン(1848-1903)の生涯をモチーフにしたフィクションです。
ゴーギャンが本格的に画家を志したのは、40歳を過ぎてからのことで、かなり遅い方でした。晩年はタヒチに移住しており、その辺りが本作のモチーフになっているようです。
物語のメインはゴーギャンをモチーフにした「ストリックランド」という人物ですが、主人公は作家の卵である「わたし」です。読者はストリックランドを客観的な視点で追っていくことになります。
感想文のヒント
本作を単体の作品として楽しむのもいいですが、モチーフになっている画家・ゴーギャンについても調べてみるといいでしょう。
彼がどんな絵を描いていたのかを知ると、作品への理解も深まります。
④『暗幕のゲルニカ』原田マハ
発行年:2016年/出版社:新潮社/510ページ
読書レベル★★★
こちらは画家のピカソ、中でも彼が描いた『ゲルニカ』にまつわるエピソードをモチーフにしたフィクションです。
『ゲルニカ』は、この本の表紙にも載っていますね。モノクロの絵画で、これは世界ではじめて「空襲」を受けた地・ゲルニカを描いた作品です。ゲルニカは、ピカソの故郷でもあったのです。
当時のピカソは、万博に展示する作品制作のために、パリにいましたが、このニュースを聞いてから、何日もアトリエに引きこもり、作品づくりに没頭していました。そうして完成したのが、あの絵画なのです。
本作では、そういった制作背景(1937~1945年、パリ)と、国連に飾られた『ゲルニカ』のレプリカに暗幕が張られた経緯(2001~2003年、ニューヨーク)が交互に描かれていきます。
感想文のヒント
ピカソは故郷が空襲を受けて、どのように感じたのでしょうか。
絵画の『ゲルニカ』には、その時に感じたものが込められいるはずです。
戦争についても考えてみてください。
⑤『解錠師』スティーヴ・ハミルトン
発行年:2009年/出版社:早川書房/571ページ
読書レベル★★★★
「絵を描くこと」と「錠前破り」の才能を持つ少年が主人公の物語です。
彼は8歳の頃に起こった悲劇的な出来事が原因で、話すことができません。
不遇の時代を過ごし、プロの金庫破りの弟子となった彼が、どのような人たちと出会い、どう変化していくのでしょうか。そこには光と闇がありました。
感想文のヒント
あなたと同年代の主人公の物語です。
自分と比べて、主人公の境遇をどう感じるか、書いてみてください。
ストーリーもよくできているので、どの場面がどうおもしろく感じたか、考えてみるのもいいですね。
⑥『クライマーズ・ハイ』横山秀夫
発行年:2003年/出版社:文藝春秋/471ページ
読書レベル★★★★
1985年に高天原山(群馬県と長野県の県境にある山)で起こった「日航ジャンボ機墜落事故」をモチーフにしたフィクションです。この事故では、乗員乗客524名のうち、520名が命を落とし、単独の航空事故としては、世界最多の死者数となりました。
世界的にも注目を集めた、この悲惨な事故を本作では、主人公である地方新聞記者の視点で追っていきます。これは、当時、実際に地方新聞記者だった著者の体験を元にしており、現場のリアルな空気が伝わってくるでしょう。
作中では、「事故当時」の話と、そこから時が経った「現在の話」が交互に描かれていきます。二つの話がどのように繋がっていくのかも、見どころです。
感想文のヒント
作品のモチーフになっている「日航ジャンボ機墜落事故」についても、調べてみると、感想文を書く際に役立つでしょう。
新聞記者の仕事についても、詳しく描写されているので、その感想を書くのもいいですね。
⑦『手紙』東野圭吾
発行年:2003年/出版社:毎日新聞社ほか/428ページ(文春文庫版)
読書レベル★★★
弟と二人暮らしだった武島剛志は、弟の大学進学の資金を作るために、空き巣に入りました。お金を手に入れるのが目的だったはずの剛志は、誤って住人を殺害してしまいます。
この物語は、その弟・直貴の視点から描かれていきます。直貴のもとには、毎月、獄中の兄から1通の手紙が届きます。兄は今でも弟のことを想っているのです。
しかし、直貴はそんな兄の存在をうとましく感じていました。なぜならば、直貴が何かをするたびに、兄が犯した罪のせいで、「殺人犯の弟」というレッテルが貼られてしまうからです。就職、結婚、夢、あらゆる場面で、そのレッテルが道を阻んでしまいます。
感想文のヒント
この物語は、ストーリーがよくできているだけでなく(悲惨な話ではありますが)、「犯罪者の近親者」に対する世間の冷たさを描いた社会派のドラマでもあります。
その辺りの社会問題について、ぜひ、あなた自身の考えも添えてみてください。
⑧『NASAより宇宙に近い町工場 僕らのロケットが飛んだ』植松努
発行年:2009年/出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン/205ページ
読書レベル★★★
著者の植松努さんは、北海道赤平市にある小さな町工場の経営者です。
「小さな町工場」ではありますが、この工場では宇宙ロケットを開発しています。
この本では、植松さんが子どもの頃から、どのような体験をして、現在にいったのか、そして、現在、何を考え、どういうことを実践しているのかが書かれています。
「未来の社会」を作るために、私たちに何ができるのか、植松さんのお話に耳を傾けてみましょう。
感想文のヒント
植松さんのお話の中で、今後の自分が生きる上で、参考になりそうな話を教えてください。また、植松さんのお話を受けて、あなたはどんな人生を歩みたいと思いましたか。
⑨『進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線』池谷裕二
発行年:2004年/出版社:講談社/304ページ
読書レベル★★★★
本書は脳科学者である池谷裕二さんが、ニューヨークに赴き、現地の高校生に向けて「最先端の脳科学」について講義した内容を、そのまま書籍化したものです。
池谷さんの語り口は、とてもユニークで、非常に高度な内容を学生にも理解できるように、わかりやすく解説しています。
「脳」に関しては、未だに未知の部分が多いと言われていますが、この本に書かれていることを知るだけでも、世界が広がるような感覚が得られますね。
感想文のヒント
「脳」について、非常に広い範囲にわたって話されている内容なので、特に印象に残ったところを重点的に取り上げるのもいいと思います。
「おもしろい!」と思ったところを友達や家族に教えるつもりで書いてみてください。
⑩『深夜特急1ー香港・マカオ』沢木耕太郎
発行年:1986年/出版社:新潮社/272ページ
読書レベル★★★★
この本は、作家の沢木耕太郎さんが、1970年代に海外で旅をした時の体験を綴ったノンフィクション作品です。バッグ一つで旅をする「バックパッカー」のバイブルとしても知られています。
この頃に沢木さんが旅をしたのは、インドのデリー~イギリスのロンドンで、道中はすべてバスだけで移動していたそうです。
1巻目(文庫版は全6巻)であるこの本では、香港、マカオでの旅の記録が綴られています。言語が通じなくても成立するコミュニケーション能力の高さ、著者のみなぎる冒険心に圧倒されるでしょう。
感想文のヒント
当時(1970年代)の時代背景、香港やマカオの文化についても調べてみましょう。
この時代にこんな旅をすることが、いかにすごいことだったかわかるはずです。
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