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読書感想文にオススメの本(5・終)ー大学生・社会人編ー
※4000字以上の記事です。
お時間のある時に
お付き合いいただけると嬉しいです。
一応、「読書感想文」という名目なので、学校に提出しても恥ずかしくない本を選んだつもりです。
なので、このリストに挙げた本はいずれもおもしろい作品ではあるものの、「エンタメ性が高過ぎないもの」を中心にピックアップしています。
※それぞれの「読書レベル」も付けていますが、あくまでも私の主観による「客観」です。★が多いほど、難しい表現が多かったり、ページ数が多かったり、読破が難しいと思われる本です。
※それぞれの本に「感想文のヒント」を付けています。感想文を書く際に参考にしてみてください。
①『ヒゲのウヰスキー誕生す』川又一英
発行年:1982年/出版社:新潮社/336ページ
読書レベル★★★
日本ではじめてウイスキーを製造した竹鶴正孝氏(ニッカウヰスキー創業者)の生涯を描いたノンフィクション小説です。
竹鶴氏がウイスキーの製造方法を学ぶために、単身でスコットランドに渡ったのは、1918(大正7)年のことでした。
今とは違って、当時の日本では戦争以外の理由で、海外に行ける人の数は、ごく限られたものでした。そんな中で、言葉も文化も違う国に行って、何かを学ぶのは相当な苦労があったはずですね。
海外での苦労も多いですが、日本に帰国してからも多くの困難がでてきます。例えば、ヨーロッパと日本では気候が違うので、同じ製造方法でも同じ味わいのウイスキーができません。数々の障害を乗り越えて、日本のウイスキーを確立する過程に感動させられますね。
感想文のヒント
あなたが20歳以上ならば、ぜひ、竹鶴氏が礎を築いたウイスキーを味わってみてください。
本に書かれていた話と自分の体験が交わる瞬間、あなたは何を感じるでしょか。
②『マクベス』ウィリアム・シェイクスピア
発行年:1606年/出版社:岩波書店ほか/162ページ(新潮文庫版)
読書レベル★★★★
17世紀にシェイクスピアが書いた戯曲です。「戯曲」というのは、舞台用の作品として書かれた作品のことで、登場人物の「セリフ」と「ト書き(舞台や演技の説明)」によって、物語が進んでいきます。
主人公のマクベスは、11世紀のスコットランドに実在した王の名前で、彼が将軍から王となり、そこから悪行を重ねて転落していく姿が描かれています。
感想文のヒント
『マクベス』に限らず、シェイクスピアの戯曲は、そのセリフの重厚感に大きな魅力があります。ぜひ、セリフを声に出して読んでみてほしいです。
その時の体感を感想文に盛り込んでみましょう。
③『破戒』島崎藤村
発行年:1906年/出版社:新潮社/512ページ
読書レベル★★★★
「部落問題」を描いた作品です。「部落問題」とは、江戸時代の日本にあった身分制度において、「士農工商」よりも下に置かれた階級の人たちが、制度廃止以降も差別されていた問題を指します。
物語の舞台は、明治時代の長野県、主人公は学校の教師を務める瀬川丑松という青年です。丑松は部落の出身者でしたが、そのことを周りに隠していました。彼の父が「そのことを人に言ってはいけない」と厳しくしつけてきたのです。
丑松には尊敬する人物がいました。部落の解放運動を牽引する猪子連太郎です。丑松は猪子の著作に触れ、部落出身者が差別されている現状に葛藤することになります。
感想文のヒント
「部落差別」という現実の社会問題を取り上げた作品なので、その背景についても調べてみてください。主人公の悲しみや悔しさに、現実味を持って寄り添うことができるでしょう。
④『世界で一番幸せな男:101歳、アウシュヴィッツ生存者が語る美しい人生の見つけ方』エディー・ジェイク
発行年:2021年/出版社:河出書房新社/208ページ
読書レベル★★★
著者のエディ・ジェイク氏は、1920年ドイツ生まれのユダヤ人です。
この本では、彼が戦時中に経験した「ホロコースト」について書かれています。「ホロコースト」とは、戦時中のドイツで、ナチスドイツが行なったユダヤ人などに対して行なった「絶滅政策」のことです。
ジェイク氏は、アウシュビッツなど複数の強制収容所で過ごした経験があり、そこで行われていた残酷な仕打ちが、細かく描かれています。
読んでいると、悲しくなる話ばかりですが、こういうことが現実にあったのです。目を背けてはいけない話だと思います。
そんな体験を経て、ジェイク氏は「ヒトラーさえも憎まない」とおっしゃっています。そのような境地に辿り着いた軌跡がこの本に書かれているのです。
感想文のヒント
第二次世界大戦やナチスドイツのことを調べてみましょう。
この世の地獄のような状況の中から、ジェイク氏は何に助けられて、生き延びられたのでしょうか。その辺りにも注目して読んでみてください。
⑤『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』森岡毅
発行年:2016年/出版社:KADOKAWA/264ページ
読書レベル★★★
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを成功に導いたマーケターの森岡毅氏が書いたビジネス書です。今でこそ、USJ といえば、国内でトップクラスのアミューズメントですが、オープンの2年目(2002年)以降は、来場者が大幅に減少し、2004年には事実上の経営破綻に陥っていたそうです。
そんな状況を打破するべく、2010年に抜擢されたのがマーケターの著者でした。この本では著者がどのようにして、USJ を V 字回復に導いたかが語られています。
感想文のヒント
著者が本書で述べている「マーケティングの本質」は、マーケターではない、一般の人たちの生活にも役立つ考え方ではないでしょうか。自分の仕事や生活に置き換えて、考えてみてください。
⑥『マッハの恐怖』柳田邦男
発行年:1971年/出版社:新潮社/495ページ
読書レベル★★★★
1966年に日本国内で相次いで起こった航空事故(※)を追ったルポルタージュです。
(※全日空羽田沖墜落事故、カナダ太平洋航空機墜落事故、英国海外航空機空中分解事故)
これらの事故が起こった当時、著者の柳田邦男さんは、NHK の記者でしたが、事故の真相を追うためにノンフィクション作家に転向しました。
マスコミをはじめとする「速報主義」に捉われず、事故の一つひとつの情報を丹念に調べ上げ、これらの航空事故の真の原因を突き止めるにいたったのです。
感想文のヒント
’60~’80年代に日本国内で起きた航空事故について、調べてみてください。
その数の多さにビックリすると思います。
逆に、今の国内では、どのくらいの頻度で航空事故が起きているでしょうか。その数の違いから、何が変わったのかを考えてみましょう。
⑦『宇宙からの帰還』立花隆
発行年:1983年/出版社:中央公論新社/403ページ
読書レベル★★★★
1950~70年代にかけて、アメリカとソ連による激しい宇宙開発競争がありました。本書は、その時代のアメリカの宇宙飛行士に取材し、彼らの宇宙での体験や、その後の足跡を追ったドキュメンタリーです。
実際に宇宙に行って、さまざまな体験をした人たちが語る体験談は、自分の経験と照らし合わせることができないほどのものですが、リアリティーを感じさせます。宇宙での神秘的な体験から、無宗教だった宇宙飛行士が、キリスト教の伝道師になったというエピソードも紹介されています。
感想文のヒント
宇宙飛行士が語る宇宙の印象を聴いて、どんなことを感じたでしょうか。
科学と宗教の関係についても、この本に書かれている内容を参考に、考察してみてください。
⑧『フェルマーの最終定理』サイモン・シン
発行年:2000年/出版社:新潮社/495ページ
読書レベル★★★★
「3以上の自然数 n について、xⁿ+yⁿ=zⁿ となる自然数の組(x, y, z)は存在しない」というのが、「フェルマーの最終定理」です。
17世紀にフランスの数学者、ピエール・ド・フェルマーが提唱して以来、何世紀もの間、証明も反証もされなかった難問ですが、1995年にイギリスの数学者、アンドリュー・ワイルズによって証明されました。
この本は、その証明に至るまでの過程を、3世紀にもわたる数学の歴史とともに綴ったドキュメンタリーです。丁寧な解説で、数学が苦手な人にも読める作品になっています。
感想文のヒント
「数」の不思議さ、そして、その魅力に取りつかれた人々のことを知り、どのように感じたでしょうか。
「数」の概念は人類に何をもたらしたのでしょうね。
⑨『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド
発行年:1997年/出版社:草思社/416ページ(上巻)、432ページ(下巻)
読書レベル★★★★★
著者のジャレド・ダイアモンド氏は鳥類学者で、1970年代にニューギニアに滞在し、鳥類の研究をしていました。現地の狩猟採集民とともに生活をする中で、著者にこんな疑問が投げかけられました。
「あなたがた白人はたくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」
当時の著者は、この疑問に対する答えを持ち合わせていませんでしたが、そこから20数年をかけて、一つの答えを出しました。その研究内容をまとめたのがこの本です。
この疑問に答えるためには、歴史とは関係がなさそうな遺伝学、分子生物学、生物地理学、行動生態学、遺伝学、言語学、文化人類学、技術史、文字史、政治史など、ありとあらゆる分野の知識を統合して考える必要がありました。
感想文のヒント
この本が出版されるまで、一般的には「文化的差異、あるいは遺伝的差異によってユーラシア人が世界を手中に収めてきた」という考え方が一般的でした。この考え方について、あなたが思うことを教えてください。
⑩『哲学と宗教全史』出口治明
発行年:2019年/出版社:ダイヤモンド社/468ページ
読書レベル★★★★★
最後はこの本です。私がこれまでに読んできて「おもしろい」と感じた本の中で、もっとも難易度が高いと思う本ですね。
この本では、人類の3000年にもおよぶ「哲学」と「宗教」の歴史が、ひとまとめに解説されています。時代によって変化していく「哲学」と「宗教」から、その本質を掴んでみてだくさい。
感想文のヒント
「哲学」と「宗教」は、私たち人類に何をもたらしたのでしょうか。
本書で解説されている歴史的な背景も絡めて、自分なりの考察をしてみてください。
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