映画レビュー『ラストマイル』(2024)走り出すと止められない現代
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『アンナチュラル』『MIU404』の
スタッフが再集結!
本作はこれらのドラマと世界観を共有した作品です。
私もはじめて知ったのですが、こういうのを「シェアード・ユニバース作品」というそうです。
とはいえ、物語自体に直接的なつながりはないので、『アンナチュラル』や『MIU404』を観ていない方にも楽しめる独立した物語になっています。
ドラマを観ていた方には、これらの作品のキャストが再登場するのが嬉しい要素ですよね。
物語のメインは「物流センター」
アメリカに本社がある DAILY FAST(デイリーファスト)は、世界最大のショッピングサイトです。
日本支社・西武蔵野ロジスティクスセンターから出荷された荷物が配達先で爆発する事件が起こります。
しかも、それが「ブラックフライデー」という、もっとも売れるセールスの前夜に起こってしまったため、大きな混乱を招くんですよね。
主人公・舟渡エレナ(満島ひかり)は、この支社にセンター長として異動してきたばかりでした。
その後、SNS で「1ダースの爆弾をプレゼントする」という同社を装った偽広告が発見され、予告通り次々と爆破事故が起こるのです。
その対応に追われる主人公とその周りの出来事が描かれていきます。
便利は新たな不便を招く
本作を観ていると、このような言葉が思い浮かびます。
現代はネットワークが発達し、なんでも欲しいものがすぐに手元に届きますよね。
これは客としては嬉しいことなんですが、一度、そこでエラーが起きてしまうと、取り返しのつかないことにもなりかねません。
とにかく、物が運ばれていくスピードが尋常ではなく速いので、爆発物かもしれない荷物を突き止める前に、どんどん進んでしまうんですよね。
ここが本作のハラハラさせられるポイントです。
物語の前半では「犯人は誰か?」というのが大きなテーマになっていくのですが、やがて、そこには会社や社会の問題点が浮き彫りになっていきます。
作中に出てくる「デイリーファスト」は、あきらかに「あの会社」っぽい感じもあり、実際の社会でも起こっているリアリティーが感じられます。
そういった社会派な一面もありつつも、本作はシリアスになり過ぎず、全体的に明るい調子で進んでいきます。
そこには『アンナチュラル』や『MIU404』のドラマファンへのサービスがあったり、主演の満島ひかりの明るい個性が大きく影響しているように思いました。
社会の問題点を提起しつつ、シリアスに訴えるだけでなく、時にはユーモアも込めて伝える絶妙なさじ加減が素晴らしかったです。
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