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自然写真家より・・13冊目のキンダーブック「しぜん」・フレーベル館

キンダーブック「しぜん」10月号発刊

あきのきのみ

フレーベル館、キンダーブック「しぜん」は幼稚園、保育園など4~5歳児向けの月刊写真絵本。
年間12冊の中で、同一作家の本は2冊作らない、同テーマの本の作成は5年以上間を開ける、など社内的な規定がある。
というわけで、13冊目になるということは、少なくとも13年間は「しぜん」作成に携わってきたことになる。

僕の本づくり

ご覧いただいたように、僕の被写体には一貫性がない。「野鳥」とか「昆虫」とか、またまた「植物、魚類」とか、ある意味、その時に興味をひかれたものを、その時期に集中して撮るといった感じだ。
本づくりには、出版社側から「こんなテーマ企画で・・こんな写真を・・こんな並べ方で」といった依頼があって、それに基づき撮影し、本づくりを進める場合もあるが、僕の場合は、依頼型での本づくり経験は、ほとんどなく、例えばこの「しぜん」であれば、27ページ分の構成を自分で企画し、ラフ原稿と企画書を作成し、写真と見せたい内容を添えて、編集者に「こんな企画やりませんか?」と提案する形で本づくりをしている。

本づくりのための撮影

僕は、ほぼ毎日、野山、草原、公園などへ出かけ撮影をしている。
その中で、出会った「面白いシーン」や「貴重なシーン」が撮れたりすると、そのシーンを生かすには、どんな企画で、どんな流れに構成していくのがよいかを考えはじめる。
自然の時間はゆったり流れているので、こちらものんびりと構え、日々の撮影を重ねながら、自分の頭の中にある、企画案のページを埋めるための写真を撮りためる。
今年は、これが撮れなかったから、来年はそこを狙うと、頭の中に置いておけば、翌年野山を散策していると、自然と自分の目が、そのシーンを探すようになる。
不思議なことに、撮りたいシーンを念じていると、思いのほか、自然はそれに応えてくれる。
それには、そのシーンが撮れる季節、時間帯を把握しておくことが前提で、把握するためには、日々自分の撮影フィールドを、丹念に歩き回るしか方法はない。
企画案のページを埋めるために、空を見上げ、木々や草花を眺め、地面に目をやり、水底を覗き込んだりしていると、そこに予期せぬ出会いが生まれ、また新しい企画案が浮かんでくる。

編集者とデザイナーに、あとはほぼお任せ

今回の「あきのきのみ」の表紙校正を初めて見たときに、「あら、きれい、あら、かわいい!」と率直に感じた。
本づくりで、僕の写真を生かすも殺すも、編集者とデザイナーの腕にかかっていて、出版社側の出版意図、営業戦略なども加味されてくる。
曲作りでいえば、編曲者がイントロ、間奏、エンディング、どの楽器をどんな形で参加させるかを、考えるのとよく似ている。
それによって、作詞作曲家がつくった楽曲の良し悪しが決まり、売り上げも変わってくる。
なので、僕の手を離れた写真の構成、レイアウト、デザインなどは、その道のプロに、ほぼお任せすることにしていて、大まかなデザイン構成ができたところで、最終的に皆で意見を出し合い決定していくことになる。
本は、作っているときが一番楽しく、できあがってしまうと、あそこをこうすれば良かったとか、この写真よりあの写真だったかなとか・・
必ず後悔する点が出てきて、そのページを開きたくなくなったりもする。
やっぱり、本づくりの中で一番ワクワクするのは、企画に向けて写真を撮っている瞬間だと僕は思う。

キンダーブック「しぜん」10月号の詳細はこちら

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