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『廬山煙雨』蘇東坡
廬山煙雨浙江潮 未到千般恨不消
到得歸來無別事 廬山烟雨浙江潮
<書き下し>
廬山は煙雨 浙江は潮 未だ到らざれば千般の恨み消せず
到たりえ帰えり来たらば 別事なし 廬山は烟雨 浙江は潮
※(二言メモ)
中国・宋の時代の詩人、蘇東坡の七言絶句です。
蘇東坡(蘇軾)は他には、「春宵一刻値千金」で始まる『春夜』や、三国志の故地を詠んだ『赤壁賦』などで知られています。
廬山(ろざん)は中国江西省にある古くからの景勝地で仏教の聖地でもあります。
さて、悟りとか、ユートピアとか、理想郷とかいうことばがあります。
そうした夢や崇高な目標があるから、どんな苦しいことにも耐え忍んで歯を食いしばって頑張ることもできます。
「刻苦光明 必盛大也(こっくこうみょう かならずせいだいなり)」
しかし、そんな艱難辛苦を経て到達したところはといいますと、全世界全宇宙を見渡せる高峰の頂のような場所ではなく、普段と何ら変わらない見慣れた風景であったといいます。
廬山烟雨浙江潮
これからジメジメ湿気の多い季節へと向かいます。
「到得歸來無別事 廬山烟雨浙江潮」
なんとも清々しい風が、吹き抜けます。
画像:images i STOCK LUSHAN