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これからの企業は“推されるブランド”しか生き残れない。
1. はじめに
かつて企業のブランド価値は広告やマーケティングの力で築かれるものでした。昭和世代の私などの世代は、まさにその流れに乗せられていました。話題のレストランと聞けば行き、この車に乗っているとモテると言われると欲しくなるなど、今思えば本当に可愛いものでした。
しかし、現代の生活者は企業が発信するメッセージを鵜呑みにすることはなく、むしろユーザー同士の口コミやレビューを重視するようになっています。SNSの普及により、誰もが企業やブランドについて自由に語る時代。ここで重要なのが「推されるブランド」の存在です。
企業が長く生き残るためには、単に商品を販売するだけでなく、顧客が自然と応援したくなるブランドになることが不可欠です。「推されるブランド」の条件とその構築方法について、事例を交えながら解説していきます。
2. なぜ“推されるブランド”が重要なのか?
2-1. 口コミの影響力の増大
SNSやレビューサイトの台頭により、消費者の購買行動は大きく変化しました。特にZ世代・ミレニアル世代は、企業の公式発信よりも「リアルな体験談」を重視する傾向があります。企業が自ら語るよりも、実際に愛用している人の声の方が信頼されるのです。
例えば、あるアパレルブランドでは、一般ユーザーの投稿を積極的にシェアすることで認知度を向上させ、結果的に売上が30%増加したという事例があります。
2-2. 広告の限界
デジタル広告のROI(投資対効果)は年々低下しています。広告ブロッカーの普及や、ユーザーの広告離れにより、従来の手法だけでは十分な影響力を持てなくなってきました。一方で、顧客が「このブランドを応援したい」と思うようになれば、自然とポジティブな口コミが広がり、新規顧客獲得にもつながります。
2-3. 競争の激化と差別化の必要性
市場が成熟するにつれ、商品やサービスの機能的な差別化は難しくなっています。そこで、ブランドに対する共感や支持が決定的な要因となるのです。「この企業の価値観に共感できる」「応援したい」という感情が、購買行動を後押しします。
3. “推されるブランド”の条件
3-1. 明確なブランドストーリー
消費者は「何を売っているか」よりも「なぜこのブランドが存在するのか」に興味を持ちます。例えば、パタゴニアは単なるアウトドアブランドではなく、「環境保護」を軸にしたブランドストーリーを展開することで、多くの支持を得ています。
3-2. 一貫した顧客体験(CX)
顧客がブランドを推したくなるには、製品の品質だけでなく、購入からアフターサービスまでの一貫したポジティブな体験が不可欠です。CX(顧客体験)を高めることで、自然と「このブランドは信頼できる」と感じてもらえます。
3-3. コミュニティの形成
ブランドのファンを増やすためには、単なる顧客関係を超えた「コミュニティ」を築くことが重要です。特定の価値観を共有する場を提供し、顧客同士のつながりを強めることで、ブランドのエンゲージメントが向上します。
3-4. 誠実な企業姿勢
企業が社会に対して誠実な行動をとることも、支持されるための重要な要素です。環境への配慮、従業員の待遇改善、公正な取引など、透明性のある経営が求められます。
4. “推されるブランド”を作るためのアクションプラン
4-1. 顧客の声を積極的に取り入れる
SNSや口コミサイトの声に耳を傾け、実際の顧客の意見を製品開発やサービス改善に活かしましょう。消費者が「自分の意見が反映されている」と感じることで、ブランドへの愛着が深まります。
4-2. SNSを活用したエンゲージメント強化
単なるプロモーションではなく、ユーザーとの対話を重視することが重要です。ブランドのストーリーを発信しつつ、ユーザー投稿を積極的に取り上げることで、ファンとの関係を強化できます。
4-3. 体験価値の向上
製品そのものの価値だけでなく、購入プロセスやカスタマーサポートの質を向上させることで、CXを強化しましょう。例えば、Appleは購入後のサポート体制や店舗体験を重視することで、ブランドのファンを増やしています。
4-4. ブランドアンバサダーの活用
企業自身がブランドを宣伝するのではなく、実際の顧客やインフルエンサーに推してもらう仕組みを作ることも有効です。顧客が自然と「このブランドを紹介したい」と思えるような仕掛けを考えましょう。
4-5. 感情に訴えるマーケティング戦略
消費者は論理だけでなく感情で購買を決定します。共感を生むストーリーやビジュアル、広告展開を意識し、「このブランドの価値観に共感できる」と思わせることが重要です。
ただ、最近ではファンマーケティングをされている会社の担当者の方とお話をすると、一部のファンだけがいつも集まってしまい、中々周知に知られることがないと嘆かれていました。このへんもマーケティング担当者の方だけではなく、熱狂を生み出す「推しの熱量」が必要になるのではと考えています。
5. まとめ
これからの時代、企業は単に良い商品やサービスを提供するだけでは生き残れません。顧客が「推したい」と思うブランドになれるかどうかが、競争力を決定づけます。
明確なブランドストーリー、一貫したCX、コミュニティ形成、誠実な企業姿勢。これらを意識しながら、消費者に支持されるブランドを築いていきましょう。
これからの企業の成功は、「どれだけの人がこのブランドを応援したいと思うか」にかかっています。あなたの企業は、推されるブランドになれていますか?