
CXって、結局“好き”をつくることだよね?
最近、CX(カスタマーエクスペリエンス)という言葉が当たり前のように使われるようになりました。ビジネスの現場では「CXを向上させよう」とか「顧客満足を高めよう」といった議論が交わされることが増えています。でも、CXの本質って何でしょう?
結局のところ、CXは「好き」や最近の言葉では「推し」をつくることに尽きるのではないかと私は思います。
“好き”が生まれる瞬間
例えば、あなたが通い続けるカフェやお店を思い浮かべてみてください。そこに行きたくなる理由は、コーヒーの味が美味しいだけではないはずです。店員さんのちょっとした心遣い、空間の雰囲気、何気ない会話、そういった要素が積み重なって「あの店が好き」となるのではないでしょうか。
同じことが、どんな業界でも言えます。ITサービスでも、金融サービスでも、ECサイトでも、単に機能が優れているだけでは“好き”にはなりません。ブランドの世界観や、使いやすさ、共感できるストーリーがあることで、「ここのサービスがいいな」「この会社の考え方が好きだな」と感じるようになるのです。
NPSと“好き”の関係
CXの評価指標のひとつにNPS(ネット・プロモーター・スコア)があります。「この商品やサービスを友人や同僚に勧めたいか?」というシンプルな質問に対する回答をもとに、企業のファン度合いを測る指標です。

NPSの高い企業の特徴を見てみると、単に顧客満足度が高いだけではなく、「ここが好き!」という熱量のあるファンが多いことが共通しています。顧客は機能や価格だけでなく、「このブランドを応援したい」「このサービスの理念に共感する」といった感情で行動しているのです。
“好き”を生み出すには?
では、企業がCXを高め、顧客に“好き”になってもらうためには何が必要でしょうか。
顧客の期待を超える体験を提供する
予想を上回る対応や、細やかな配慮が記憶に残ります。
ブランドのストーリーを伝える
どんな想いでこのサービスを提供しているのか、背景や価値観を発信することで共感が生まれます。
人の温かみを感じられる瞬間をつくる
デジタルが主流の時代だからこそ、リアルな接点や心のこもった対応がより響きます。
顧客の声に耳を傾け、進化し続ける
「ちゃんと聞いてくれている」と感じることで、企業との距離が縮まります。
“好き”を深めるためのCX戦略
では、企業が“好き”を深めるためのCX戦略をどのように展開すればよいのでしょうか。
1. 顧客への洞察の徹底
現代の消費者は、自分に合った体験を求めています。顧客の好みや行動履歴を分析し、一人ひとりにカスタマイズされた体験を提供することが求められています。
特別感の演出は、スタバの「いつも、ありがとうございます」のように些細な一言でも可能です。
また、ECサイトであれば、購入履歴や閲覧履歴をもとに、最適な商品をレコメンドするシステムを導入することで、顧客が「このサイトは私のことを分かってくれている」と感じるようになります。
2. 顧客とのインタラクションを強化する
顧客がブランドと積極的に関わることで、“好き”がより深まります。
店頭での体験は勿論ですが、ソーシャルメディアを活用したり、イベントやキャンペーンを企画したりすることで、顧客との接点を増やすことが重要です。特に、顧客が自発的にブランドについて発信したくなるような仕掛けを作ることが、ファンを生み出すカギになります。
3. 企業文化としてのCX
CXは単なるマーケティングの一環ではなく、企業文化そのものとして根付かせることが必要です。すべての社員が「顧客にどんな体験を提供できるか」を常に考え、行動する企業は、顧客からの信頼を得やすくなります。
そのためには、CXに関する社内教育の実施や、従業員のエンゲージメント向上施策を取り入れることも有効です。
CXの未来 = “好き”のデザイン
CXを考える上で、テクノロジーやデータの活用はもちろん重要です。しかし、最終的に目指すべきは、顧客に「好き」と思ってもらえる関係を築くこと。人がブランドに愛着を持つのは、機能やスペックだけではなく、感情が動いた瞬間にこそ生まれます。
顧客が「また利用したい」「誰かに教えたい」と思うブランドは、CXが優れています。企業は単に商品やサービスを提供するだけでなく、顧客の心を動かす体験をデザインすることが重要なのです。
まとめ
CXとは、顧客の心の中に“好き”を生み出すプロセスです。そのためには、顧客の期待を超えるサービスの提供、ブランドのストーリーの発信、温かみのある接点の創出、そしてパーソナライズされた体験の提供が不可欠です。
あなたの会社やサービスは、お客様にとって“好き”と言える存在になっていますか? CXの本質を改めて見つめ直し、顧客の心に残る“好き”をデザインしていきましょう。