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「うみべのとしょかん」はじめました。 〜世界一ハードルの低い家開き〜
2020年4月2日。
神奈川県茅ヶ崎市にある自宅の土間に、小さなおうち図書館をオープンしました。
名前は「うみべのとしょかん」。
館長は小学1年生になったばかりの娘「こなつ」です。
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きっかけは1冊の絵本との出会い**
はじまりは、館長が幼稚園の年中さんだった頃。小さな頃から大の絵本好きで、市立図書館の常連さん。自分とママの図書カードを使って借りられる最大20冊を選び、返却してはまた20冊…を繰り返していました。寝る前は必ず絵本を読み、朝起きたらすぐに絵本を手に取って…。絵本の世界を共有することが親子の会話の中でも多く、それはとても豊かで楽しい時間でした。
そんなたくさんの絵本の中に、『ティモシーとサラ ちいさなとしょかん』という一冊の絵本がありました。いつもどおり寝る前に読んでみると、それは、自宅の庭に小屋を建てて自分の蔵書を並べて図書館をつくってしまったおじいさんのお話でした。その図書館にはまちの多くの人が出入りし、本を通してコミュニケーションが生まれて。さらには、おじいさんを真似して、まちの人たちがみんな自分の家の前に小さな本棚をつくり始めました。それぞれの家庭の趣味や嗜好性があらわれた本たちを眺めに、まちの多くの人が行き交うようになりました。ときには借りられた本に手紙が挟まっていたりして、あたたかな心の交流も生まれたりして。「なんだかいいね。茅ヶ崎でもみんなが図書館をつくったら面白そうだね」。娘とそんな話をしたことを覚えています。
日本一周の旅でつながった点と点
それから1年後、池田家は、家族4人、キャンピングカーに乗って日本一周の旅に出ました。(旅の様子はマガジン「育休キャラバン」をぜひ!)旅の中で、いろいろなお友達のご自宅に泊めていただいてその方の日常を体験させてもらったことが本当に価値ある体験で、主人と私は「帰ったら家で民泊ができたらいいね。今度は私たちの日常を体験してもらおう」なんて話をしていました。
その話を聞いた娘、「だったら図書館もやろうよ」と言い出したのです。きっと娘は、あの絵本を思い出したのでしょう。家の一部を開き、みんなの居場所にすることは、この家を建てた4年ほど前から、私たち夫婦が思い描いていたこと。「いいね、それ、やろうよ!」。点と点だった想いが線となってつながり、「うみべのとしょかん」プロジェクトは動き出したのです。
言い出しっぺの娘がプロジェクトリーダーに
日本一周から戻り、図書館プロジェクトと民泊プロジェクトについて家族会議を重ねました。池田家のプロジェクトは、子ども大人関係なく、言い出しっぺがリーダーになるため、図書館プロジェクトは娘が担当になりました。
どの部屋でやる?どんなかたちで使ってもらう?いろいろと考えた結果、まずは図書館をオープンして、まちのみんなに居場所として使ってもらうことからはじめ、その後、遠方の方々にも泊まっていただけるような場づくりをしたいね、ということになりました。
もともと「地域のみんなの居場所」を考えて設計していただいたので、土足で入っていただける土間スペースは広め。館長が本棚の絵を描き、DIYが得意なパパがかたちにし、土間スペースに設置。家にあった子どもの本100冊と大人の本100冊を集め、みんなで図書館に置く本を選んでいきました。
館長は幼稚園で使っていた手書きの「図書館カード」がお気に入りだったので、「うみべのとしょかん」でも、借りてくれる人にはひとり1枚の図書館カードをつくることにしました。カードを見れば、これまで借りた本がひと目でわかる仕組み。さらに、本にもカードをつくることに。本ごとのカードには、その本を借りてくれた人の名前が並んでいきます。人から人へ、手から手に渡っていく。借りてくれたみなさんが、そんな図書館の良さを感じてくれるといいな、という願いを込めて。
本に封筒を貼り、カードを入れ、本棚に「あいうえお」順に並べて、「期限は1ヶ月・20冊まで」というルールも決めて…。準備ができたのは、オープンの前日。ギリギリでしたが、ずっと前からカレンダーに印が付いていた2020年4月2日、ついに「うみべのとしょかん」はオープンしたのです。
「借りたら返す」という小さな約束。小さなつながり。
コロナ禍による約2ヶ月間の閉館後、2020年6月1日にようやく再オープン。家の前に小さな看板を出すだけのささやかな始まりでしたが、以前からご近所さんやお友達にお知らせしていたこともあり、ゆっくりではありますが、遊びに来てくれる人も増えてきています。通りかかった人も覗いてくれたり、Facebookページを見て本を借りに来てくださったり、いつも野菜を届けてくれる農家さんも借りてくれたり。
そのたびに館長は、ひとりひとりの図書カードをつくり、本をシュッシュと消毒して、手渡していきます。「7月1日までに返してください」。借りてくれたら、返してくれるときにまた会える。そんな小さな約束から生まれるつながりが、図書館という場をあたためてくれています。
ときには青空バージョンも。本棚ひとつあるだけで、そこに読み聞かせの輪ができちゃう、なんだかミラクル。
さらにはいつの間にか路上遊びが始まり、知ってる子も知らない子も、ごちゃまぜで遊んじゃうというミラクルも。
世界一ハードルの低い家開きかもしれない
あれ?なんだろう、この感じ。
やったことといえば、「うみべのとしょかん」と名前を付けて、家にある本を並べて、看板を出しただけなのに。Facebookページをつくって小さくお知らせしただけなのに。週3日の開館時間中も家族は普通に暮らしていて、誰かが来たら顔を出す、たったそれだけなのに。
ただそれだけで、知らない人も気軽に立ち寄ってくれる。知ってる人も、かしこまらずにふらりと遊びに来てくれる。知らぬ間に、子どもたちの路上遊びがはじまっている。
私たち家族が思い描いていたような、家の一部が「まちのみんなの居場所」になるような、そんな未来がググッと近づいた気がする。ひょっとしたらこれは、世界一ハードルの低い“家開き”なのかもしれない。
イベントなどの特別感もなく、誰でも何かしら接点のある「本」というコンテンツもいいのかもしれない。「借りる」という気軽さも良いのかもしれない。
「うみべのとしょかん」、まだオープンしたばかりですが、たくさんの可能性が眠っているような気がしています。
これから、読み聞かせ会もしてみたいな。
本を寄贈してもらうような仕組みもつくっていきたいな。
放課後の子どもたちの寺子屋みたいな場所にできないかな。
そしていつか、このまちに、小さな図書館がたくさんオープンして、みんなの居場所があちこちにできていくような、『ティモシーとサラ ちいさなとしょかん』で描かれていたようなまちを、みんなでつくっていくことができないかな。
館長ともども、あれこれ妄想してワクワクしている池田家です。
まちのみなさんに支えられ、今週もひっそりとオープン予定。
みなさんのご来館を、心からお待ちしています。
「うみべのとしょかん」
◎所在地
神奈川県茅ヶ崎市中海岸3丁目
◎開館日時
月曜日 15時〜18時
水曜日 15時〜18時
土曜日 13時〜18時
※その他不定期で火曜や木曜、土曜午前中もオープン予定。詳しくはFacebookページにてご確認ください。
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