子ども・子育て支援金制度はこうして始まった。#53 賃上げの成否ですとか、あるいはその負担軽減の効果といったものを当てにしているというものではありません
(子ども・子育て支援金制度創設に係る国会審議の論点を整理しています。)
支援金について政府は、「歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で構築する」から「全体として実質的な負担は生じない」と言う。
なぜ「歳出改革」と「賃上げ」の二要素なのか。
なぜ(シンプルに)「歳出改革によって」と言わないのか。
「賃上げ」は、「実質的な負担が生じない」こととどのように関係するのか。
竹詰 例えば、その被用者の中では一か月に、だから年収が六百万だったら千円、八百万だったら千三百五十円、年収一千万でしたら千六百円というふうに負担額が表れてくる。今度、これを見ますと、この金額を見て、実質的負担はないということが本当にそうなんですかというふうに私は思います。この実質的な負担は生じないということについて、改めて御説明願いたいと思います。
熊木 お答え申し上げます。
実質的な負担がないという点でございます。
今回、子ども・子育て予算の抜本的な拡充を実現するために支援金制度を構築をいたします。ただ、それは徹底した歳出改革を基本に保険料負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で行うんだということでございます。この旨、繰り返し申し上げてきたところでございます。
具体的には、先生がおっしゃられましたように、加入者一人当たり、月額平均ですと支援金は四百五十円ということでございます。これ、令和十年度であります。ただ、それまでの間に歳出改革等を行いまして、四百五十円分の平均しますと社会保険料の軽減を図るということで、支援金の導入は差引きで負担とはならない、すなわち実質的な負担がならないと、実質的な負担にならないということでございます。
実際に、令和五年度、六年度におきましては、このような社会保険料軽減が達成されるペース、すなわち支援金としましては総額一兆円でございますが、令和五年度、六年度で三千三百億円のペースで歳出改革を行っております。これを今後とも続け、令和十年度まで積み上げていくということでございます。
なお、支援金につきましては所得に応じるということは当初より申し上げてきたかと思います。所得に応じた支援金を構築する、そして歳出改革をいたしますと、医療保険料、介護保険料軽減というものが基本的にこれまた所得に応じてございますので、今申し上げたような社会保険の軽減効果というものは、医療保険料、介護保険料を多く払っている方、所得の高い方ほど金額としては軽減効果が大きくなります。そういったことでございます。
支援金の導入によりまして国民の皆様に新しい拠出をいただくことは事実ではありますけれども、それだけに、今回、国民負担軽減を図るということにつきましては、これまでとは全く異なるアプローチを採用してございます。すなわち、新たに、これまでは公費の節減効果というものに主に着目をした歳出改革を行ってまいりましたが、新たに社会保険料に着目をいたしまして歳出改革をする、そしてそれは令和十年度まで続けるんだということをしっかり決定してお約束をし、社会保障負担率という具体的なメルクマールを設けまして、これを確認できるような仕組みといたしました。
さらに、負担軽減の範囲内、社会保険負担軽減の範囲内で支援金を構築するんだという旨を法律の附則に書き込んでございます。こうしたことによって確実なものとするということ、これ先ほど申し上げましたが、若い人たちが将来に展望を持てるように責任を持った安定財源を確保しつつ、他方で支援金の構築は負担軽減とセットで行うんだということ、そしてその範囲内で行うということ、こうしたことについて引き続き説明してまいりたいと思います。
竹詰 ちょっと今の御答弁、もう一度議事録を見て私も再勉強したいと思うんですけれども、例えば、先ほど申しました年収一千万の人が千六百円の負担額というのがある、実際には徴収されるわけですけれども、本来だったら、歳出改革をしなければ千六百円分は社会保険料として払っていた、でも歳出改革をすることによってその分を払わなくて済んだので、千六百円もらったって実質的な負担はないでしょうと、今その答弁を聞いて、そういうお答えだったのかなと思います。もうちょっと議事録をちゃんと読んで、今の答弁を読んで、もう一回改めたいと思うんですが。
ちょっと今、御答弁の中に賃上げということはなかったんですけれども、私、これまでの総理の御説明の中にも、賃上げをしていくんだと、その賃上げをすることによって実質的な負担が生じないんだというような御説明もあったと私は記憶しているんですけれども、この賃上げを何%というような目標なり、あるいは仮置きの数字でもいいんですけれども、どういった数字を当てられているのか、あるいはその賃上げの状況によってこの負担額というのが変わっていくのか、実質的な負担はないとおっしゃっているわけですから、変わっているのか、ちょっとその辺を御説明ください。
熊木 これも私どもの言葉足らずの面があったのかもしれませんが、実は一貫した言い方をしているつもりでございました。
支援金制度につきましては、徹底した歳出改革によって保険料負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内とすることを基本といたします。それによって実質的な負担が生じないということでございます。他方で、賃上げを行いますと、社会保障負担率は当然に軽減効果を生じます。したがって、賃上げを行えば、加えて確実に社会保障負担の軽減効果が生じる、あるいは負担率が、減少効果があるということで、これもしっかりと進めてまいるということでございます。
今後の賃上げの成否ですとか、そういったものを、あるいはその負担軽減の効果といったものをここに当てにしているというものではありませんで、基本的に歳出改革によって、先ほど申し上げたように四百五十円なら四百五十円、一兆円なら一兆円分の改革をしっかりとやっていくんだということでございます。目標とか仮置きのものとしての賃上げというものは、したがって、ございません。
以上です。
竹詰 ちょっとこれも議事録をもう一度読んで、改めて質問したい。
ただ、今、一つの中で、そうすると、賃上げはなくても実質的な負担はないという、ちょっとそのことだけもう一度お答えください。
熊木 賃上げがなくともこの社会保険負担軽減の範囲内で行うべくしっかりと取組をしていく、これが私どもの基本的な姿勢でございます。
なお、賃上げにおきましては、令和五年度と六年度において、五年度でいうと三・一%ですとか、六年度というと二・七%といった形で、雇用者報酬の見込みというものは政府経済見通しに基づきまして当然持ってはおります。もしそれを勘案するならば約六千億円ほどの社会保障の負担軽減効果があると考えておりますが、先ほど一兆円に対して既に三千三百億円の負担軽減を行ったというふうに申し上げたときに、この六千億円はカウントをしておりませんです。すなわち、三千三百億円というふうに申し上げたのは歳出改革のもののみの効果として申し上げてございまして、今後とも基本的にはそういった説明をしていくというふうに考えてございます。
竹詰 賃上げというのが私の間違いだったら私も訂正しますが、私は、これまでの総理の説明等でも、やっぱり賃上げがあるからその分は負担軽減がない、その分とおっしゃったかどうか分かりませんが、私はそういう説明がされてきたと思っているのでその質問をしたわけで、ちょっともう一度今の御答弁も確認しながら、改めてまいりたいと思います。
参考資料等
子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案