グローバル企業とヒューマノクラシー
書籍『ヒューマノクラシー』の章立てに沿って、官僚主義的なエピソードや、本の記載内容の背景などを紹介しています。
第11章 オープンであること
クローズドマインドの弊害
多くの企業は常に顧客やステークホルダーとの関わりを持ち、オープンイノベーションを進めようとしていますが、大きな変化は生み出せていません。その理由として、官僚主義が変化の芽を摘んでしまうことが指摘されています。さらに、それに至るメカニズムとして、「型にはまらない」考え方を否認したり、トップダウンの構造や秘密主義に問題があるとしています。
オープンマインド
クローズドマインドの弊害を語った上で、本書ではオープンマインドの有効性を説き、その好例としてアマゾンを紹介しています。
つまり、アマゾンは顧客の感情を読むのが得意な会社として、この後の文章で、その戦略が好意的に紹介されています。
しかし、ここでちょっと待ったを掛けねばなりません。アマゾンのレコメンド機能はアルゴリズムによって、人間の心をその支配下に置こうとしているのではないでしょうか?心や感情を持て遊ぶ企業は、確かに顧客の「心を読む」のが得意なのでしょう。しかし、これはヒューマノクラシーではなく、先鋭的な機械主義ではないでしょうか?しかも、アマゾンの進出によって、地方を中心に本屋の数が減っています。おまけに、配送によってCO2を大量にまき散らし、さらに、現地の国に税金を納めず、利益は自国に吸い上げる、アマゾンはグローバリズムに則った典型的な植民地経営の企業ではないでしょうか?
オープンでないところにも「人の幸せ」があるのではないか
本来のヒューマノクラシーは、もっと目立たないところに静かに存在しているのかもしれません。例えば、家内制手工業から発祥したブランドの一部には、昔ながらの「人間中心的」な働き方が残っていることがあります。それらのブランドの多くは、基本的には株式を公開せず、地域に根差すという、クローズドな戦略を取ることが多いようです。
例えば、イタリアの「ブルネロ・クチネリ」もその一つです。創始者のブルネロは、産業もなく荒廃した村の復興をかけ、その尊厳を取り戻すために、古城を買い取り、そこをブランドの本社としました。経済と生活の質から村の価値を高めるために地域に根差しました。そして、その倫理に基づいた経営が多くの共感を得て、ブランドも発展していきました。ドイツのマイセンなども、自由な時に出勤し、自由な時間に働いて、自由な時間に帰れると言います。そして、定年を迎えるまで安心して働けるため、親子3代で勤めている場合も珍しくないといいます。
オープン戦略によって拡大し続けるグローバル企業と、地域に根差し歳を取っても安心して働ける企業と、どちらがより「人間中心主義」的であるかは、言うまでもありません。