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トレーニングの段階と順序
中長距離走のトレーニングには段階というものがあります。適当に走っていてもある程度までは速くなりますが、人間の身体には成長のメカニズムというものがあるため、それに従ったほうがトレーニングの効果は上がります。
ここでは私が月間100~150kmで5000mを目指す場合の例を紹介します。考え方自体は月間300kmでも500kmでも変わりません。
トレーニングは以下の4段階で仕上げていきます。
1.基礎構築期
2.強化期
3.移行期
4.試合期
原則としては1→2→3→4の順番で進めていきます。途中を飛ばしてしまうとスピードとスタミナのバランスが噛み合わず、レースがうまく走れません。また、次の段階での効果が十分に得られなくなります。走力を高めるには順番に積み上げていくことが大切です。
一方で、各段階にどの程度の期間を設けるかはケースバイケースであり、試合までの日数や試合で走る距離、目指すレベルなどによっても変化します。ここでは私の事例を中心にお伝えします。
1.基礎構築期
とにかくJogを継続します。一番の目的は脚を休ませないことです。まったく走らない日が増えると筋力や体力が回復しすぎてしまい、有酸素能力が向上しません。走り続けることで基礎的な体力と筋力が作られます。
走る距離やペースは問いませんが、よほどのことがない限りは休まず、どんなに短くても最低2kmは走るようにします。そうでないと月間100kmの練習量では基礎が作れません。これはどの段階でも同様です。
また、休まないことが最優先ではあるものの、練習が「ゆっくり短く」では効果が薄いので、起伏を走ったり、Eペース付近までペースを上げたりしたほうが効果は高くなります。
もし休む場合は2日連続にならないようにし、1日休んだら次の日は必ず走るようにします。これはかなり重要です。
2.強化期
Jogが習慣化できたらEペース前後での30~40分走と、200~400mを3~5本などのスプリント系メニューを週1~2回ずつ取り入れるようにします。6~8kmをテンポ良く走れる持久力と、しっかりスピードを上げて反復できるスプリント力とVO2MAXを強化していきます。これがレースで求められるスピードとスタミナのベースになります。
3.移行期
強化期で磨いたスピードとスタミナをレース向けにシフトさせます。余裕を持ってこなす1000m×3や200~400m×10で身体に5000mのリズムを覚え込ませ、5~8kmの快調走(Mペース~Tペース付近)で持久力のベースを底上げします。
言わばレース距離への最適化を進める段階なので、この期間をどこまで長く取れるかでレースの結果が変わりやすいように感じます。
4.試合期
レースに近い種類の刺激を入れていきます。ターゲット種目が5000mなら2000m×1~2本やレースペースの3000mなどです。これによって1~3で高めた能力を集約し、5000mの全力走一本のパフォーマンスを高めます。
この段階になるとピークは長続きしないので、あまり長く日数は取らずに1~3週間の短期集中で仕上げます。最終的にはレースでパフォーマンスを発揮することが目的であるため、練習をこなすことよりも、休養と刺激を織り交ぜながらいかに走力を引き出すかが大事です。
補足
ここまでの内容は基本的なことではありますが、問題は2~4をどのタイミングで切り替えるかです(強化期は無限に続けられる)。
個人的な判断基準としては、各段階でのトレーニングが「効かなくなってきたな」と感じたら次のステップに進むようにしています。それがどのタイミングで訪れるかは個人によって異なるので判断力が試されます。
また、1→2→3→4と段階を踏むべきだと言いましたが、そうしていると試合までの日数が足りなくてに間に合わないという場合は、無理に「4.試合期」まで進む必要はありません。「3.移行期」まで到達すればレースで最低限の走りはできるので、欲張らずに段階を踏みましょう。最初にも述べたように、段階を飛ばしても効果は薄くなるので、それならば「4.試合期」までは到達できなくても一段ずつ着実に積み上げていくのが正解です。
ただし、今よりも一つ上の段階に移行できれば試合でのパフォーマンスは上がるので、日数がない時でもレース10日前あたりを目安に一段上げられる計画は立てておきましょう。
まとめ
全体の流れとしては、
・ゆっくり長く
・速く短く
という2つ負荷をだんだん狭めていってレース本番に近付けていくイメージです。私は練習量が少ないので1~4の段階はそれぞれ1~2週間程度で済ますことが多いですが、走行距離が増えるほど各段階で必要な期間は長くなります。特に「3.移行期」は1~2でしっかり準備ができている場合ほど期間を長く取って走力を引き上げられるため、色々工夫してみてください。
ちなみに、5000mはマラソンと比べたら練習量が少なくて済み、レースも20~30分のEペース走と近い感覚で走れるので、あれこれやらなくても最低限の練習だけでもそこそこ結果が出せるのが特徴です。このため、忙しくて練習時間が確保できない市民ランナーでも比較的対応しやすいように思います。