マラソン界に厚底レーシングシューズが登場したのは2016年。2017年に一般販売がされてからは履くだけで記録が伸びる「魔法の靴」とも言えるような成果を上げてきました。長く競技を続けてきた人ほど厚底効果には衝撃を受けていることでしょう。 一方で、厚底シューズを使っているとだんだん記録が頭打ちになってくるランナーがいます。他でもなく私もそうでした。トレーニングは以前と変わらずに続けていて、それどころか厚底シューズを使いこなすのに必要と言われている股関節のトレーニングも取り入れた
私はたまに知り合いのランナーから「試合数多いですよね」と言われる時があります。私は故障の影響もあって練習量が多くないため、調子の波も小さく、レースとポイント練習の負荷があまり変わらないという面があります。このため試合を終えても調子があまり落ちないので連戦がしやすく、練習の一環として参加することも多々あります。 もっと走行距離を増やせればパフォーマンスの上限を上げられると思いますが、現状ではすぐに故障してしまうので、今のように試合の頻度を一時的に増やすことで身体をレースに最適
長距離走のトレーニングの強度を決めるにあたり、多くの人は「タイム」を目安にしていると思います。私も昔はそうでした。ただ、経験を重ねるにつれて「タイムに表れない要素」をより重視するようになったように感じます。 トレーニングには「客観的強度」と「主観的強度」があると思います。客観的強度とはタイムや距離といった第三者から見ても普遍のもので、主観的強度とは身体が感じる強度のことです。ちまたのトレーニング理論は分かりやすさもあって客観的強度で説明されがちですが、実際には主観的強度をメ
ここ半月で富士山に登り、富士登山駅伝にも出場してきました。 普段こんなに強度の高い練習はしないので、どちらも翌日以降は激しい筋肉痛に見舞われることになりました。 そこで分かったのは、強すぎる筋肉痛は練習を妨げるためトレーニング効果として見た時には必ずしもプラスとは限らないということです。むしろ回復に時間がかかりすぎてマイナスにすらなり得ます。 筋肉痛が強すぎる時のデメリットは心肺機能に刺激が入れられなくなることです。心肺への負荷はすぐに回復するので、できれば2日以上は休ま
私は今年で40歳になりましたが、昨年は月間走行距離120~140km程度で5000mの走力を17分台に戻すことに成功しました。そのための主な練習が「20分Jog」であることは何度も紹介している通りです。 前回は月間100kmでどうすればパフォーマンスを上げられるかを解説しましたが、その中で重要な位置を占めている「200m×3本」と「20分Jog」のやり方について改めて説明します。 ※以下はTwitterで質問に答えたものです 参考記事 200m×3本について 他の練習
私の月間走行距離は現在120~150kmほどです。その多くの練習が20分程度のJogなので、これで40歳で5000mを17分台で走れるというのは自分としては画期的なことだと思っています。 ▽関連記事 何しろ高校時代は月間450~500kmでも15分41秒4が精一杯だったのです。練習のやり方は当時もかなり研究していたので、闇雲に距離を踏んだものではありません。それだけに今のやり方は昔とは対照的です。 LSD理論の提唱者である佐々木功さんは、選手たちに「2時間走ってこい」な
私は小学生の時に長距離を始めました。最初は周りで誰も長距離をやっていなかったので小学校で一番速くなりましたが、それからは次々に現れる新規参入者からどう逃げ切るかが選手としてのポジションを維持するためのテーマになりました。 このため、タイムの伸びが鈍化するのが嫌で、特にそれまで陸上をやっていなかった人がちょっと練習して急に長距離が速くなることに脅威を感じ、自分もそうなれないのかと結構長いこと真剣に考えていました。 中学の時には運良く一つ下の学年に2人の天才がいて、その成長過
私は長距離走のトレーニングとは以下の2つの要素が基本だと考えています。 1)レースよりゆっくりのペースで長く 2)レースより速いペースで短く 長距離走とは最終的にはレースで「決められた距離を速く走る」のが目的となるため、対極に位置するこの2つを出発点に、それらをいつ、どのように狭めていくかが本質と言えます。同じ刺激を続けていると効果は落ちていくので、2つ要素を狭めたり広げたりしながら効率化を図ることになります。 周りを見ていると陸上未経験者は広げっぱなし(速く走らない)
アスリートは誰しも自分の才能について考えたことがあると思います。ただ、才能と言っても色々あるため、自分にどんな才能があるかを言葉で説明するのは難しいかもしれません。 私の場合は才能と言えばシンプルに「到達しやすいレベル」がその一つの基準だと考えています。私だとそれは「3000m10分10秒、5000m17分30秒」くらいだと感じています。 私は中学1年の冬に3km10分16秒、5km17分45秒で走りましたが、そこまではタイムトライアルやインターバルなどを適当にこなしてい
トレーニングとは筋肉が傷ついてから修復される際に、元の能力よりも向上しようとする「超回復」が起きることで効果が発揮されます。このため、トレーニングで筋肉痛になるのは負荷が適切である指標として考えている人も多いのではないかと思います。実際、私もそうでした。 しかし、今は筋肉痛を起こさずにトレーニングを継続するほうが良いのではないかと考えるようになりました(長距離走に限った話になるかもしれません)。それは、筋肉痛になることで走りや筋力のバランスが崩れ、筋肉痛が収まった後も影響が
長距離をやっていると「練習してない割に意外と走れた」という試合が時々あると思います。これを私は長距離走のトレーニングの本質を示唆しているように感じています。 つまり、裏を返せば普段の状況は「練習している割に試合では速くない」とも言えるからです。 では、普段の練習では何を強化しているのかと言えば、『パフォーマンスの幅』を広げているのだと思います。練習してない割に走れたというのは自分の持っている能力とレース展開などの状況がうまく噛み合った結果であって、これがハマらなければタイ
長距離走のパフォーマンスを決める要素を簡単に説明するならば 「スピード×スタミナ」 というのが分かりやすい図式かと思います。比率は人によって異なるものの、このどちらか、あるいは両方を高めることを目的にトレーニングを考えることでしょう。 ただ、これだけではトレーニングを検討する上では大雑把すぎます。「より速く」「より長く」走る能力が大事なことは間違いありませんが、それらを伸ばすためにはもう少し要素を細分化して考える必要があります。 そこで、私がトレーニングを組み立てる上
ランナーは食事をどこまで気を使うべきなのでしょうか。私は週2くらいの頻度でラーメンを食べています。そう言うとどれほど適当な食生活をしているのかと思われるかもしれませんが、こう見えて気を付けている部分もあります。その最たるものは鉄分です。 鉄分が不足するとヘモグロビン値が低下して貧血になります。長距離ランナーにとって貧血は大敵です。酸素の運搬能力が低下するので、疲れやすく、長い距離が全然走れなくなります。ある時から突然調子が落ちて走れなくなった……という人は貧血を疑うと7~8
ずっと長距離ランナーとして走り続けていると実感することは、10代、20代、30代と年代が進むごとに回復力が落ち、練習が積めなくなることです。ただし、練習が積めないこととパフォーマンスの上限はまた別の話で、レベルにもよりますが、やり方次第では30代でも記録の向上は十分に狙えるように感じます。 難しいのは年代ごとに練習のやり方が大きく変わることです。若い頃は回復力が有り余っているので週に3回程度はポイント練を入れられますし、私の場合はJogばかりしていたら逆に走力が落ちてしまう
「超回復の原理」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 スポーツをやっている人なら常識だと思いますが、トレーニングというのは筋繊維を壊し、筋肉はそこから修復されると以前よりも強化されるというものです。 ほとんどのトレーニングはこの原理に従って実施されているものと思われます。 ところが、長距離に関しては経験の浅いランナーや陸上経験者ほど勘違いしがちなことがあります。それは、高強度の練習をできるだけ多くやったほうがより強くなれる、という考え方です。 私も4、5年前まではとに
先日の北海道マラソンではどう考えてもサブスリーなんて余裕だろうと思える知り合いのランナーが何人も討ち死にしていました。原因は人によってさまざまですが、彼らに共通するのはJogのペースが比較的速くて練習強度が全体的に高めだったことです。このやり方ではマラソンに対応できないタイプのランナーが一定数いるのだろうと改めて感じたので考察します。 練習で強くてもマラソンで結果を出せない場合、恐らくパフォーマンスを発揮できる距離が5kmからハーフくらいに最適化されているのだと思います。普