2019.3.XX
最初は新鮮に思えた生活も、続けていると次第に色褪せマンネリに陥る。見上げた空もうつむいた地面も灰色に見えて、何に対してもトキメキを感じない。仕事やら酒やら女やら、ここ数ヶ月のゴタゴタを引きずったまま整理のつかない頭で街を彷徨う。朝の湿った空気にどこからか漂う焼きたてのパンの香りが混ざり、なおいっそうやりきれない気持ちになる。
ふと何かに呼ばれたような気がして目を上げると、咲き始めた桜花が私を見おろしている。まだ5分咲きながら、見事な桃色で色づく彼女らを見上げていると、何かが吹っ切れた気がして、未来にかすかな希望を感じることができた。
2019年、春。
あの日から早起きを心がけ、今では午前3時前後に目覚めるようになった。
午前3時というのは1日の中で最も闇が濃い時間帯のように思う。その濃闇の中で、私は昼間の光の中で感じる雑念や、やらなければならない雑務から解放された時を過ごすことができる。
ぶらっと散歩に出ても良いし、コーヒーを淹れてゆっくり飲んでも良いし、テレビショッピングを眺めていても良い。
とにかく夜が明けるまで、私は自分の周りの全事項をオフにし、頭を使わず、ボケ〜っとした時間をじっくり堪能するようにしている。
この生活習慣に驚く周囲の人たちには、こんなことはとても伝わらないと思い、「もう、おじいちゃんだからさ、朝が早いんだよね」と笑いながら話している。が、私の早起きは午前3時の濃闇を味わう為にある。