宣伝の難しさと、ヒットを飛ばすということ
小池龍之介、住職やめてインドに旅立ってたのか……
全然知らなかった。
たまたま今日、取次の日販の窓口で東京書籍から今度出る小池龍之介の新刊が目の前に置いてあって、その帯を読んで知った。
今日、日販に行かなかったら、たぶんしばらく気づかなかった。
小池龍之介ほどヒット作の多い著書でも、メディアにかなり取り上げられなければ、なかなか気づかれないということなのかも。
最近、小社からも、日本人のかなりの人が知っていると思われる人の本を出しましたが、先日、別の著書から、出ているのを全然知らなかったと言われて「あー、そうですか…なかなか知らしめるのは難しいんです」という苦しい話をしたことを思い出しました。
大手版元みたいにテレビとタイアップしたり、芸能人に紹介してもらったり、新聞広告でも小社みたいなサンヤツではなく、デカデカと大きく広告打ったり、都内の電車の交通広告打ったり、それぐらい金かければ、本が出たことを多くの人達に知ってもらえそうですが……当然小社には、そんな予算はないので無理です。
でも、そのメジャーな人の本は、取次も、書店も、小社の通常の新刊に比べたら、2倍から3倍ぐらいの注文を出してくれたので、日本全国のかなりの数の書店で平積みになったはずですが、それだけでは、普段書店に行かない人が増え続けるこの日本の状況では、なかなか知らしめられないという現実があります。かなり通常とは違う、大きな花火を上げないことには、なかなか難しい。
小池龍之介でも全然気づかなかったのが、まさにそれを象徴してる気がします(たまたま僕が気づかなかっただけ?)。
今現在のメディアが、リアルタイムでネタにしたいような話題の人の本でないと、なかなか世間一般には知らせるのは難しい。
やはり、小社のような小さな出版社にできることは、大手版元みたいに、パッと宣伝して単行本をドバッと売り、その後すぐに文庫化したと思うとロングセラーにならなければ半年か1年ぐらいで絶版にして、断裁してしまうようなことをせず、できるだけ長く、売り続け、世間の流行り廃りと関係ないところで自分だけの本を探す少数の読者に、一人でも多く売ることが役割なのではないかなと、あらためて思います。
それが嫌ならば、編集者は大手やヒットを連発すら中堅版元に転職すればいいし、著書はなんとか、それらのヒットメーカーの出版社から本を出すために売り込むしか基本的にはないと思います。
まあ時々、様々な幸運と出会いが重なって、小さな出版社からベストセラーが出ることもありますが、それは本当に幸運だったと思って、著書も出版社も、あまり自分の力で売れたと過信するとこがないようにとも思います。
かつて何社も、ベストセラーが出たあと、勘違いして、著書と印税で揉めたり、身の丈に合わない事業拡大をしてあっという間に倒産してしまった出版社を見てきたので、僕はそう思います。