とびきりいい靴をはくの
いい靴をはいてると
その靴がいい所へ連れて行ってくれる
花より男子で藤堂静が
つくしに伝えた言葉で
社会人になってからのわたしが
大切にしている言葉である
我が家には名がついた物、
すなわちブランド物がない
母も父も興味がないのだ
セール品に目を輝かせ
いかにお得に買えたかに喜びを感じ
よくわからないメーカーの服を大切に着ている
そんな感じのふたりなので
小学校でメゾピアノやポンポネットが流行った時
子どもながらに葛藤をしたのを覚えている
「普通」になりたかった
わたしとしては
好きかどうかは別として
周りの同級生が着ている
メゾピアノやポンポネットの服が着たかった
流れに乗り遅れたくなかった
ただ親に対して「欲しい」とは言えなかった
何しろトップス一着のお値段が
親の全身コーディネートの何倍もの値段がする
口が裂けても「欲しい」とは言えない
ただ一方で
両親がケチだったかと言われたら、そうではない
わたしの教育費や治療費には
すっとお金を用意してくれた
どうしても今の環境から逃げたい
公立に進みたくないから塾に行きたい
私立の中学校に行かせてほしい
私立の大学で行きたいところが出来た
保険も入っていない状況で
癌が見つかった時も
一切悩まずお金を出してくれた
お金を使う場所が違っただけだと思う
と大人になった今は思う
若かったわたしは
抑圧されているなと思いつつ
限られたお小遣いでは
ブランドものの洋服やよい靴なんぞ
買えるわけがないので
雑誌を買わないように
ネットで調べないようにして
情報を入れないことで逃避していた
存在を認知しなければ
購入の選択肢に出てこないので便利である
そうやってコーチとかグッチとか
名の知れたブランドしか知らぬまま
そして知らぬが故
ブランディングされたものに
価値を見出さぬまま大学生になった
時代的にも自ら情報を取りに行かなくても
twitter、InstagramなどのSNSで
受動的に流行が認知できるようになった
バイトを始めて少しお金が入ったので
すこし服飾に興味を持ち始めた
例えばSNSで見つけた
流行りの形のサンダル、とても好き
Reebockのが一番かわいいけども
1万円を超えるサンダルなんて、もったいない
(なにに対するもったいなさか分からないが
両親の教育の賜物だと思う笑)
3千円でそれっぽい擬似サンダルがあるから
これにしようと妥協をして買っていた
もちろん名前を冠さないサンダルも
機能面では十分役割を発揮するので重宝する
ただ心のどこかで
Reebockを見てしまってから
妥協してという
ワンステップを挟んで購入したがあり
とびきりいい靴とは思えなかった
社会人になり、何度目かの夏が来た
金銭的にも貯金にまわせるゆとりができたころ
Reebockの素敵なサンダルにふたたび出会った
その時、ふと藤堂静の言葉を思い出し
ぽんと背中を押された気がしたのだ
履いてみると心地がいい
おでかけのたびに
友人からお褒めの言葉をいただく
それ以来、靴だけは
一目惚れしたものに
値札は極力見ずに買うようになった
そうやって買った靴たちは
だいたい誰かの目には留まり
「すてきね。」と一言をいただく
そうすると自信がつくのだ
そして、ちょっとだけ勇気がいる
初めての場所も行ってみようと思える
その靴がいい所へ連れて行ってくれる
◻︎
東京から離れ 本の世界に旅行に行きたい =✈︎