サマーフィルム
僕のスマホには約3万枚、年数にすると10年分のデータが保存されている。最古のものは高校2年生の体育祭の写真だ。
昔から頻繁に写真を撮る。何人かで歩いている時であっても、「あ、なんかいい感じ」と思ったら一人足を止めてスマホのカメラを起動させ、カシャカシャ撮影する。気付けばみんなははるか先へ、なんてことも多々ある。
たまに僕が止まったことに気付いてみんなが足を止めてくれる。「はよせえ」とか「だるいわ」とか言われることもあるけど、仮にその一枚をカメラに収められなかったらずっと心に悔が残る。
だから誰に何を言われようと、目に映ったものに心が揺れ動いたら必ず足を止めるようにしているのだ。
僕は、思い出は目に見える形で残した方がいいと考えている。楽しかったことも、そうでなかったことも、写真で、動画で、データとして保存した方が後々楽しめるから。
ここ数年特にこだわっているのが、7月から8月末までの2ヶ月間の生活をインスタントカメラで撮影することだ。夏が大好きなので、特別感を出すために写ルンですを使っている。
夏の終わり、巻き上げカウンターが0になったカメラ。
店頭で現像される一夏の思い出。
一枚一枚時間をかけて見返し、また来年。
いつか病院のベッドで日々を送る歳になったら、サマーフィルムに思いを馳せたい。