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「行政指導」と「努力義務」って何?

そう言えば、少し前ですがNHKーBSで東京オリンピック関連の番組で、誤った字幕が出て総務省がNHKに対して注意の「行政指導」を行ったというニュースが流れていましたね。

「行政指導」という荘厳な語感からはさぞかし厳しい処置だと感じるかもしれません。
今日はこの「行政指導」、そして「努力義務」という言葉について深堀りしてみたいと思います。

まず行政指導ですが、これは平成五年法律第八十八号の行政手続法という法律に以下の記載があります。

施行日:令和四年五月二十五日施行 eーGOV 法令検索より

文字が小さいので拡大するとこのような記載になります

行政指導とは行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の藻に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって、処分に該当しないものをいう

行政手続法2条6項

難しいですねぇ~

ポイントを簡単に纏めてみたいと思います。

①法的拘束力こうそくりょくはない

この指導は行政機関から特定の者に対してなされる助言や要請です。
「お願いね!」っていう感じでしょうか。

だから単なる要請なので相手方は

「従う義務はない」

はないので行政機関が義務を課したり、その権利を制限するものではありません。

②無制限に行えるのか?

上述の通り、法的根拠が無いのでドンドンと行政庁が発行してしまいそうです。そこでの制限としてはその行政機関の任務または所掌しょしょう、つまり担当の範囲内で行うものとなっています。

③任意の協力

下部の記載の通り一般原則として行政手続き法の32条には上述の任務又は所掌事務の範囲を逸脱しては行けない事とともに、

相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであること

を留意しなければならない旨が明文化されています。

さらに第32条2項では以下のようなことが書かれています。

行政指導にたずさわる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはならない!

従って、行政処分では申請を拒否/許認可したり、義務を課したり、制限をするものでもありません。つまり

言うことを聞かなくても怒られません

④行政指導で義務を課したらどうなるの?

例えば、マンション等の宅地開発がどんどん進むと学校の不足と言った問題が発生するため、一定の規模のマンションや住宅を建設する事業主に教育施設設備費用の負担金(教育施設負担金)をお願い行政指導をおこなったそうです。

それを負担しなかった事業主に対して、行政指導に従わなかったので水の供給を行う水道契約の締結を拒否する制裁措置を取りましたが、裁判の判決で

本来任意に寄付金の納付を求める行政指導の限度を超える

ということで

違法

という判決になってしまいました。

⑤行政指導は継続してはならない

最後に法的拘束力もないし、任意の協力なので

「行政指導に従う意思がない」と表明

した場合には、以下にあるように行政手続きを継続してはならない旨の規定がなされています。

行政手続法33条

このように見てくると冒頭の総務省がNHKがBSで東京オリンピック関連の番組で、誤った字幕が出したことによる注意の行政指導もこんな風に読めそうです。

「NHKさん、従わなかったからって別に何をするっていう訳ではないけど、オリンピック関連の字幕だしたこと気を付けてね」

なんという弱腰。

もしかしたら知っている方もいるかもしれませんが、「行政指導」と言う語感の盲点かもしれません。

努力義務は?

前述の行政指導と似たニュアンスで「努力義務」というのがあります。

先月、厚生労働省が小児(5~11歳)に対するコロナワクチンの初回接種を
努力義務の適用すると発表されました。詳しくは以下の厚生労働省のホームぺージに記載があります。

この行政庁から

「努力義務」


と言う標記がされると、ついつい国から言われているので

絶対やらなければならないこと

という印象をもつかもしれません。しかしながら、こちらも法的拘束力はありませんし、罰則もございません。
規定に違反しても構わないという意味ではなく、損害賠償のリスクが考えられますが、ワクチン接種は適用外でしょう。
一般成人に対しては、以下の「予防接種法第9条」の規定の努力義務が適用されます。

予防接種法第

このように「努めなければならない」と書かれているため、新型コロナワクチン予防接種は義務ではなく努力義務であり、

自分で接種するかどうかを決められます。

ただ小中学生や乳幼児に関しては判断がつかないので、実質、親の判断によるでしょう。子供の将来を見据えて判断してあげたいものです。

現在、コロナワクチンの副反応については全国で400カ所の相談窓口があるという情報もあります。相談者が多くなければそのような沢山の相談窓口は必要ないかもしれません。
メリット・デメリットをよく考えて行動したいですね。

纏めとして、行政の法律用語は語感で判断せず、本質をつかもう!

といったところでしょうか。

本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
今回は「義務」をイメージしてAdobeStockから使用させていただきました。

いつもありがとうございます!

それでは、また次回の記事で会いましょう!

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