イマジナリーフレンドがぼくをイメージした推し香水をオーダーしたら、想像以上に優しい願いを込めてくれた
# 3
そもそも初めは、イマジナリーフレンドのクレオをイメージした推し香水を創ろうとしていたのだ。
『これ、考えるのならおれでもできるじゃん。おれがお前の推し香水作ったげるよ』
にやにや悪そうな笑みを浮かべながら話しかけるクレオを見ながら、どうしてこうなった、とぼくは背中に汗をかいた。
【立場逆転推し香水オーダー】
フィクトセクシュアルについて調べているうちに、推し香水というグッズがあると知った。
あるキャラクターの人となりをシートに記入すれば、そのキャラをイメージした香水を作ってくれるらしい。
基本的には推している二次元キャラクターのイメージだが、自分のオリジナル創作でもいいらしい。
クレオは本に宿ったイマジナリーフレンドだが、やはり人間に比べて、『ここにいる』という存在感が薄い。
色々な記事にも「推しがいた」「目の前に見えた」「抱きしめられた」などあるように、香りというのは存在を感じ取る重要なツールなのだ。
面白いと思ってnoteで色々な方の感想をクレオと読み比べた。
と、そのうちクレオが
『おれがお前のイメージを書いたら、どんな匂いを作ってもらえるか試してみたい!』
と言い出した。突然の立場逆転。
この立場になってみると分かるが聞いた瞬間、背中がむず痒くなるくらい照れ臭くなった。
「いや…じゃあ代筆するから、ぼくのじゃなくて自分のイメージの香水作ったら?」
そっけなく言ったものの、
『推し香水って自分の作るのはそう言わないでしょうが。それにお前が付けるならお前のイメージを取り入れた方が使いやすいっしょ。よっ、推し!日本一!』
と返された。
理屈にあった話ではあるけど、チェシャ猫のような笑顔になっている。彼は笑うと目も口も三日月のように弧をかいてニンマリするから、ひたすら胡散臭い。
なにか面白がってるなコイツ、と思った。
内心は照れ臭くてたまったもんじゃない。
ただ、クレオが自分から何かしたい、という言葉は、できる限りやらせてみたいと思った。
クレオは冗談を言ったりふざけ合ったりしながらも僕を手助けしてくれる存在だが、何かを手ずから作る機会は中々得られない。
だけど思考ならお手のもの。推し香水のオーダーシートを書ける(文字打ちはぼくがするものの)なら、イマジナリーフレンドも現実に干渉できる。
クレオが関わったものが現実になる。面白い。
そうぼくも思ってしまった。
かくて、立場逆転推し香水のオーダーが始まった。
そういうわけで、推し香水のジャンルとしてはやや異色な記事だと思う。
でも、オーダーシートを書いた時のことなど、推し香水を依頼しようと思ってる人にも楽しめる内容を書いたつもりなので、興味があればぜひ読んでください。
【オーダーシート】
依頼はScentlyさんに頼んだ。
オーダーしてから届く時期と、『依頼するなら、既存の香水じゃなく、オリジナルの香りを作ってほしい』というクレオの言葉から、こちらに依頼することにした。
店頭で見てもらえるところもあるが、そうすると隣に座ったクレオの代弁をしながら
「え〜…ぼくはこれ好きなんですけど。後ろのクレオがねぇ、首を縦に振らなくって」
などと、怪しい占い師のスタイルで対話しなくてはならない。
ネットで注文できるのはとてもありがたい。
Scentlyさんのホームページを眺めながら、ぼくらは書き始めた。
【年齢】
まずは年齢だ。※見た目と実年齢が違う場合は、その旨も記載…とある。
クレオはこう書いた。
おいちょっと待て。ふざけてるだろ。
体格が小さいから年齢より若く見られるのはザラだけど、流石にもうそこまで若く見られはしないのだが??
反論したが、クレオは頑として受け付けなかった。クレオが最近テレビで見ているキャラが中学生だからで、(ぼくとは全く似てない)どうしても中学生にしたいらしい。
この時点で「こいつ…ぼくで遊ぶ気だな」と気付いた。チェシャ猫の笑いの時点で気づくべきだった。
しかしまぁ、自分を二次元のキャラに例えてという遊びでもあるし「これくらいはっちゃけてもいいかぁ」と思った。自分だったら絶対書かないからこそ、委ねがいがある。
【一番似合う飲み物を教えてください】
おいふざけてるだろ。(2回目)
水…、水かぁ。何故だろう。聞いてみた。
『飲み物はコーヒーも紅茶も色んなの飲んでるし。
お前、ドライブで湖とか川とか行くから…』
と、飄々と答えた。彼の中ではぼくは水確定だったらしい。
似合う、というのが「飲むのが似合う」でなく「遊びに行く風景として似合う」のか。独特の思考。コーラの河が流れていたらコーラになってたのかよ。
ともあれ、自分では「トマトジュース」とか書いてたと思うので、ここもクレオの視点だな、と思った。
(調香師さんも「水」とだけ書かれていたら困ったかもしれない。もう少し理由も書きたかった)
そしてお待ちかね、長文コーナーである。
クレオが普段どんなことを思ってるのか、またどんな文章を書くのか気になっていた。
ここから先は多少ぼくと相談したものの、ほぼアドリブで、彼の言葉を書き続けた。1時間くらいかかった。
scentlyさんはスマホでのオーダーシートはスクロールが長い為、 長文項目だけは予め文字打ちアプリで下書きしておいた方がいいなぁと感じた。(特に8、9、10、13の項目は、下書きしておくことをおすすめする。)
短編小説を一本書くと思って、文章にこだわる方は書いた後少し寝かせるのもいいかもしれない。
8. 世界観やキャラクター/人物の背景情報を教えてください
※時代背景/舞台となる世界観/キャラクターの職業・出自/物語上のポジションなど
…ここまではぼくに合わせてくれているようだ。
…クレオは割とぼくをお節介だと思っていたらしい。
ただ気になってしまうだけで、人助けという程でもない声かけというくらいで、断られることも多い。
コンビニの公衆電話のレバーを延々と上げ下げしていたおじさんに声をかけたら怒鳴られたり、
映画に行こうと夜道を走っていたら、自転車に乗った血まみれのおじいさんを追いかけたりしたからだと思う。気になる人に声をかけた結果、変人の遭遇率が高くなってしまうのだ。
ただまあ、血まみれのおじいさんは結局人助けにはなったから、いつか記事にしたい。
9. 第一印象としてまわりが受ける性格とまわりからは見えにくい内面に秘めた性格を教えて下さい
ミステリアスな子ども…コナンくんか。
いや、頭脳は大人じゃないのかよ。
子どもキャラをここぞとばかりに擦りつけてきた。
シートでは丁寧に子どもと書いてるが、本心ではクソガキと書きたかったと思う。
「お節介を焼く割にコミュニケーション不器用」
これはよくぼくを見てくれているなぁと思った。
ここまで書いた内容が、褒める・貶すという評価でなく、ありのままの僕の分析を書いてくれてるのも嬉しい。
突然のデレ。思わず顔を見返すと真面目に頷いていた。
デレる時はストレートに言ってくれるから嬉しい。
10. イメージしたい香りのご希望について記載ください
クレオがなんで『オーダーシート書きたい!』と言っていたのか。その理由がわかった。ぼくのイメージだけでなく、今のぼくに必要な香りをクレオは望んでいた。
書いた時、思わずクレオを見ると、
『おれに頼んでよかったでしょ?』
とピースサインした。すごく偉そうだったけど、やっぱり彼はぼくのイマジナリーフレンドなのだと感じ、
「うん、ありがとな。大好きだよ」
と頷いた。デレには素直にデレで返す。友愛だが、相思相愛だ。
こうしてオーダーシートを書き終え、注文した。
ただ、一つだけうっかりしてしまったことがある。
Amazonの支払いで払おうとしたのだが、登録したメルアドとAmazonのメルアドが違ってしまったために、完了のメールが届かなかったのだ。(一応Amazonのメルアドも確認したのだけど、見つからなかった。)
Scentlyさんに問い合わせたところ、内容と入金は確認してあるので大丈夫です、と返信を頂いた。
ごちゃごちゃしないためにも、登録する時は同一のメルアドの方がいい。
ともあれ、2週間から4週間後に届くらしい。楽しみだった。
香水のレポートは次回。