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12歳の24時。息をひそめて鑑賞した映画を、僕は20年ぶりに見た

話を始める前に、僕の性別について。
僕は「女性」だ。
一人称が「僕」と「私」の時があるので
混乱させて申し訳ない。

僕は湯につかっていた。
腰までしか水がたまらない
浅い浴槽の中で、僕はあぐらをかく。

肌がゆるんでしっとりとしてきた。
僕は固形石鹸を右の手にもち
からだを洗う。
友人が作ったラベンダーの石鹸だ。

左手
左腕、左の二の腕
左のわき、鎖骨、首
耳の下、胸のあいだ

僕は小さな膨らみに
濡れた固形石鹸をすべらせる。
円を描くように。

そのとき、僕は思い出した。
ある映画のワンシーンだ。

僕は12歳だった。
家族が寝静まったあと、
僕はその映画を見た。
その映画を見てしまった。

12歳の僕には理解できなかった。

ただひとつ理解したのは
(この美しい映像を僕は見てはいけない)
ということ。

その映画は『完全なる飼育 愛の40日』

20年経った今日
僕はその映画をもう一度見た。

おとなになって見ても
おじさんが17歳の麗しい女性を洗う現実でやったらだめ、絶対犯罪
そのシーンは美しかった。

たらいの中の女体。
水で濡れる肌、泡、
スポンジからじゅるると滴る水…

おじさんは女性の豊かな膨らみを
濡れたスポンジでなぞる。
円を描くように。


追記:この『完全なる飼育』を思い出した日も僕はシャンプーをさぼった。今日は…バレンタインなので備えておこうと、先ほどシャンプーと、それからリンスをいたしました。家にある寄せ集めの材料で、何かそれっぽいものをこしらえようかな…

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