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10歳の遺書。4Bの鉛筆で「感情の棚卸し」をし、ベッドの下に隠した

話を始める前に、僕の性別について。
僕は「女性」だ。
一人称が「僕」と「私」の時があるので
混乱させて申し訳ない。

僕は遺書を書いた。
僕は10歳だった。

1週間の夏合宿から戻ると
母が玄関で待っていた。

母は僕に尋ねた。
「これはなに」

それは白い封筒だった。
僕がベッドの下に隠した封筒だった。

表に『遺書』と書かれている。
僕の字だ。

母は僕に尋ねた。
「死にたいきもちがあるの」
僕は首を横に振った。
本心だった。
(死にたくない。僕は怖がりだ)

夏合宿の前夜、
僕は感情の棚卸しをしたんだった。
4Bの鉛筆とMONO消しゴムを
にぎりしめて紙に書いたんだった。
その紙を白い封筒に入れ、
表に『遺書』と書いたんだった。

僕は感情の棚卸しをした。

僕は感情を消化するのが遅いから。
僕は感情を伝えるのが不得意だから。

いつか準備ができたら
この気持ちを母や父に、
ほかの家族や同級生に伝えたかった。

そのために
僕は遺書を書いた。
僕は10歳だった。