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Cicadas

 寂しさからは抜け出せない。何をしても、ずっと寂しさからは抜け出せない。どんな時でも、満たされているようでも、隣に誰かがいても抜け出せない。お花を買っても、お酒を飲んでも、駄目。外で蝉がちょっと鳴いた。ジッ。薄暗いこの部屋で私は、自分の呼吸がだいぶ薄いことに気がついた。さっき見た動画の、アンアン、と苦しそうな女の喘ぎ声が頭から抜けない。そしてすごくうるさい。訳がわからない。女は子供を産んで、死んでいくだけかもしれない。たまたま、生物学的に、運命的に、女に生まれてしまった私は、

    • ママは私が病むとカレーをつくる

      ママは私が病むとカレーをつくる 鍋いっぱい作る カレーが栄養満点フードだと思っている 食べられない時もあったけど いまはいっぱい食べる ママは一緒に部屋を片付ける 仕事を休んで私の部屋を片付ける コンドームとか落ちてても鼻で笑ってくれる ママはリビングでゴロゴロする ドラマとかバラエティをみる ママはせかせかしていない ママは子供を愛している 子供がいなかったらどうなってたと思う?と聞いた時 病んでたと思うと言った ベランダに煙草を吸いに行ったら 私の洗濯物が干して

      • ピンクはどこにいるのかな

        ぶたのぬいぐるみを3匹もっていた。白、ピンク、赤で分かれていて、ピンクがお気に入りだったのでどこへ行くにも手から離さなかった。寂しくないようにたまに白と赤も外に連れていった。赤は目が外れやすいのでよく針と糸で縫った。みんな同じ形のはずなのに白だけなんだか小柄で、末っ子だったんだと思う。大人になって忘れかけた頃、ママが白を見つけた。少し探したら赤もでてきた。いくら探してもピンクは出てこなかった。小さい頃の写真ではいつでもピンクを持っていたし、3匹揃わないと赤と白が悲しい目をして

        • 英語が気持ち悪い

          しかたない。英語が気持ち悪くなってしまったのだから…。 教授から届く無数のメールも、奨学金が処理できないみたいなメールも、銀行に残高がありませんみたいなメールも、日本語だったらもう少し楽に受け止められる気がする。いや、そんなことないのだろうか。海外の大学に在籍している以上、仕方のないことなのだけれど…。 そもそも、なんで大学なんかに入ったんだっけ。カラオケが割引になるとか、美容院とかで、どうでもいい人と話すときに「学生です」って言えることくらいしか、良いことない。それ以外

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          Hangover 二日酔い

           「俺、何度二日酔いになって苦しんでも、また飲みすぎて苦しむんだ。そんな同じことを、もうずっとやってる。」 彼は言った。私は彼の腕の中で笑ったあと、また泣きそうになった。 これ以上の幸せはないだろうな、と思うといつも涙が出る。その瞬間は年に数回、私に訪れて、泣きたい、もしくは今死ねたらいい、そう思わせる。死ぬことはなかったけれど、これ以上ない幸せというものは私を打ちのめし、決まってそのあと、いちばん低いところまでズッシリと落とす。だけど、それでも年に数回かは誰かと心が通っ

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