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Hangover 二日酔い

 「俺、何度二日酔いになって苦しんでも、また飲みすぎて苦しむんだ。そんな同じことを、もうずっとやってる。」

彼は言った。私は彼の腕の中で笑ったあと、また泣きそうになった。

これ以上の幸せはないだろうな、と思うといつも涙が出る。その瞬間は年に数回、私に訪れて、泣きたい、もしくは今死ねたらいい、そう思わせる。死ぬことはなかったけれど、これ以上ない幸せというものは私を打ちのめし、決まってそのあと、いちばん低いところまでズッシリと落とす。だけど、それでも年に数回かは誰かと心が通っていると感じ、この瞬間をずっと待っていた、というような瞬間に出会えるのなら、またその瞬間を待ってみたいと、思う。

彼は、その「ずっと待っていた瞬間」で。文字通り一瞬で私をたまらなく幸せにした後、消え去ってしまった。どこか遠くの、ここからは見えなくて、言葉も通じないようなところに行った。追いかけるつもりはない。彼と私は一瞬の出来事だったけれど、体と体の形も、声と声の交わったところも、ぴったりと重なっていた。

もしくは、ビールの一口めが一番美味しいことみたいに、私たちは一番初めの美味しいところだけを味わって、そこだけの美味しさをずっと思い出して生きていくのかもしれない。彼と出会っていろんなお酒を知ったけど、同時にお酒が苦手になった。彼は、世の中で一番好きなものがお酒で、一番嫌いなものが二日酔いだとか言っていた。

旅行に行こう、一緒に住もう、愛してる。とても幸せなたくさんの嘘だった。その時は、嘘ですらなかった。ずっと、彼との一瞬がまた欲しい。たとえそのあとが、すごく辛かったとしても。


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